背番号23の矜持…「良くない雰囲気は出さない」
昨季までの選手会長はチームの現状をどう見ているのか。チームが勝つために自分ができることは何なのか――。走塁と守備でチームを救い続ける一方で、自身の打撃には「良くないですね。だいぶ良くない」と首を横に振る。2位・西武との直接対決で勝ち越しに成功した中、チームリーダーとして戦い続ける周東佑京外野手が胸の内を明かした。
5日にPayPayドームで行われた西武戦の初回、周東は中前打で出塁すると、続く近藤健介外野手の右前打で一気に三塁を陥れた。直後、西武ベンチは「二塁ベースを踏んでいたかどうか」を確認するためにリクエストを要求し、球場はざわついた。だが、映像確認を待つ間も周東は冷静だった。「もうちょっと踏もうと思ったんですけど、鋭角に入りすぎました。でも確信はありました」。そう振り返る通り、判定は覆らず。その後、栗原陵矢内野手の犠飛で先制のホームを踏んだ。
守備でも6回、9回とフェンス際の深い飛球を好捕。「打った瞬間に捕れると思いました。フェンスを越えない限りは捕れると思いました」。涼しげな表情で語る30歳は、何度もチームの窮地を救った。
試合は2-0で勝利。先発の大津亮介投手が7回無失点と踏ん張り、松本裕樹投手、杉山一樹投手へとつないで西武打線を無得点に封じ込めた。周東だからこそできるプレーの連続だったが、試合後に背番号23が語ったのは、グラウンドに立つ者だけが感じるチームの現状だった。「勝てばもう何でもいいので」――。攻守にわたる華々しい活躍の裏で、背番号23は葛藤を抱えながらプレーしていた。
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この先で分かる3つのこと
周東が不振脱出へナイター後に行った「密かな練習」とは
苦悩する栗原に前会長の周東があえて「声をかけない」理由
勝利の裏で周東が「切羽詰まっている」と吐露した理由
不振への焦りと居残り練習
「いやー、良くないですね。だいぶ良くない。今日のバッティングは兆しが見えたんですけど……良くないって感じです」。4日の同戦ではセーフティーバントで内野安打をもぎ取り、この日も安打を記録した。それでも、自身の打撃について問うと、周東は苦笑いで首を横に振る。
「チームが勝てば、それでいい」
そんな思いを口にする一方で、自分自身の打撃から目を背けることはできない。チームの勝利を最優先にしながらも、もっと打たなければいけないという思いもある。その2つの感情を抱えながら、周東は日々、打撃と向き合っている。4日のナイター後もそのまま帰路についたわけではなかった。室内練習場へ向かい、打撃練習を行った。
「最初は正面からのトスです。その後にトラジェクトアークを打っていました。もうやるしかないので。試合に出ている以上は責任もありますし、良くない雰囲気を出さないようにはしたいので。なんとかできるようにって感じですかね」
栗原陵矢を見守る眼差し
そこには、同じようにもがき苦しむ栗原の姿もあった。昨年まで選手会長を務めた周東から、その大役を引き継いだのが背番号24だ。1日にエスコンフィールドで行われた日本ハム戦では、栗原の悪送球がきっかけで失点し、チームは敗戦。打撃でも思うような結果が出ずにいた。そんな栗原に、周東からかける言葉はないという。
「周りに言われたら分かるけど、本人が気付かないと本人のためにならないので。本人が気付けば、それは大きなことだと思いますし、言うのは簡単です。選手会長という立場もありますし、この前の出来事もありますし。より一層、自分と向き合っている感じはしますけどね」
励ますことはできる。声をかけることもできる。けれど、それだけでは乗り越えられないこともある。昨年まで選手会長としてチームを背負ってきた周東だからこそ、「僕が言うことはないです」。栗原自身が答えを見つけることを待つという選択だった。
そんな中で、この日の栗原は2打点の活躍でヒーローにも選ばれ、シーズン100打点に到達。苦しんでいた男たちが、チームの勝利に大きく貢献した。それでも周東はチームの現状を冷静に見つめる。「昨日も6点差だったけど、やっている方はギリギリだし、切羽詰まっている。勝てばもう何でもいいので」。その言葉の裏には、自分自身に対する厳しさが同居している。
自身の状態に納得がいかずとも、チームのために己を奮い立たせ、仲間の成長を静かに見守る。「現状の中でできることをしっかりやるっていうだけです」。そう語る背番号23の口調には、一切の迷いがなかった。
(飯田航平 / Kohei Iida)