先輩投手を“ガツガツ”質問攻め 支配下昇格を掴んだ木村光の貪欲なキャラクター

ソフトバンク・木村光【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・木村光【写真:藤浦一都】

又吉や板東といった1軍経験ある投手に臆することなくアドバイスを求める

 1年目での支配下登録は“必然”だったのかもしれない。2022年の育成ドラフト3巡目ルーキー・木村光投手が17日、支配下選手契約を結んだ。育成新人で唯一、春季キャンプを宮崎で完走。小久保裕紀2軍監督も早くから評価してきた存在で、成長しようとする貪欲な姿勢が、人一倍光る存在でもあった。

 2軍のシーズンが始まると“1軍クラス”の先発投手陣の調整が優先され、まずは中継ぎとして登板機会を得た。5月14日に公式戦“初先発”したが、4回途中5失点で初黒星。その後、2軍の先発ローテを担ったが、なかなか“初勝利”が遠かった。全球種を同じピッチトンネルで投げられる制球力が光るが、「思った通りに投げた球でも抑えられなかったり、見切られたりする」とプロのレベルの高さを痛感した。

 初先発から6試合で0勝4敗。白星は掴めなくとも、常に前向きだった。「大学時代は抑えられていたところが抑えられなくなったというところで『これ通用せえへんねや』みたいな。そこから『もうちょいこうした方がいいかな』みたいな案が新しく生まれて。そんなに焦ったりとか、どうしようっていう感じはなく、想定の範囲内っていうか、こうなるやろうなみたいな。ずっと楽しいですね。いろいろ課題が出てきて」。このように語る表情はいつもイキイキしていた。

 壁が立ちはだかると燃えるタイプ。「めっちゃ自分で考えて、(周りに)聞いたりもして、自分のものにした時が1番楽しい」。成長への意欲は、積極的なコミュニケーションにも表れる。1軍経験のある先輩達を質問攻めにし、又吉克樹投手には、身体の使い方について尋ねた。木村光のイメージは「右の骨盤に溜めて投げる」だったが、又吉は「投げたいところに右の骨盤のラインを出していく」。異なるイメージ、考え方を聞き、新たな引き出しにできることを喜んでいた。

 1軍の先発ローテに入る板東湧梧投手には試合中の修正方法を聞いた。「『球が浮いていたら、どういう感じで修正していますか?』とか聞かせてもらいました。せっかくいらっしゃったんで、お話させてもらおうと思って。板東さん、結構みんなの動画見ているんで『最近良かったやん』って声も掛けてくれました」。板東からの助言は“重心の位置”を変えて微調整するというものだったという。

「せっかくそういうチャンスがあるならっていうか、自分より経験してきている人がたくさんいる。いいアドバイスをいただけるので、それを聞かないのは損かなと思って。結構、躊躇はするんですけど、ガツガツいってますね」。日頃から先輩投手陣の“野球談議”にも参加する。こうした意欲的な姿勢が、1年目での支配下昇格を手繰り寄せた要因の一つだろう。

「ここに入ってきてからずっと、1軍の試合で活躍するっていうのを前提にやってきているんで。やることをやっていれば、ちゃんと結果はついてくると思う。大卒なので、1年目とか関係なく、しっかり1軍で活躍していかないといけないと思っています」

 5月に本拠地PayPayドームで2軍戦が開催された際、登板機会のなかった木村光は1人、ジャージ姿でスタンドに姿を見せ、グラウンドを見つめていた。自身が1軍で投げる日をイメージしていたのか――。前向きで学ぶ意欲に満ち溢れた期待の新星。あの時、見つめたPayPayドームのマウンドに立つ権利をその手に掴んだ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)