後輩に「負けるわけねえだろ」 今宮健太が激白した自負心…「遊撃できなくなったら終わり」

インタビューに応じたソフトバンク・今宮健太【写真:冨田成美】
インタビューに応じたソフトバンク・今宮健太【写真:冨田成美】

“ポスト今宮論”に自ら言及「今のところピンと来てない」

 皆さま、あけましておめでとうございます! 鷹フルがお届けする新春特別インタビューに、2025年が16年目となる今宮健太内野手が登場してくれました。ホークスで10年以上も不動の遊撃手として確固たる地位を築きながらも、2024年は「レギュラー獲り」を掲げ、覚悟の1年を過ごした名手。“ポスト今宮”の必要性が叫ばれる昨今の状況で、熱い想いを語ってくれました。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「ダメだったら、すぐにクビを切られるだろうなと思っています」――。ホークスを長年支えてきた男の口から出た、衝撃的な言葉だった。大分・明豊高から2009年ドラフト1位でプロの世界に飛び込み、3年目の2012年には126試合に出場。そこから長きにわたって遊撃のポジションを守り抜いてきた。数々の栄誉を手にしてきた今宮も33歳になった。2024年も133試合に出場したが、危機感は年々と強くなっている。

「怪我をした30歳くらいからですかね(2020年に左ヒラメ筋を損傷)。より危機感を持って、『ダメだったら正直、すぐにクビを切られるだろうな』と思っているので。入れ替わりが激しい世界ですし、いい選手がいればそっちを使うっていうのはもちろん、プロの世界なので。負けたら終わりと思ってやっています」。

「負けたら終わり」という言葉がさしているのは、遊撃のポジション争いだ。10年以上も守り抜いてきた“聖域”。今宮が語ったのは、背水の覚悟――。そして、強烈なプライドだった。

「こだわりはありますけど、『ショートを守れなくなったら終わりかな』と思っているので。打撃を生かすためにサードへ回る、という選択肢は僕の中でないですし、監督やコーチも多分、そういう考えを持ってはいないと思うので。だからこそ、ショートでやり続けるしかない。そこを守れなくなったら終わりかなっていうのは正直、思います」

 体への負担が人一倍多いポジション。遊撃を長年守ってきた名手がのちに三塁へ回り、打撃を生かすという例もあるが、今宮は「そういうの、僕はないですね」と断言する。

 藤本博史監督が指揮を執っていた時期に、記事を通して自身の「三塁転向説」を耳にしたことがあった。「サード? 俺をサードに回してどうすんのかな」。今宮は当時に抱いていた本音を打ち明ける。「(巨人の)坂本勇人さんがショートからサードに転向しましたけど、元々からバッティングがめちゃくちゃいい方なので。そこで負担が少ないサードに回ったと思うんですけど、僕の場合はそこまで(打撃力は)ないので。だから、それ(コンバート)はないっすよ、本当に。僕はそう思っています」と語る。

ソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】

 だからこその、「守れなくなったら終わり」だ。遊撃のポジションを奪われた時が、ユニフォームを脱ぐ“頃合い”だと覚悟している。強い危機感を抱きながらも、2024年は遊撃手としてチーム最多出場を果たし、日本シリーズでは敢闘賞に輝くなど、一定以上の成績を残してきた。定位置奪取を掲げる後輩もいるし、チームとしても“ポスト今宮”の台頭が求められる時期に差し掛かっている。ただ、33歳の本音はこうだ。

「やっぱり危機感もありますけど、もちろん負けないっていう気持ちは常々持っています。今年で言えば、川瀬(晃)が『ショートのレギュラーをとります』って発言をした中で、『負けるわけねえだろ』って思いながら、もちろんやっていました」

 2023年オフ、川瀬は契約更改後の会見で「打倒・今宮」を掲げ、遊撃手のレギュラー獲りを宣言した。メディアもこぞって、その発言を大きく取り上げた。川瀬は2024年、バッテリーを除く内野の全ポジションで先発し、自己最多の105試合に出場。チームに欠かせない存在として躍動した1年となった。

 あくまで川瀬の活躍を認めながらも、今宮は「まだまだだと思います」と言い切った。師弟関係でもあり、互いのことを知り尽くしている間柄。「彼の色々な本心を知っているので、どれぐらい本気なのかっていうのも正直わかっています。でも、まだまだだと思います」。今宮は遊撃を長年守り抜いてきたプライドを覗かせる。

 川瀬に限らず、その座を狙う若手は多い。今宮は後輩たちの姿をどう見ているのか――。「大口を叩くわけじゃないですけど、『そこまでかな』っていう感じはしています。チームとしても、やっぱりショートはすごく大事なポジションだと思うので。そこを守れる選手っていうのは、今のところはあまりピンと来ていないので。『まだ俺が行くぞ』と思っています」。紛れもない本心だった。

 今宮にとって遊撃のポジションを譲ることは、キャリアの終わりを意味する。だからこそ、“聖域”を守り抜くことへのこだわりと、強い覚悟が滲んでいた。“負けない自信”を抱きながらも、今の環境に感謝もしている。「競争意識っていうのが、すごくいい感じで働いているのかなと思います」。後輩の存在が、今宮を突き上げていることも確かだ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)