柳田悠岐から「お前、あとどれくらい?」 復帰初戦も変わらぬ気遣い…“粋”なプレゼント

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:栗木一考】
ソフトバンク・柳田悠岐【写真:栗木一考】

いきなり安打を放ったものの…ギータらしい感想「速かったっす。ビシバシ」

 飾らずに気が遣えて、どこまでも優しい。復帰初戦でも、ギータはギータだった。「お前、あとどれくらい?」――。

 ソフトバンクは9月30日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)に1-0で勝利した。右太もも裏の故障から復帰後、「2番・DH」で即スタメン起用されたのが、柳田悠岐外野手だった。3打数1安打と、いきなり快音を響かせた主砲。「上(1軍)で打ってナンボですから」と笑顔で振り返った。誰しもが待っていた1軍復帰を、選手たちはどう捉えているのか。まさかの復帰初戦から、カッコ良すぎる“プレゼント”まで持参していた。

 柳田は初回無死一塁、大歓声に包まれて打席に向かった。相手先発・山下の直球を、詰まりながらも右前に運び、復帰後初安打をマーク。3回2死でも鋭い二直と、さすがの技術を見せつけたが、「速かったっす。ビシバシでした。来た球に反応しようと思っていましたけど、いつも通りでした」。感想も柳田らしかった。

 この日の試合前練習には右足首を痛めている近藤健介外野手も参加していた。7回無死で決勝の18号ソロを放った栗原陵矢内野手は「ロッカーにギータさんがいて、近藤さんがいて。ワクワクしましたね。嬉しかったです」と語る。交わした会話についても「野球のことが多かったですね。ベンチでギータさんが隣だったので、『どうやって打ってる?』『どういうイメージでいった?』っていう話はしました」と、コミュニケーションを取っていた。柳田は「すごいホームランを見せられたので、打ち方を教えてもらいました」と笑うが、やはり自然と、周囲に輪ができる存在だ。

 8回からマウンドに上がったのは、又吉克樹投手だった。1死二塁となって降板したが、無失点リレーに貢献。プライベートでも柳田と親交の深い33歳は「あまりにも普通にいましたね。打つだろうなと思っていたら本当に打ったので、すげえなって思いました」と頷く。ロッカーの雰囲気も「オンとオフがハッキリしている人じゃないですか。ピリついているわけじゃないですけど、やっぱりギーさんがいると明るくなりますね。太陽みたいです」と、その存在の大きさを改めて感じていた。

 9月18日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)で通算500試合登板に到達した右腕。その少し前に、柳田とも食事に出かけたという。聞かれたのは「お前、あとどれくらい?」。又吉の記録も気にしてくれていたそうだ。自らも「もし達成したらギーさんから何かいただいてもいいですか」と頭を下げた。すると、1軍昇格となったこの日。又吉がドームを訪れると、ロッカーの前に緑色の大きな紙袋が置いてあった。真ん中に小さく「GOYARD」と書いてあり、柳田からのプレゼントだとすぐにわかった。

「去年に200ホールドポイントを達成して、その時にいただいたのもGOYARD(の財布)だったので。『ギータさんからもらえるならGOYARDがいいです』っていうのは伝えていました」

 8月中に柳田と食事に行った仲田慶介内野手は「すごく威圧感がありました。エグいな、体デカいなって思いましたね」と語っていた。又吉から見ても「風呂とか入ったら、めっちゃデカくなったなって思いましたし。ユニホームが緩く見えましたね」と驚愕する。離脱中に力を入れていたウエートトレーニングの効果を、チームメートはしっかりと受け取っていた。

 開幕から1軍でプレーし続けている緒方理貢外野手も「やっぱりギータさんのチームだなって思いました」と振り返る。柳田が1軍にいる期間と、いなかった期間を比較しても「改めて『うわ、今までいなかったんだ』って思いました。いるのが当たり前というか、ずっと見てきた人だったので。この感じでやるのは久しぶりだな、と。この感じが戻ってきたんだなって思いました」。存在そのものがチームに与える安心感が、確実にある。

 打席に入る際には、本拠地は大歓声に包まれた。本人は「集中していたのであまりわからなかったんですけど」と言いつつも、「応援してくださるファンの方々がたくさんいるので、そういう人のために頑張りたいです」と頭を下げる。1つしかないホークスの“太陽”が、帰ってきた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)