小久保2軍監督も絶賛の育成4年目 伊藤大将が“信頼される”理由と成長の跡

ソフトバンク・伊藤大将【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・伊藤大将【写真:上杉あずさ】

小久保2軍監督「去年より遥かに良くなってるような気がしますね」

 指揮官も大絶賛だった。2日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの阪神戦。4回に貴重な同点打を放ったのは、ソフトバンクの育成4年目・伊藤大将内野手だった。「9番・二塁」でスタメン出場すると、逆転された直後の4回に左翼フェンス直撃の適時二塁打を放った。この日は2安打1打点。チームの勝利に貢献した。

 伊藤は3軍で打率.364と結果を残し、二遊間の選手に怪我人が相次いだこともあって2軍へ上がってきた。第1打席は無死一塁で「必死でした」とバントを1球で決めた。第2打席も無死一塁。今度は「打て」のサインだった。「またバントかなと思ったんですけど、出なかったので、思いっきりいこうと思いました」と初球のスライダーを捉えた当たりは、あと一歩で本塁打というフェンス直撃の一打となった。

 この日のプレーを絶賛したのが小久保裕紀2軍監督だった。フェンス直撃の一打に「ホームランかと思ったけど、ホームランであれば支配下が近いでしょうね。あの当たりでもフェン直やったっていうのが育成っていうところですよね」と言いつつも「ほんとよくやっていますよ。バッティングは去年ずっと見ていましたけど、去年よりもう遥かに良くなってるような気がしますね」と成長に目を細める。

 第4打席は一、二塁間を抜けそうな当たりをヘッドスライディングで内野安打にした。「勝手に身体が動きました」。怪我防止のためチーム内では“禁じ手”でもある一塁へのヘッドスライディングだが、泥臭いプレーに指揮官も「ものすごい伝わってきました」と伊藤の執念を感じ取っていた。

 好調のキッカケは森笠繁4軍打撃コーチの一言だった。「僕みたいな選手は初球から行ったらもったいないと思っていた。1球待とうと考えることもあった」という。4軍戦に参加した際に森笠コーチから「初球から振っても簡単に打てない。初球に1番いいボールがきたりするから、そこは常に準備しとけ」と言われて、ハッとさせられた。初球から常に打ちにいけるように心がけたことで結果が出始めた。

「スイングが小さくなりました。身体の近いところで振れるようになってきた」。小久保2軍監督は伊藤の進化のポイントをこう語る。伊藤自身も「コンパクトに回ることを意識しています。ポイントを近くというか、身体の中でターンするというのを秋からずっとやってきた。まだまだですけど、だいぶ自分のポイントも合ってきたので、当たるようになってきたかなと思います」と手応えを感じている。2軍ではまだ2試合の出場だが、6打数3安打2打点と結果も出ている。

 伊藤の持ち味は内野ならどこでも守れる守備力。小久保2軍監督も「安心して送り出せる」と信頼を寄せる。現在の2軍では、1軍クラスの投手がローテーションで投げていることもあり、指揮官は「二遊間はある程度守れる選手を置いておかないといけない」と言う。その中で、二塁として起用する選手として、伊藤の名前が挙がっている。一方で、打撃面が課題なのは明確。「打てばいけるというのは僕の中ではずっとある。打てば、ずっと打てばいい。打つだけじゃないですか」。まさに今が勝負時なのだ。

 昨季から意識していることがある。それは誰よりも早く守備位置に就くこと。「(プロの世界に)変に慣れるよりフレッシュでいいんじゃないかと。僕はまだ1軍の選手でもないし、高校球児みたいに駆け足で行った方がいいんじゃないかということで」と、少し照れ臭そうに笑う。これまで、あまり“泥臭さ”が表に出づらい選手だったが、今季は違う。2023年の伊藤大将からは様々な面で“必死さ”が伝わってくる。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)