中村晃が復帰したこの日…庄子雄大が体現した準備の伝統
午後2時のプレーボールからさかのぼること5時間前、照明も点灯したばかりで静まり返っていた本拠地のグラウンド。“一番乗り”で姿を見せた23歳に、受け継がれるべき意思は宿ろうとしている。庄子雄大内野手が口にした、確固たる決意。「僕がホークスのショートを守るんだ」――。井口忠仁、川崎宗則、今宮健太……。歴代のスターが守り抜き、チームの象徴であり続けた特別なポジション。常勝軍団の看板を背負ってきた名手たちの系譜に、自らの名を刻む覚悟はできている。
序盤から主導権を握り、白星を掴んだ22日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。庄子も2安打2打点とチームの流れに乗り、勝利に貢献した。「2本のヒットも、逆方向への低いライナー。僕の理想的なバッティングだったと思いますし、(7回の)犠牲フライもフォークをケアしながら反対方向に、という意識でいたので。ああやって体現できたのは良かったと思います」。8月は月間打率.325と好調を維持。勢いに乗る若鷹がグラウンドで躍動する中、チームにさらなる“熱”をもたらす男が戻ってきた。
この日、今季限りでの現役引退を表明している中村晃内野手が1軍に昇格した。2か月半ぶりに帰ってきた“戦いの最前線”。背番号7は午前7時には球場入りを済ませ、試合に向けた準備を始めていた。庄子も「晃さんは本当に、もう準備しすぎなんじゃないかというくらいの準備をされています」と憧れの眼差しを向ける存在だ。チームに数々の伝統を残してきた36歳の姿を見て、思い返したのはチームを陰から支える人々の力強い言葉だ。
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この先で分かる3つのこと
裏方さんの言葉と先輩の姿…庄子雄大が受け継ぐチーム伝統
早朝9時15分に姿…庄子雄大がベテランの背中から学ぶ準備とルーティン
「僕がショートを守る」庄子雄大が語った力強い発言に込めた真意
庄子雄大が心がける早めの準備「立ち遅れしない」
今のチームには、ダイエー時代から選手を支えている裏方さんも数多くいる。日本ハムとのデッドヒートを演じていた昨年9月。早々とグラウンドに姿を見せる中村晃、牧原大成内野手らの姿を見て「彼らに続いていくように、若い選手たちが真似してくれるかだよね」という言葉も聞こえてきた。ベテランがナインを引っ張る背中は頼もしい。一方で、ホークスの伝統を後輩が受け継いでいけるか――。その1点を、チーム内のさまざまなスタッフが注目して見守っている。
中村晃が昇格したこの日、どの選手よりもグラウンドに早く姿を見せたのが庄子だった。時刻は午前9時15分ごろ。「今日はデーゲームだったので、ちょっと早めに来て体をほぐす時間を取りたいなと。先輩たちの姿を見ていたら、準備の大切さは身に染みて感じている部分があるので」。8月は結果を残しているが、まだまだアピールが必要な立場。早めに始動するのは、23歳が常に心がけていることだ。
「今シーズンは去年と違って長くグラウンドに立っているので、試合までに万全の状態に持っていくにはどうすればいいか。それを考えた時に早めに来て練習の段階から動きやすくした方がいいとか、バッティング練習があるなら何分前には済ませておくことがある、とか。そういうところは考えていますね。立ち遅れないように、早め早めに準備することは考えています」
プロ2年目の今季、ここまでのスタメン出場は56試合。重圧のかかるグラウンドに立っていれば、自然と疲れも溜まってくる。毎日必ず貫いているのは、お風呂でのルーティンだ。「ホテルでも寮でも必ず湯船にお湯をためますね。半身浴というか、そこに浸かることで汗をかきます。最後は冷たいシャワーで終えるというのは、ずっと続けていますね」。経験を積めば積むほど、23歳の姿はどんどんプロらしくなっている。
「僕がホークスのショートを守るんだ」
16日に本拠地で行われた楽天戦で庄子は2安打3打点の活躍を見せ、横浜高の先輩でもある近藤健介外野手とともにヒーローインタビューに選ばれた。試合後の囲み取材。打ち明けたのは、抱き始めた思いだった。「『僕がホークスのショートを守るんだ』という気持ちは、だんだんと強くなってきましたね」。誰よりも遊撃を守ってきた2026年、まさに強い自覚から生まれた発言。その真意とは、一体どんなものだったのか――。
「首脳陣がどう思っているのかわからないですけど、僕の受け取り方としては『(庄子が)守らないといけないんだぞ』というメッセージというか、そう思っているので。『ホークスのショートは誰だ』となった時に、一番の僕の名前が出てくるような活躍をしたいです。コーチの方もそうですけど、ファンの方からも『庄子だよね』と思ってもらえるように」
長らく“ホークスのショート”を背負ってきたのが今宮健太内野手だというのは、誰もが認めるところだ。ほかにも川瀬晃内野手や野村勇内野手らライバルも多い“激戦区”。背番号25も「当然ですけど、そこは競争ですから。安泰だなんてことは、どんな時もないと思います」と言い聞かせる。先輩たちから受け継がれる伝統を自分も守ることで、絶対に欠かせないプレーヤーへと成長していきたい。
「全力疾走だったり、カバーリングも含めて当たり前のことを当たり前のようにやるのがホークスの伝統、強みだと思います。チームとしての決定事項というんですかね。試合に出ていなくても意識するのは当然ですけど、出ているのであればより一層、責任感を強く持ってやらないといけないと思います。『僕も……』というには早いかもしれないですけどね」
プロ2年目のシーズンも終盤戦。絶対に隙を見せない堅実なプレースタイルを貫いてきた。決意が滲んだ「ホークスのショート」という発言。伝統と重みが詰まったポジションを、庄子雄大が掴み取る。
(竹村岳 / Gaku Takemura)