若鷹に「みじめだと思わないと」 松山2軍監督が猛ゲキ「どうぞ辞めてくださいって」

真剣な表情で耳を傾けるソフトバンクの若鷹たち【写真:冨田成美】
真剣な表情で耳を傾けるソフトバンクの若鷹たち【写真:冨田成美】

今オフは23人に戦力外通告…「格好つけている場合じゃない」

 若鷹に伝えたい思いはシンプルかつ強烈だ。「悔しさがなくなったら選手として終わりなんで」——。言葉の主は松山秀明2軍監督。今シーズンを終え、宮崎と筑後に分かれて秋季キャンプを行っているホークス。若手の練習姿勢や表情をくまなく観察する松山2軍監督の目は実にシビアだ。

 球団は今オフ、育成選手を含めて計23人に戦力外通告を行った。今季は4年ぶりのリーグ優勝を果たしたが「目指せ世界一」を掲げるチームにとって戦力整理が不可欠であることも事実だ。来季に向け、秋季キャンプは重要な鍛錬の場。松山2軍監督の言葉が熱を帯びるのも当然だった。

「ファームにいることが悔しい、みじめっていう思いがなかったら、もうユニホームを脱ぐしかない。1軍に必要じゃないっていうことなので。秋季キャンプで目の色が変わっていなかったら、アホでしょ。みじめな思いが自分の糧になり、来年それを爆発させるエネルギーにすればいいわけなので。来年の春季キャンプで巻き返す準備をするしかないでしょう」

 松山2軍監督があえて強い言葉で若手の奮起を促すのは、自らの経験が根底にあるからだ。「僕もそういう立場の選手だったんで」。PL学園高、青学大とエリート街道を歩み、1989年ドラフト5位でオリックスに入団。自己最多出場は1995年に46試合と、最後までレギュラーをつかむことができず、現役生活は9年間で幕を閉じた。1人でも多くの選手に充実したプロ野球人生を送ってほしい——。その思いが変わることはない。

ソフトバンク・松山秀明2軍監督【写真:飯田航平】
ソフトバンク・松山秀明2軍監督【写真:飯田航平】

「やらなくちゃ終わる。それはもう明確じゃないですか。選択肢がない。もうやる気がなかったら『どうぞ、ユニホームを脱いで辞めたらいいんじゃないですか』って。それだけの話なので。どこの世界でもそうだけど、戦力にならなかったら、いなくなっても困らない。困る選手にならないと意味がないってことです。だから、そういう立場だってことは理解しないといけないし、いないと困る選手になるのが彼らの目標なんで。そこに向かって行くしかないですよね」

 厳しい現実を突きつけた一方で、常に“一発逆転”の可能性があることも強調する。「現時点で負けているから、ずっと負け続けるのかといえば、そうでもない。現実をしっかりと理解して、負けないためにどうするのかを考えることが大事なので。格好つけている場合じゃない。そんなことはどうでもよくて、稼いだらいいだけ。見た目とかじゃなくて、中身。どういう形であれ、1軍に貢献できるのが全てなので。だから貪欲になるしかない」

 強烈な危機感を抱いている選手は現状どれだけいるのか。そう尋ねると、松山2軍監督は「3割くらいじゃない?」と、リアルな肌感覚を明かした。続けて口にしたのは、育成選手が抱える“難題”だった。

「やっぱり1軍を経験した人間じゃないと分からないことはあるので。育成の方がモチベーションは難しいんじゃないかな。日本シリーズなんて夢のまた夢の舞台。出られる可能性がゼロなので。1軍にいった選手は日本シリーズを見るのも悔しいやろうし、現実味がある。やっぱり1軍のベンチに入って、例えば近藤(健介外野手)と一緒に必死で声を出して。目の前の1勝をどうやって取りにいくかっていう熱を感じないと。だから育成選手の方が難しいなと思いますね」

 常勝軍団を築くためには、若手の成長が必須条件だ。厳しい言葉をかけるのは、大切なことに気付かぬまま、プロの世界を去ってほしくないから。シーズンは終わっても、戦いは続いていく。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)