細川コーチが見抜いた渡邉陸の“佇まい”
密かに記し続けてきた「ノート」の厚み。それが知らず知らずのうちに恩師の目に留まっていたことへの“気恥ずかしさ”、そして確かな手応えを語ったのが渡邉陸捕手だ。日々持ち歩くルーズリーフはリングを閉じることができないほどパンパンになり、新たなページを追加する際には古いものを外さなければならない状態になっているという。
「陸は去年、ノートがペラペラだったのに、今年はもうパンパン。自分で考えて、自分の言葉で書いている」。細川亨バッテリーコーチが目を細めれば、当の渡邉は「え? バレてる」と照れくさそうに頭をかいた。しかしその表情には、誰に見せるためでもなく、自分自身と愚直に向き合ってきた自負がにじむ。
なぜこれほどまでに言葉を埋め尽くすようになったのか。その背景には“プロの捕手”として一皮むけるための、静かな思いがあった。その分岐点に迫る――。
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この先で分かる3つのこと
昨季の降格時に細川コーチがかけた「ある言葉」
パンパンのノートに記された「意外な中身」とは
技術以上に細川コーチを驚かせた「ある変化」
「昨年、2軍に落ちた時に、細川コーチから『試合に出ている時だけじゃなくて、出ていない時もメモを取ったりしろ』と言われたんです。書く量が増えたのはそこからですね。去年のシーズン後半くらいからです」
渡邉が語ったノートの内容
ベンチを温める悔しさを抱きながらも、与えられた教えを愚直に実行に移した。ペンを走らせる習慣はすっかり定着し、今年のキャンプ、オープン戦を経て、その量は増していった。びっしりと書き込まれたページを構成するのは、打撃の感覚以上に、扇の要として感じたことだ。
「バッティングのこともありますけど、基本はキャッチャーとして感じたものを書くことが多いですね。配球だったり、ピッチャーの特徴だったりとか。色々ですね」
試合に出た時はもちろんのこと、出ていなくとも、ベンチから見る一球一球の意図を読み解き、投手の特徴や感情の揺れをノートに落とし込む。“自らの言葉”で書き記す作業は、頭の中の思考を揺るぎない「根拠」へと変えていった。
細川コーチが成長を感じたのは、厚みを増したノートだけではなかった。6月4日に今季2度目の1軍昇格を果たした際に番号00が見せた“佇まい”だったという。「陸の成長を感じたのは試合前のノックでしたね。今までは『一生懸命やればいい』という感じだったんですけど、『考えてやっているな』と感じました」と目を細める。
刻み続けた思考と気づき
「これまで1軍でも試合途中から行くことはほとんどなかったですけど、出ていない時でも試合の流れを感じて、いきなり出た時にも流れを読み取れるようにというか。ちゃんと試合に入っていけるように、というところは意識してやっています」
渡邉が積み重ねてきたルーズリーフの束は、その背中を支えるものとなる。見えないところでも最善の準備を尽くす真摯な姿勢があるからこそ、渡邉陸は投手陣から厚い信頼を寄せられている。自身の言葉で刻み続けた思考と気づき――。確実に分厚くなっていくそのノートが、再び1軍の舞台で戦うための武器となる。
(飯田航平 / Kohei Iida)