周東佑京から「頑張れ」…今季初先発の柳町達が意地の2点打「僕が決める気持ちで」

2点適時打を放ったソフトバンク・柳町達【写真:中戸川知世】
2点適時打を放ったソフトバンク・柳町達【写真:中戸川知世】

29日試合後にスタメン告げられ「ちょこちょこ目覚める感じ。ドキドキでした」

 2か月間、じっと待ち望んだチャンスを逃す男ではない。2回に1点を先制し、なお2死満塁で巡ってきた打席。柳町達外野手が元チームメートの高橋礼の真っすぐを振り抜いた打球は鋭く一、二塁間を抜いた。「(東浜)巨さんが四球で出た瞬間に、『僕が決める』くらいの気持ちで打席に入りました」。今季初スタメンでチームを勢いづける2点適時打をマークし、自身の価値を結果で示して見せた。

 今季初昇格を果たした28日の巨人戦(東京ドーム)では、代打でさっそく安打を放った。30日の同戦は「1番・中堅」で出場。今季初先発を告げられたのは29日の試合後、奈良原浩ヘッドコーチからだったという。久々のスタメン出場が決まった心境を、柳町はありのままに口にした。

「めっちゃ緊張しました。寝つきはよかったんですけど、(睡眠の)質は浅かったなって。ちょこちょこ目覚める感じで。ドキドキでした」。まるでプロ初出場を控えたかのような心情を覚えたという。

 プロ5年目を迎えた今季は苦しいスタートとなった。開幕1軍入りを逃し、2軍で黙々とバットを振り続ける日々。心が折れそうになったが、周囲に弱さを見せることなく、結果を出し続けた。小久保裕紀監督も28日の試合後には「彼はやっぱりファームでずっとモチベーションを高く持ちながらやってきた。いい顔をしていましたね」とねぎらいの言葉をかけていた。

ソフトバンク柳町達(右)と周東佑京【写真:中戸川知世】
ソフトバンク柳町達(右)と周東佑京【写真:中戸川知世】

 ここ6試合で24打数1安打と不振に苦しんでいた周東佑京内野手が14試合ぶりに先発を外れた。ここまで周東が担ってきた「1番・中堅」の位置に入った柳町は、2学年上の選手会長からも思いを託されていた。

「頑張れ」。自らへの悔しさでいっぱいだったにもかかわらず、発されたエール。短い言葉でも背中を押される気持ちだった。「本当にやることをやって集中して挑めば、いい結果になると信じていた」と柳町。いろいろな思いが重なった1試合だった。

 1点ビハインドの9回2死では、球界屈指の救援左腕バルドナードに空振り三振を喫したものの、8球を投げさせる必死の粘りを見せた。その姿は、長い2軍生活で味わった思いを表しているかのようだった。チームは直近6試合で1勝5敗。ひたすら我慢を重ねてきた27歳は、苦境でこそ輝く。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)