7回のピンチからマウンドへ…連続三振で“火消し”
相棒の指先から伝わってくる“意思”に、深く頷いた。珍しいリリーフピッチャーのお立ち台。小久保裕紀監督が「今日の勝因」と語るほどの投球を見せたのだから、納得の人選だ。「本当に大事な場面だったので、リードを信じて。しっかりと腕を振って投げました」。津森宥紀投手は興奮が残る表情で振り返った。明かしたのは、直前にあった海野隆司捕手からの“要求”だ。
8日に行われた日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。先発のリバン・モイネロ投手が6回まで無失点の好投を見せていたが、7回にピンチが訪れた。2安打と死球などで1点を失い、なお1死一、三塁のピンチ。腰を上げた小久保裕紀監督が告げたのが、津森の名前だった。今川と代打の田宮を連続三振。「このファイターズ戦は、みんなが思っているように大事なカードなので。無事に帰ってこられてよかったです」。右腕は心地よさそうに汗を拭った。
今季はここまで44試合に登板して2勝0敗、防御率1.32、18ホールド。中継ぎ陣の一角として、首位をひた走るチームに大きく貢献している。奪った2つの三振のラストボールは、どちらも直球。海野からどんな意図を受け取っていたのか。直前に交わした会話に、重要なヒントが隠されていた。明らかになったのは、日本ハム打線への大きな“伏線”だ。
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この先で分かる3つのこと
「ここに来い」海野隆司がタイムを取って伝えた要求
1週間前の本塁打…田宮の狙いを読み切った配球の裏側
上茶谷大河の影響で開始…手応えを語る「グルテンフリー」
今川を三振に斬った後…海野隆司と交わした言葉
「本当に海野のリードを信じて、ミットに思いっきり投げようと。ただそれだけでした。自分の中でも割り切っていましたね。(ストライクを)取りにいくボールだけはやめようと思っていました。気持ちが入っているのと、入っていないのとでは全然違うので。腕を振って、構えたところに投げるだけでした」
今川を151キロで空振り三振に斬ったところで、海野はタイムを取った。マウンドで相棒と交わした会話。かけられた言葉について右腕は「あれ、何やったっけな。確かに話したんですけど、出てこないです。飛びました」。重要な局面で託された役割。集中していたあまり、ゲームセットから約1時間30分が過ぎた時点では簡単に思い出すことはできなかった。そして「あ、わかりました」。明かしたのは、海野から告げられた明確な要求だ。
「『インコースに行く時は思いっきり来て。ボールでもいいくらい』と言われました。構えとか見ていても『ここに来い』という感じでしたね」
結果的に海野が要求したのは、すべてアウトコース。それでも、相棒の“一言”があるだけでも大きな違いがあると津森は言う。「いきなりサインが出るよりは、僕も気持ちの準備をしておいた方がいいじゃないですか。そうしたら『よし、インコースか』と思える。ピンチで僕も腹を括っているので、そういう狙いが(海野にも)あったんだと思いますよ」。打者は今季5本塁打の田宮。1週間前の放物線が、津森の脳裏をよぎっていた。
上茶谷大河の影響で始めた「グルテンフリー」
3時間46分の激闘の末、引き分けに終わった今月2日の日本ハム戦(エスコンフィールド)。田宮は上沢直之投手から右翼スタンドにソロアーチを放っていた。振り切ったのは2ボールからの3球目、146キロの直球。この一発を頭に入れつつ、カウントに応じて大胆なスイングを仕掛けてくる相手であることは、津森も理解していた。
この日の対戦に置き換えて、背番号11はこう語る。「『1、2、3』のタイミングではきていたと思いますよ。5球目の打ち上げたファウルもそうでしたし、その(直球に合わせた)タイミングでは仕掛けてくるやろうなとは思っていました」。だからこそ、インコースに投げるなら絶対に厳しく――。海野の考えをしっかりと感じ取り、アウトコースへの直球を全力で投げ込んだ。相手の狙いを読み切ったバッテリーの勝利だ。
今年の4月からは小麦を摂取しない「グルテンフリー」を始めた。上茶谷大河投手から受けた影響がきっかけで、麺類、パン、揚げ物を口にしなくなった。「ちょっとしたものにも小麦は入っているので、完璧にはできていないんですけどね。今までは好きなものを食べていましたけど、動きやすくなりました」。体重の増減はないというが、思考がすっきりした感覚を覚えている。「今までは重たいなと思うこともあったんですけど、今は大丈夫ですね」と手応えを語った。
自身の取り組みも実を結んだ。まさに「心技体」が揃った完璧なパフォーマンスだった。優勝へのマジックナンバーは1つ減り「13」に。重圧がかかる最前線でマウンドに立つのは、充実感がある。「気持ちは自然と出ますよね。開幕は2軍から始まりましたし、その時に比べたら今はいい感じかなと思います」。パ・リーグ3連覇へ、絶対に欠かせない背番号11の存在。頼もしい“相棒”がいるから、全力でバッターに立ち向かっていける。
(竹村岳 / Gaku Takemura)