胸中を激白した。今のチーム状況、若手たちの頑張り、そして自分自身の契約について――。ソフトバンクは13日、日本ハム戦(PayPayドーム)に3-5で敗戦した。先発したカーター・スチュワート・ジュニア投手が5回4失点で3敗目。最後までリードを奪うことはできなかった。劣勢の中で登板したのが、ロベルト・オスナ投手。1回無失点に抑えると、試合後に鷹フルの取材に応じた。
2点ビハインドの9回からマウンドへ。先頭の郡司を二ゴロに抑えると、松本を中飛、最後はマルティネスを空振り三振として、任務を完了した。8月は4試合目の登板で、11日の日本ハム戦から中1日。ビハインドの登板は6月11日の巨人戦(同)以来、今季2度目だったが、斉藤和巳投手コーチは「本人が『行きたい』って言ってくれたから、投げてもらった」と説明した。
メキシコ出身のオスナは、2015年にブルージェイズでメジャーデビューし、2019年には38セーブを挙げてア・リーグのセーブ王となった。昨季途中にロッテに入団すると、29試合に登板して防御率0.91。圧倒的な成績を残して、今季からホークスの一員となった。シーズン中はこれまで、ほとんど自らの胸中を明かすことのなかった右腕。今のチーム状況は、一体どう見えているのか。
「正直、今の結果になるとは自分も望んでいなかったというか、イメージはしていなかった。チーム全員がそういうイメージだと思いますけど。『どういうふうに見える』という(質問に答える)のも難しいというか……。難しい状況だとは思います」
ちょうど100試合を消化して50勝48敗2分け。3位で、首位のオリックスとは大きなゲーム差もつけられている。3年ぶりの優勝を目指した2023年は、大型補強を敢行。オスナも1月の入団会見では「去年までのホークスの活躍、チームを見ていて『ここでやってみたい』というのがあって決めました」と、ホークス入団の決め手を語っていたが、今の結果には自身もジレンマを感じている。
この日の“志願登板”については、「自分の投げるリズムが狂ってきていると思う。シーズンの最初の方なら(自分の)好きにはならなかったですけど。プレーオフ(ポストシーズン)だったり、そういうのも関わってくるので。そこに向けてリズムを良くさせたくて」と説明する。可能性がある限り、最高の準備をして、全力で戦うのはプロとして当然だ。「先を見据えた上での登板だったのか」と問うと、オスナはさらに先の時期まで見据えていた。
「自分の契約が単年なので。もう数か月したら“フリーエージェント”になる。そういう意味でも、しっかり投げられているところを見せないと。球速もそうだし、健康な状態であることを、ここのチーム(ホークス)はもちろん、他のチームにもアピールしないといけない。そういうところも含めて、投げています」
来年の2月には29歳。オスナほどの実績があれば、当然、メジャーリーグ復帰だって選択肢に入ってくる。自分のキャリアを考えても、1球1球が「アピール」になるとハッキリ言った。
もちろん、今季へのモチベーションを失っているわけではない。4日から6日の北海道遠征では、リリーフ陣の6投手を連れて食事に出かけた。松本裕樹投手も「オスナが主催というか、誘ってくれて。野球の話が多いですね。こっちからも質問したり」と雰囲気を代弁する。津森宥紀投手も「僕は真っ直ぐが動くので、(それを生かして)『どんどん行け』って言われました」と、助言をもらったそうだ。これだけの実績がある右腕のもとに、若い投手も自然と集まっていく。
オスナを除けば、今のブルペン陣でリリーフとして継続して結果を残してきたのは又吉克樹投手だけだろう。それでも、試合前の時点で救援防御率2.83はリーグ2位。甲斐野央投手や田浦文丸投手らも含めて、若い投手の頑張りは、オスナの目にはどう映っているのか。
「『やれることをしっかりやる』というのは引き続き、できている。ただチーム状況もありますが、若い選手も若くない選手も、今のこの状況につながっているのは、『疲れ』があるんじゃないかなと思う。移動もありますし、各選手がアップしてブルペンで投げたりしている。見えない部分での疲れがたくさん出ている。それが、今のチーム全体の状況や順位につながっていると思います」
“救援陣の疲れ”を見て取っているのは、オスナの目だけではない。7月13日の西武戦(同)で先発した大関友久投手は6回1失点。リードした状況でリリーフ陣にバトンを託すも、後続が打たれて逆転を許したが、「中継ぎの人たちの疲労も、明らかに目に見えてわかります。そこは今、先発陣がカバーしないといけない」と責任を背負っていた。1か月が経った今の状況を見ても、オスナも「すごい疲れていると思います」と続ける。
メジャーリーグでも多くの経験を積み上げた百戦錬磨の右腕。今、大切にするべき意識について聞かれると、ハッキリとした口調でこう答えた。
「メンタル的にも強く持って、自分の仕事をしていかないといけない。ホークスのチーム力に、もう少し期待をして来たのもありますし。チャンピオンになるという意識で来ましたが、順位的にも、それがなかなか今は難しい状況。自分のことも、チームのことも考えながら、先のことも考えつつ自分の仕事を、強い気持ちを持ってやっていきたいです」
チームにとっても、自分自身にとっても、全ての瞬間が大切となる。今はホークスの一員として優勝を目指し、全力で戦うことが、自分のキャリアにもつながっていく。本質をとらえた、まさに一流の考えだった。