守護神の本音「フラストレーションが溜まります」
球場からの大歓声を背にマウンドへ上がった守護神が、思わず膝に手をついてうなだれた。2点リードの9回に登板したロベルト・オスナ投手が先頭打者に二塁打を浴びると、代打の村林には甘く入ったスライダーを左中間テラス席まで運ばれた。さらに1死一塁で浅村に中堅フェンス直撃の適時三塁打を浴びて逆転を許すと、本拠地はため息に包まれた。
「初回から野手の方、先発の方、中継ぎの方がゲームを作って頑張ってくれたのに、9回をしっかり締められない。結果が出ていないってことが、自分としては一番フラストレーションが溜まります」。試合後、オスナは報道陣を前に自らの思いを正直に明かした。
「自分としても、これが悪いというところがないというか。痛みもないし、感じもいいので、原因がわからなくなっていることもあるんですけど。なかなか難しい状況にいるのは間違いないです」。今季8試合に登板して防御率7.88と本来の姿から程遠い右腕。首脳陣が語ったのは、ほんのわずかな“異変”だった。
「調子が上がっていないというよりは、安定していないというところ。出る試合、出る試合でそういう面(不安定さ)が出てしまっている。そこはずっと続くっていうのなら困るんだけど、明日また投げてもらわないといけないかもしれないので」
現時点における2軍再調整の選択肢は…
そう口にしたのは若田部健一投手コーチだった。現時点ではあくまで2軍再調整の選択肢はないが、「開幕して間もない段階でこれなので。今シーズンにおいての材料があまりない状態ではある」と頭を悩ませる状況であることは間違いない。オスナ本人も「こうなったことが今までの人生の中でもないので。ちょっと自分でも何が悪いのかわからなくなっているのがあります」と困惑した様子だった。
そんな中で若田部コーチが語ったのは、わずかな違和感だった。「ちょっときょうは変化球のスピードが本来の形ではなかったかなと思います。問題が球速なのかキレなのかというところ」。指摘したのは、最速153キロを計測した真っすぐではなく、変化球の“質”だった。
この日浴びた4安打のうち、2本がカットボール、1本がスライダーと変化球を捉えられたものだった。威力のある直球に加えて、精度の高い変化球も右腕の武器なだけに、ちょっとした“ズレ”が首脳陣の不安を大きくさせているようだ。
リーグ連覇を狙うチームにとって、オスナの存在は必要不可欠であることは間違いない。本人も「まずは自信を失わないように。どんな状況でも『きょうはダメだな』とか、そういうことは絶対に思わず、常に『絶対勝つ』という気持ちでマウンドに臨んでます」と歯を食いしばる。
「寝ずに原因を考えないといけないなと思います」。そう口にした若田部コーチは「彼はポジティブだから。次はやってくれると信じています」と続けた。波に乗れないホークスではあるが、まだまだ開幕して16試合が終わっただけ。オスナにとっても、チームにとってもここが踏ん張りどころだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)