山川穂高はなぜOP戦に“無関心”? 「6割打っても吹っ飛ぶ」語った1年前と真逆の思考

OP戦1号アーチを放った山川穂高【写真:冨田成美】
OP戦1号アーチを放った山川穂高【写真:冨田成美】

OP戦打率.167も気に留める様子なし「今は体のことだけ考えればいい」

 誰よりもアーチをかけることにこだわる男が、喜びのかけらさえ見せなかった。21日の広島戦でオープン戦初本塁打を放った山川穂高内野手。試合中に届いた広報メールの一文は実に淡々としていた。「ホームランになって良かったという気持ちはなく、開幕して打つというところしか考えていません。そこに向けて頑張っていきます」。

 ここまでオープン戦12試合に出場して、打率.167、1本塁打、4打点の成績。昨季本塁打と打点の2冠王に輝いたことを考えれば、ややもの寂しい数字にも映る。それでも本人は気に留める様子すらない。「今は体のことだけ考えていればいいかなと思っています。守っていて、ふくらはぎやハムが張ってるなとか、どれぐらいの出力でバットを振れるのかなとか。そんなことばかりを考えてます」。

 山川がオープン戦を軽視しているということではない。ホークスへの移籍初年度だった昨季は、出場16試合で打率.306、3本塁打、9打点と文句のない数字を残してみせた。「全然違いましたね」。主砲が振り返ったのは、1年前との明らかな違いだった。

「今は一応、レギュラーという位置付けにしてもらえているので。去年は(オープン戦で)打ちましたけど、やっぱりホークスに来たばかりで、めちゃくちゃ結果を出そうと思っていました。しっかり打ちにいきました」

1年前との明らかな違いを明かした【写真:冨田成美】
1年前との明らかな違いを明かした【写真:冨田成美】

 強い向かい風の中でホークスのユニホームを着ることを選んだ2024年。立ち位置は自らの力で掴むしかなった。がむしゃらに結果を求めたオープン戦。常にその心構えでいればいいかといえば、そうではないと言う。「レギュラーは、開幕を100%の状態で迎えるというよりは、ずっと70、80%で戦える方が大切。だからだらっと、じわっと体を作ってきた」。キャンプ終わりに明かしていたのは、山川らしい思考だった。

 結果を度外視したことで、大きな収穫もあった。「ファウルの打ち方や空振りの仕方もよくなってきていると思います。昨日まで色々と試してきましたけど、きょうで一区切り。試すのは終わりというつもりでやりました。構えだったり、重心の位置、右脚の向き、目線、始動をどこで取るかとか考えて。今年のスタートはこの形で行こうというのは決めました」。

 大切なのはあくまで“内容”だ。「オープン戦で打率5割とか6割打ったとします。でも開幕戦で4打数ノーヒットで、次の日も、その次の日もノーヒットってなると、オープン戦で打っていた感覚はすぐに消える、吹っ飛ぶので。だから意味がない。意味がないって言い方はアレですけど、(成績は)あまり関係がないっていうのはそういうことです」。昨季までのプロ11年間で通算252本塁打を積み上げてきたアーチストらしい考え方だ。

「『こういう形で打とう』というのはまとまりましたね。年間通してやれるのがベストですけど、やっぱりそうはいかないので。感覚も変わっていきますし。でも最初から自分の形が決まっていないと、打席で迷っちゃうので。去年の感覚とは全く別物で、また新しく臨んでいく。その形はきょうの試合で決まりです」

 様々な意味でのチャレンジだった昨年に比べ、押しも押されもせぬ主砲として迎える今季。山川は本来のペースでここまで過ごしてきた。見据えるのはシーズンだけ。周囲を納得させるだけの“答え”を示してみせる。

ベンチ前へ戻り「どすこーい」【写真:冨田成美】
ベンチ前へ戻り「どすこーい」【写真:冨田成美】

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)