8月27日のロッテ戦で今季116安打目をマーク
球団が福岡に移転して以降、初のパ・リーグ3連覇を目指すホークス。8月25日からは2カードに渡ってビジターゲームを戦い、4勝2敗。優勝へのマジックナンバーを「19」まで減らし、いよいよ勝負の9月が始まる。レギュラーの1人として、ナインを力強く引っ張っているのが周東佑京外野手だ。
今季は113試合に出場して打率.278、2本塁打、31打点。8月27日のロッテ戦(ZOZOマリン)では2回に一塁を強襲する適時内野安打を放ち、これが今季116安打目となった。2024年にマークした115安打を塗り替えるキャリアハイとなり、ロッテとのカードでは得点でも自己最多を更新するなど、走攻守の全てにおいて高いパフォーマンスを発揮してきた。
「出場した試合数以上は打たないといけないですね。去年も150本は打ちたいと言っていて、打てなかったですし。今年も同じ数字を目標にしているので。足りないなと思います」。キャリアハイの更新に満足することなく足元を見つめる。その背景には、スピードスターゆえの「いつか走れなくなる」という危機感と、打者として生き残るための飽くなき“野望”が存在していた。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
周東佑京が千賀や甲斐の背中から学び胸に抱く野望とは?
「いつか走れなくなる」周東佑京が描く今後の選手像
1年目の打撃映像を見た周東佑京が漏らした率直な感想
1年目から打撃が課題も「打てれば試合に出られる」
「なんか、自分で言うのもあれですけど、すごく野望が高かったです。現状で満足したくないという思いはずっと持ち続けてきた。千賀(滉大)さんや拓さん(甲斐拓也)、いろんな先輩に道を作ってもらって、そういう選手を目指してきたので。『頑張ってやればこれくらいいく』と思いながら、下の子にもやってもらいたいですね」
今年の1月23日に行われた契約更改で、周東はそう口にしていた。昨オフに結んだ5年20億にも及ぶ大型契約(金額は推定)は、育成ドラフトから入団して掴み取った大きな“夢”だった。自分自身を突き動かしてきたのは「野望」の2文字。押しも押されもせぬレギュラーとなった今も、その気持ちは燃えたままだ。
育成選手だった1年目の2018年は、ウエスタン・リーグで打率.233。支配下登録された2019年も、1軍では同.196だった。走力という圧倒的な武器がある一方で、打撃面が課題であることは明白。その事実が、周東に希望を抱かせた。バッティングという壁さえ乗り越えられれば、一気に道は開ける――。自らの野望を果たすため、どこまでも愚直にバットを振り続けた。
「打てれば試合に出られるとは思っていましたし、結果を残せば球団もそういう評価をしてくれるはず。走るのは『いける』と思っていましたし、外野になって守る不安も無くなってきたので。打ちさえすれば試合に出られるわけだから、そこをどうにかすればとは思っていましたね」
スピードスターの寿命「いつか走れなくなる」
プロ野球の歴史を振り返れば、最年長で盗塁王を獲得したのはロッテの荻野貴司で、24盗塁でタイトルに輝いた当時は36歳だった。「僕のタイプで長く(現役が)できる選手は少ないじゃないですか。そこは先を見据えてやらないと、野球人生は長くできない」。スピードスターの“寿命”は長くない――。1年でも現役でいるためには、走るだけではなく、さらなる打力が必要ということは自覚していた。
安打数で自己最多を更新したのは、自らの“懸念”を払拭する結果にもなったはず。27盗塁はリーグトップだが「そんなに数を走れているわけじゃない。いつか走れなくなるので、あと2、3年のうちにもっと違うことに取り組まないといけない。例えばですけど、それこそ体がしんどい時には(首脳陣が)DHでも使いたくなるレベルまでいければ」。今年2月には30歳を迎えた。グラウンドに立ち続けるために、これからも「打撃」という課題に対して真っすぐ向き合っていく。
今シーズン、月別で言えばもっとも苦しんだのは5月だった。それでも月間打率.245と、高い位置で好調を維持しているかと思えば、本人は首を横に振る。「いい日はいいんですけど、次の日はよくないということもある。去年は練習から良くて試合でもそれを出せていたけど、今年は不思議です」。そう苦笑いした一方で、確かな成長も感じ取っていた。
「それこそ、3か月くらい前に1年目のバッティング映像を見たんですよ。逆に、『よくこれで打ちたいとか言っていたな』と思いましたね。その頃に比べれば技術的にもフィジカル的にも違うと思うので。やりたいことの(レベルが)上がったのかもしれないです」
育成から這い上がり、掴み取ったレギュラーと大型契約。それでも、胸の中に燃える「野望」の炎が消えることはない。キャリアハイも通過点。スピードスターという枠を超えて、打者としてさらなる高みを目指す周東佑京の眼差しは、はるか先を見据えていた。
(竹村岳 / Gaku Takemura)