斉藤和巳2軍監督が見た「確かな成長」
悔しさと、前を向く強さが交錯する。9月7日にファームへの降格を告げられた廣瀬隆太内野手が、現在の胸の内を語った。山川穂高内野手の1軍登録に伴い、今季3度目の1軍登録抹消。優勝へのマジックが「7」まで減り、歓喜の時が近づく中で突きつけられた現実は、あまりにも悔しいものだったはずだ。
「今年こそは優勝の輪の中に絶対に入りたいんです」
9月初め、北海道でそう語っていた廣瀬は今、どのような姿で野球に取り組んでいるのか。抹消からわずか5日後の12日。タマスタ筑後で行われたファーム・リーグ広島戦で2安打を放つ活躍を見せた背番号33は、「ヒットは出ているので状態は悪くはないです」と振り返った。そんな中、指揮を執る斉藤和巳2軍監督は廣瀬のある変化を見逃さなかった。
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この先で分かる3つのこと
斉藤和巳2軍監督が思わず拍手した「成長を示す走塁」
抹消時に首脳陣が廣瀬へ送った「自信を深める言葉」
歓喜の瞬間を諦めない廣瀬が明かした「再浮上への覚悟」
「1軍定着がここまでできてはいないけど、何かあれば隆太の名前が挙がっている。今年は3回落ちてきたけど、その都度成長を感じる。彼の姿がね。この1年で成長したと、こちらとしては感じています」
斉藤監督がその成長を実感したのは、この日の3回の場面だ。1死から左前打で出塁した廣瀬は、笹川吉康外野手の打席で投球がショートバウンドし、相手捕手がブロックした瞬間に躊躇することなく二塁に向かった。こぼれたボールは捕手の元を大きく離れたわけではなく、好スタートを切らなければ二塁を狙うことはできなかった。普段から走塁の意識を高く持っている廣瀬の走塁に指揮官は笑顔で手を叩いた。
「もうレベルアップするしかないので、切り替えてやっています。そういうところもしっかりやっていきたいと思っているので」。廣瀬は表情を変えることなく語るが、その言葉には熱が帯びていた。
自信につながった首脳陣の言葉
言い渡された登録抹消。首脳陣からは「山川を上げるから、また2軍で頑張ってくれ。優勝争いの中で結果を残した部分もあったと思うから、そこは自信にしてほしい」と背中を押されたという。勝負所での打点など、確かな足跡を残した手応えは廣瀬自身も感じている。「チャンスで多く回ってきたのもありますけど、打点をいつもよりは残せたので。そこはよかったです」と頷いた。
何度も1軍の壁にぶつかりながらも、その度に這い上がってきた泥臭さが今の廣瀬にはある。だからこそ、首脳陣の頭には常に「廣瀬」という選択肢が浮かぶのだろう。打撃だけでなく守備や走塁、細かなプレーの中にもこれまでとの“違い”を感じさせるのは、1軍で得た経験が確かな糧となっているからだ。
1軍の優勝マジックは順調に減り続け、“その瞬間”が目前に迫る中、そこにいられない歯がゆさを感じないはずがない。「まだ可能性はあると思うので。今はそこに向けてひたすらにやるしかないです」。歓喜の輪に飛び込むチャンスは、まだ完全に途絶えたわけではない。暑さが残る筑後で、悔しさを糧に一歩一歩前へ進むこの時間が、廣瀬を大きくする。再び巡ってくる時を信じて――。廣瀬の目は輝きを失っていない。
(飯田航平 / Kohei Iida)