中田賢一コーチも認める潜在能力 ドラ4大野稼頭央が取り戻した“折れかけた心”

ソフトバンク・大野稼頭央【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・大野稼頭央【写真:上杉あずさ】

24日の四国IL香川戦で初めて3軍戦で登板「勝負する場所」

 ソフトバンクのドラフト4位ルーキー、大野稼頭央投手が初めて3軍戦のマウンドに上がった。入団からここまでは新設された4軍で身体作りをしながら実戦経験を積み、5月24日に行われた四国IL香川戦に登板。正式な“昇格”ではなく、経験のための参加という形ではあったものの、5点リードの5回に2番手としてマウンドに上がり、1イニングを3者凡退。三振も1つ奪う堂々の“3軍デビュー”だった。

 四国ILのチームとは、4軍戦でも対戦があった。ただ、舞台が3軍戦となるだけで空気は違った。「相手チームは変わらないですけど、試合の雰囲気というか、3軍の森山(良二)監督も言っていたんですけど、4軍はいろいろ試す場所で、3軍は勝負する場所だ、と。すごく良い緊張感を持ってマウンドに上がることができました」と振り返る。

 4軍から3軍、3軍から2軍へと上がるにつれて“結果”への意識はより強くなる。4軍で課題と向き合う中で、3軍戦で“勝負する”という経験を得た。「また1つ上のレベルでのピッチングをしないといけないと、すごく肌で感じました」。1試合とはいえ刺激的な時間だった。中田賢一4軍コーチも「こうやって1つでも2つでも上の舞台で経験させることによって、野球の見え方が違ってくると思います」と今後の成長に期待した。

 3軍には中道佑哉投手や三浦瑞樹投手ら左投手が多く「練習の仕方だったり、トレーニングだったり、試合までの調整とか勉強になることがたくさんありました。試合でしっかり結果を出している選手も多かったので、タイプは違うんですけど、参考になる所がいろいろあって、すごくいい勉強させてもらいました」と振り返る。同学年の選手が多くいる4軍とはまた違う刺激があったようだ。

 まだまだ土台作りがメインになる1年目。「この1年は真っ直ぐを磨くことを中心にやっていきたい」と、これから長くプロで戦っていくための基盤となる真っ直ぐを突き詰めていくつもり。プロ入り後の最速は143キロだが、最速に近い球速帯が安定して出ていることに手応えを感じている。現在は投げるイニングが短いからこそ、より一層、力のある真っ直ぐへの意識も高まっている。

「下半身の強化がやっぱり一番大事になってくるかなと思います」。真っ直ぐの強化のために、トレーニングにも意欲的に取り組む。高校時代はやっていなかったウエートトレーニングには「今も苦戦しています」と苦笑いだが、継続している成果は、確実に強くなっている身体に表れている。

 順調に歩みを進めているようにも映るが、心が折れかけた時もあった。「4月終わりくらいから5月の初めぐらいに、ストライクが全く入らなくなった」。制球に苦しむようになり、弱気になった。立ち直りのキッカケは“開き直り”。「ど真ん中に投げたら、意外と打たれなかった」。思い切って投げた真っ直ぐで打ち取れたことで自信を取り戻した。

「そもそものランニングの体力とか、全般的なレベルの高さっていうところは感じてきた」と大野のポテンシャルの高さを認めるのは中田コーチだ。4軍でも、3軍でも、違った成長のヒントが得られる。大野はそのポテンシャルを開花させるべく、じっくり基盤づくりをしながら経験を積んでいる。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)

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