高校時代はベンチ外も3軍ではや5勝 育成ドラ10左腕がダルビッシュから得たキッカケ

ソフトバンク・前田純【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・前田純【写真:上杉あずさ】

育成10巡目ルーキー前田純は13登板で5勝、防御率2.23をマーク

 ソフトバンクの育成10巡目ルーキー前田純投手が、3軍でチームトップタイの勝ち星をマークしている。日本文理大から今年ホークスに加入し、ここまで13試合に登板。40回1/3を投げて、防御率2.23を記録し、5勝0敗で勝ち頭になっている。

 中部商時代はベンチメンバーに入ったこともなかった。進学した日本文理大で徐々に頭角を現し、3年春からリーグ戦で登板。4年時には大学選手権でマウンドに立った。コツコツやってきたことが実を結び、育成ながらドラフト指名された。「1年目なんですけど、結果を残しつつ、自分が成長できるようにしていきたいです」と、結果にこだわってアピールしているところだ。

 3軍は主に独立リーグのチームと対戦する。「レベルが高いので、日々進化していかないと、慣れられたら通用しないなと感じています。変化していくのが大事なのかなという気がします」。投手が有利とされる初対戦では抑えられても、対戦機会を重ねると攻略されるリスクが高まると実感。日々成長する必要性を感じている。

 制球力にはある程度の手応えを感じている。「先に2ストライクに追い込むのは結構できる方だと思う。そういうところでピッチャー有利に進めていければ、自分の持ち味を生かしていけると思います」。身長は188センチあるものの、最速は142キロで「長身の割に球速がない」という。「思ったより(ボールが)来ないと相手に気付かれると、思い切り振ってこなくなって粘られる。三振を簡単に取らせてくれない」。粘られて、甘い球を狙われる傾向も感じている。

 変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップを操り、特に最近はチェンジアップに自信を深めている。「追い込んだ時に、真ん中でどう抑えられるかみたいな感じで、思い切って真ん中にチェンジアップを投げています」と不敵な笑みを浮かべる。大学時代は自信のある球種ではなかったが、ある時に「だいぶ投げたいところに投げられるようになってきた」とうなずく。

 キッカケを与えてくれたのは、ダルビッシュ有投手(パドレス)のYouTubeチャンネルだった。「同期の松本晴がダルビッシュさんのYouTubeを見ていて、自分も見てみました」。ダルビッシュの変化球の“極意”に触れたことで、感覚を掴むことができた。「指先で握るというよりは手のひらで操るイメージ」。ダルビッシュの言葉を借りると「中手骨をメインにして握る」。チェンジアップは「第3中手骨と第4中手骨をメインに握り込むとスピードを落とせる」とされており、それを参考にしたところ、精度が上がった。

 大学時代はカーブとあまり変わらない120キロ台前半だったスライダーも、130キロ前後出るようになった。これまでは「抜けて行っちゃう感覚」のボールだったが、「潰すみたいな感じ」で投げるようになってから効果的なスライダーが投げられるようになった。それも、大卒同期の松本晴投手らと情報交換し、互いに高め合い、引き出しを増やしているという。

 高校時代、1度もベンチ入り出来なかった男は、グラブに刻んだ「不撓不屈」の精神で、一歩ずつステップアップしている。「3軍で当たり前のように結果を残していければ、2軍に呼ばれるんじゃないかと思う。そこを目指して、任されたイニングは完璧に抑えられる、調子の悪い時にも抑えられるっていうぐらいまで成長したいです」。好奇心旺盛な23歳は、プロの世界でも黙々とステップアップしていく。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)