鍼折れて開幕ローテ逃すも「しょうがない」 不慮の事故に見舞われた松本裕樹の胸中

「そうなってしまうほどの身体でもあった」とアクシデントを冷静に受け止めた

 練習再開も早かった。手術を受けた翌日にはキャッチボールを再開。起きたアクシデントにも松本は冷静だった。「そうなってしまうほどの身体でもあったというか。元々、腰が張っていて治療に行っていたわけなので、しょうがないっていう所でしかないですね。いくら考えても、どうにもならないので」。落胆するでもなく、悔いるでもなく、当然、怒りもない。淡々と現実を受け止めた。

 プロ8年目でようやく掴みかけていた開幕ローテだったというのに、驚くほど冷静だった。感情の起伏が少なく、常に落ち着いているいつも通りの松本の姿だ。周囲からは気遣われたのかと思いきや「僕がそこまで落ち込んでなかったので、割と励ましっていう感じはなかったです(笑)」と冗談交じりに話す。ポーカーフェイスもいつもと変わらなかった。

 今回のことで松本が最も気にしていたのは、アクシデントが起きた治療院のことだ。もともと腰に不安を抱えていた松本。2020年オフに手術を受ける前から治療やケアでお世話になっていた。近年の奮闘を支えてくれた“恩人”だけに、責める気など微塵もない。今でも感謝の気持ちが大きいという。

「僕より落ち込んでたり、心配してくれていたので。早く1軍に上がれることに越したことはない。やれるだけのことはやって、呼ばれるまでしっかり身体を作ってやっていきたい」。藤本博史監督も状態次第では早い段階で1軍でのチャンスを与えると示していた。治療院のためにも――。松本は今季の飛躍に向けて、これまで以上に燃えている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)