正木&川村と同期入団…「ずっと一緒にいたから」
「親友」がスタートラインに立ったことを、自分のことのように喜んだ。同じ時間を過ごしたからこそ知る素顔。山本恵大外野手は「モテる男」だと、川村友斗外野手は言う。「マジでおめでとうって思いました。上がるだろうなと思っていたので」と声を弾ませる。
山本が支配下登録されたのは今月12日。ウエスタン・リーグでも打率.486と結果を残し、持ち味である打棒を生かして“2桁”を掴み取った。東京都小金井市出身。明星大から2021年育成ドラフト9位でプロ入りした。支配下選手として2位指名を受けた正木智也外野手、同じ育成の2位だった川村との距離感は、自然と近くなっていった。
「2軍、3軍でずっと一緒にいたからですかね。なんか、雰囲気いいので。過ごしやすいです」と、川村も語る。骨折や手術など、お互いに紆余曲折の道のりを歩んできた。「リハビリ組に行ったりもしたし、野球の思い出というよりは。プライベートだとか、寮の部屋で一緒にゲームしたことですかね」。山本が支配下登録された日、届いていたLINEの意味はすぐにわかった。
「千葉に行ってきます」
わずか2日後の14日、月曜日でチームは休日だった。2人はなんと、天神でバッタリ遭遇したという。山本が「ビックリしました」と言えば、「歩いていたら『川村っ!』って声をかけられて、あの大男がいました」と笑顔で振り返る。「『マジおめでとう』『本当はロッテ戦スタメンだったんだよね。ZOZOマリン(の外野守備)怖いわ』『ここから頑張ろうね』っていう話をしました。本当にたまたまでした」。
表情も柔らかく、常に笑顔を絶やさない。そんな山本の存在を川村は「親友」と表現する。「優しいからです。『これがモテる男の所作なのかな』って感じます。キャプテンです」。今年3月に結婚した背番号77は、同期から見ても男前だ。
2軍時代の些細な思い出「ご飯行く時も…」
1例を正木が明かす。「ザ・いいやつみたいな感じです。めちゃくちゃいいやつです。ご飯に行く時も、お店を決めてくれますね。僕とか川村は、そういうのやらないんですけど、山ちゃんがいつも決めてくれるので。お兄ちゃん的存在です」。川村も「幹事です! 山ちゃんに投げておけばやってくれます」と同調する。「正木と行く時は正木がしてくれるので、僕は何もしないです。だから店に関しては文句言わないです」という姿も、なんだか想像できてしまう。
さらに正木が振り返ったのは、2軍時代の思い出だ。ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」の近くで食事をした時。「山ちゃんが送り迎えをしてくれたんです。『飯行こう』ってなって、藤野(恵音内野手)とかもいたんですけど、全員を山ちゃんが乗せてくれました」と、自ら運転手を買って出てくれた。「だから僕もお酒飲めましたもん」。些細な日々もちゃんと覚えている。交わしてきた乾杯も大切な思い出だ。
オープン戦最終日となった3月23日、チームは広島遠征だった。正木も「山ちゃんと一緒に帰ったんです。その時も『打ちまくってくるわ』と言っていたので。『チャンスあるね』って話をしていました。その後から、相当打っていたので、凄いですよね」と振り返る。大卒4年目のシーズン、決して“先”が長くないことは、山本本人が一番理解していただろう。同僚の目から見ても「2軍の山ちゃんの打席は見ていました。バッティング練習を見ていても打ちそうでしたし、いいフォームです」と、進化を遂げたのは明らかだった。
シーズンを戦っていれば、時間を合わせることはなかなか難しい。川村も「正木と、3月に『山ちゃんが支配下になったらお祝いしたいね』って言っていたので」と計画中だ。同じ外野手なのだから、ポジションを争うライバルであることは間違いない。ただそれ以上に、同じユニホームを着て戦う大切な「親友」だ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)