昨年末に決まった“6本柱”「早くない?」 窮地に躍動…“7番目の男たち”が狙う下剋上

16日の楽天戦で好投した大山凌【写真:古川剛伊】
16日の楽天戦で好投した大山凌【写真:古川剛伊】

大きな誤算だったヘルナンデスの登録抹消

 首脳陣が絶対の信頼を置いていた「リリーフ6本柱」が、開幕14試合で早くも“分解”した。ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手が16日、不調のため出場選手登録を抹消された。チームにとっては大きな誤算となった一方、虎視眈々と目をぎらつかせる男たちもいる。

 小久保裕紀監督は昨年12月、僅差の終盤での1イニングを任せるリリーフとして、ロベルト・オスナ投手、ヘルナンデス、松本裕樹投手、藤井皓哉投手、杉山一樹投手、尾形崇斗投手の6人を挙げた。いずれも150キロを超える直球を武器とする実力派の存在が、2025年のホークスにとって大きな武器となるはずだった。

 開幕後、“青写真”は現実のものとはならなかった。まさかの3連敗を喫したロッテとの開幕カードでは、2試合で「6本柱」に黒星がついた。ヘルナンデスはここまで6試合に登板して2敗、防御率11.57と特に苦しんだ。登録抹消を決断した倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「早く本来のリズムというか、投球を取り戻してもらいたい」と口にし、最短の10日間での1軍復帰に期待をかけた。

 一方で、開幕から確かな存在感を示しているのが津森宥紀投手と大山凌投手だ。ともに今季ここまで6試合に登板し、防御率1点台をマーク。いわば「7番目の男たち」が狙うのは“ランクアップ”だ。2人が口にしたのは、偽らざる本音だった。

「6人が決まっていた中で、中継ぎの残り少ない枠を取りにいかなくちゃいけなかったので。より燃えましたね」

「何も感じなかったと言われればウソになる」

 落ち着いた口調ながら、目に炎を宿したのは大山だった。昨秋キャンプ中に2025年シーズンは中継ぎで勝負することを倉野コーチと確認した右腕。昨年末に指揮官が発言した方針については「そういうのあるんだ、スゲーって感じでした」と笑いつつ、「名前が挙がったピッチャーはそれなりの実績があるから。そこは気にしてないですけどね」と冷静に受け止めた。

 ヘルナンデスの離脱は自身にとって好機でもあるが、あくまで自然体と強調する。「チャンスとまでは思っていないです。やれることをやるだけなので」。それでも自然と力は入る。「いけって言われればいきますよ、それは」。16日の楽天戦では2番手で2回2/3を投げて無失点と好投し、小久保監督からも「今年一番よかった」と絶賛された。手ごたえは確かにつかんでいる。

16日の楽天戦で力強い投球を披露した津森宥紀【写真:古川剛伊】
16日の楽天戦で力強い投球を披露した津森宥紀【写真:古川剛伊】

 津森も5試合連続無失点中と好調を持続している。「いい感じになってきているかなと思います」と表情も明るい。入団から昨季までの5年間で214試合に登板した右腕は「6本柱」が早々と決まったことをどう捉えていたのか。

「何も感じなかったと言われればウソにはなりますよね。『決まるの早くない?』とは思いました」

 一方で、開幕してからは“無心”でマウンドに上がっている。「今は本当に任されたところでしっかり投げる。それだけです。自分の仕事はチームが勝っていても負けていても変わらないので」。目の前の“チャンス”にもその姿勢は変わらない。

 プロの世界でリリーフを任されている以上、誰しもがチームの勝敗を左右する場面で力を発揮することが目標だ。口にはせずとも、その思いは確かに存在する。チームにとって想定外のピンチも自分が“火消し”してみせる――。2人のボールからはそんな決意が伝わってくる。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)