19日の日本ハム戦で自己最速の154キロを計測
選手の知られざる本音に独自の目線で迫る「鷹フルnote」。今回は上沢直之投手の登場です。19日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で、自己最速を更新する154キロをマーク。渾身の一球を本人が振り返り、解説します。今もなお成長し続ける“伸び代”の証明。限界を作らない右腕が掴み取った確かな手応えと、さらなる「モチベーション」を語ります。
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32歳、プロ15年目を迎えても進化の歩みは止まらない。先発マウンドに上がった上沢は、1番打者の水野と相対した。わずか2球で追い込むと、躍動感のあるフォームから投じられたボールは自己最速の154キロを計測した。外角にビシっと決まり、見逃し三振。プレーボール直後の1打席を振り返り「あれは(打てる球が)なかったと思いますね。だからこそ、長いイニングであのクオリティを続けないといけないし、そこが課題だと思います」と自らを見つめる。
日本ハム、米国と渡り歩き今シーズンが15年目。来年2月には33歳を迎える背番号10が、自己最速を更新した。「いつ終わってもいい」――。そう腹を括る右腕は、なぜ今も進化を続けられるのか。アメリカで突きつけられた「球速」の壁、登板直後に繰り返す過酷なトレーニング、そして目標の「155キロ」へ。上沢が掴んだ手応えと、知られざる思考を打ち明けた。
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この先で分かる3つのこと
日本ハム戦で自己最速154キロを計測したソフトバンクの上沢直之。32歳・プロ15年目を迎えても進化を続ける右腕が掲げる目標、登板直後から始まる過酷なルーティン、そして米国挑戦で痛感した壁と「まだできる」と思えるモチベーションの裏側に迫ります。
自主トレ期間から掲げていた目標まで「あと1キロ」
「1回“マックス”を出しておきたいなと思って、腕を振りにいった感じはありましたね。最速が出たのでいいんですけど、もっと腕を振れる感じもあったので。『もしかしたらもうちょっと出たのかな』と思ったりもします。今年は155キロを投げるという目標で入っているので。あと1キロ乗せられるようにしたいですし、平均球速から上げられるように。常に150キロ台を出せるようにしたいですね」
まだまだ自身の状態も手探りだった立ち上がり。この日のコンディションを踏まえて、“マックス”を知っておくために力強く腕を振った一球だった。「出力は出ていましたし、『こうやったら出るのかな』と自分の中でわかったところもあったので。これを試合の最後まで継続しないといけないですね。毎イニング投げたいですけど、それが難しいなとも思いながら投げていました」。
水野を見逃し三振に斬った後、清宮には内角のスライダーで死球を与えた。制球ミスを反省しながらも、このボールにも好調ぶりがあらわれていたと右腕は言う。「ぬるい曲がり方をしていたら、避けられちゃうと思うんです。でも、しっかりといい曲がり方をしていたおかげで、(あの日)使えるボールになっていたのかなと」。最大の武器であるフォークに加えて、スライダーは今の自分を支える大切な球種。直球の走りに比例するように、その他のボールにもキレを感じ取っていた。
4月18日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)では、9回1死まで無安打に抑え込んだ。大記録の誕生すら予感させた好投。しかし上沢は試合後、周囲の期待を感じつつも、自らの“人生観”を口にしていた。「短い人生、いつまでも野球ができるわけではない。アメリカで挫折もしましたし、これから先も長くないので。悔いなく過ごすことが大事だと思います」。
過去には右肘や左膝にメスを入れた。年齢的にも、ダメだったらユニホームを脱ぐしかないことはわかっている。そんな覚悟があるからこそ、更新できた自己最速。生活の全てを、野球に捧げてきた何よりの証だ。
「『まだまだやればできるんだ』と、自分にとってもモチベーションになりましたし、ここからも頑張りたいなと思いましたね。『まだできる』と思えるような1年にしたいと思って日々やっていますし、来年以降ももっとそういうシーズンにしていきたいです」
登板直後のウエートトレーニングがルーティン
先発登板の日は、試合後にウエートトレーニングに励むのが右腕のルーティンだ。ホーム、ビジター問わず、ゲームセットの直後から次回登板に向けての準備は始まっている。「ペナントレースは6か月から8か月とかあるじゃないですか。筋肉も落ちてくるし、さらに上げようと思ったらオフシーズンだけではどうしても足りない。しっかりやろうと思ったら(登板の直後から)もう始めないといけないので」。1週間の中で回復とパワーアップと両立させるため、時間の使い方にも工夫を凝らしてきた。
2024年は米国球界に挑戦。日本とは違った文化に触れ、自らの野球も大きく変わった。「向こうは“球速が正義”というわけではないんですけど、球速が出ないとスタートラインに立てない感じはありましたね。日本よりも平均のスピードが速いので」。投球術という武器に加えて、相手を圧倒するピッチングスタイルの必要性も感じた1年。さらなる進化を追い求め、背番号10は絶対に歩みを止めない。
「毎日やれることやって、それを続けていくのはこれからも同じかなと思います」。淡々とした口調が頼もしい。開幕投手を託された2026年。1勝の重みが増す終盤戦で、上沢直之がさらなる進化を遂げる。
(竹村岳 / Gaku Takemura)