2月のキャンプ中…本多コーチにかけられた言葉
ホークスは28日、DeNAとの「SMBC日本シリーズ2026」第4戦に勝利し、4連勝で2年連続の日本一を達成しました。頂点まで駆け上がったチームの中で、一気にブレークを果たしたのが2年目の庄子雄大内野手でした。レギュラーシーズンでは自己最多の108試合に出場した24歳。日本シリーズでもチーム最多タイとなる3打点をマークし、全4試合でフル出場を果たすなど、日本一に貢献しました。躍動の裏側には、本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチから“覚悟”を問われた瞬間がありました。「お前、思っていないよな?」――。
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「(今宮に)勇と競争だとはっきり伝えました」
昨年のオフ、小久保裕紀監督ははっきりと口にした。今宮健太内野手と野村勇内野手による遊撃争い。ルーキーイヤーを終えたばかりの庄子は現状を受け止めながらも、熱い思いを胸に秘めていた。
「監督の『ショートは健太さんと勇さんの競争』という記事を見て、『そうだよな』と思う部分は確かにありました。でも、その時に『負けたくない』という気持ちも強く持ったというか。チャンスがあれば、という思いでやってきましたね」
競争のゴングが鳴った2月1日のキャンプイン。庄子は連日、サブグラウンドで本多コーチのノックを受けながら、泥まみれになって白球を追った。プロとしての厳しさを教えてもらった本多コーチから“覚悟”を問われるように、こう質問された。
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この先で分かる3つのこと
「控えでいいのか」本多コーチが庄子雄大に覚悟を問うた真意
練習意識に変化…庄子雄大が明かす1軍定着の泥臭いアプローチ
CSでMVP獲得も…庄子雄大が吐露した「余裕のなさ」と危機感
本多コーチが明かす真相「僕は最初から“その気”だった」
「お前、『控えでいい』なんて思っていないよな?」
今宮と野村勇という壁は、当然高い。それを理解したうえで、本多コーチが問いかけたのには理由があった。「僕が最初から“その気”だったんですよ」――。指揮官の発言により注目が集まった、遊撃をめぐる“一騎討ち”。その競争に庄子を飛び込ませようと、本多コーチは本気で考えていた。だからこそ、本人に強い覚悟があるのかを確かめる必要があった。
「もちろんです」と答えた庄子。この短いやり取りはもちろん、24歳の脳裏に強く焼きついている。
「僕もそういう気持ちでやっていました。チャンスが限られているのはわかっていましたし、与えられたものを絶対に活かしてやろうと。その思いでキャンプ中から練習していました。本多コーチも『隙あらば』じゃないですけど、『全然チャンスはあるからな』というのは常に言われていましたね」
1年目の2025年は26試合に出場。ホークスの戦力層は厚く、わずか4安打に終わっていた。本多コーチはなぜ、庄子に可能性を感じていたのか。その理由が「練習に対する意識の高さ」だった。
どんな時もノックやフリー打撃の「1球」を大切にする。言葉にすると当然のようにも聞こえるが、その“練度”が誰よりも高いことが庄子の持ち味だ。「去年はとにかく、自分の持っている能力を練習であげるという思いでした」。足元を見つめる24歳。1軍の舞台でさまざまな経験を積んだことで、その意識にも変化が現れている。
「去年は練習で『出し切る』。とにかく100%、120%というイメージでやっていました。そのおかげですごくレベルアップしましたし、基本的には今も変えてはいません。ただ、今は『試合にどうつなげるか』を意識しています。ノックなら、打者走者はどの球団のどの選手なのか。足が速い選手なら急がないといけないし、打球が強いバッターなら確実に捕って正確に投げること。常に試合を想定するように、意識を変えたところはありますね」
プロにとって練習は毎日繰り返される「日常」。だからこそ惰性で終わらせるのではなく、常に100%で練習に向き合い続けた。その愚直なまでの積み重ねに、庄子という男の真骨頂がある。泥臭く突き詰める執念こそ、厚い選手層を突き破った最大の理由だった。
CSファイナルではMVP…実感がわいた仲間の言葉
2年目の今シーズンは108試合に出場して65安打をマークした。リーグ2位の22盗塁を記録するなど「レギュラー」の座に大きく近づいた1年間だった。ただ庄子は、張り詰めた緊張を解くことはない。
「その日にいい活躍をしても、今の僕だと次の日のスタメンを確約されているわけではない。気は抜けなかったですし……」
切実な本音をこぼす。そして「正直、余裕はなかったですね」と続けた。グラウンドで躍動すればするほど、気を引き締める。“翌日のスタメン”を勝ち取るために、日常はどんどんと野球に染まっていった。
日本ハムと戦ったCSファイナルステージでは打率.455と大活躍し、MVPを獲得。お酒はあまり得意ではないという庄子だが、歓喜のビールかけは最高の味がした。ホテルに戻り、眠りに就いたのは深夜の2時。目を覚ましてタマスタ筑後の寮に戻ると、チームメートから何度も「おめでとう」と声をかけられた。「そこで『あ、MVPになったんだな』という実感がわきましたね」。自らの努力と準備が報われた瞬間だった。
本多コーチも認めるほどの“負けず嫌い”。真っすぐ野球に向き合ってきたが、努力が「いつ報われるのか」を最初から知っていたわけではない。確かなのは、ただ愚直に「練習は嘘をつかない」と信じ続けたことだ。巨大戦力を誇るホークスで生き抜くために、口にした「辛抱強く」という言葉が、あまりにも庄子らしかった。
「他のチームでもそうだとは思うんですけど、ホークスは常に辛抱強くやらないといけないと思います。いい時も気は抜けないですし、悪いなら悪いなりに耐える。上手くいかないことが続いて、1つ1つの行動や練習に手を抜くと、すぐに『じゃあ次の誰か』となってしまう。忍耐力というのは、大事にしてきたことなのかなと思いますね」
プロの世界で戦う。そう覚悟を決めた時から、“控えでいい”と思ったことは1度もない。2027年は3年目のシーズン。確固たる「レギュラー」を目指し、庄子はまた練習する。
(竹村岳 / Gaku Takemura)