先頭の辰己選手を全球ストレートで遊直に仕留めると、続く宗山選手も全球真っすぐで左飛。マッカスカー選手には初球にスライダーを投じただけで、残りは5球連続のストレートで見逃し三振に。とにかく押して、押して、押し込んでいく。そんな投球でした。
ただ、プロのマウンドに立っていた人間として、これだけは言えます。全球ストレート勝負も、全球フォーク勝負も、相手を抑えるためにバッテリーが考え出す“緻密な戦略”です。津森投手の投球も、そう断言できる投球でした。
まず、中継ぎ投手にとっては、投じる1球1球すべてが“勝負球”になります。
先発投手は相手打線の2巡目や3巡目、もっと言えばカード全体、ひいてはシーズンの先も見込んで、捕手と投球を組み立てます。「未来への布石」のための1球を使うこともある。そうしたさまざまなことを考えて球種を選択します。まだ長いイニングがある。次の打席もある。今日という一日を、この先のシーズンをどう組み立てるかという時間軸で考えるのです。
ただ、中継ぎ投手は根本的に違います。特に接戦であれば、マウンドに上がった瞬間から、決して失敗できない勝負が待っています。やるべきことは、目の前の打者を抑えること、託されたイニングをゼロに抑えることだけ。1球で試合が決まりかねないだけに、全球が勝負球になるんです。
津森投手はストレートを投げ続けた理由を、こう話していました。
「その1球に自信があるから」
「打たれても後悔しないように」
1球ごとにバッテリーは「次のボールは何が一番いいのか」を考えて、選択していきます。持っている球種の中で、次の1球で抑えられる確率が最も高い球種はどれか。その選択の連続で、結果的に同じ球種が続くことになる。“単調に見えるだけ”なんです。
そして、もう1つ。ストレートばかりといっても、そのストレートに“同じもの”は1つもないのです。
津森投手もこう語ります。
「ボールを持つ長さを変えたりしていましたよ」
ストレートの中にも複数のパターンがある。ストライクゾーンに向かって、とにかく腕を振って投げる球、コースや高さを優先して投げる球。セットに入ってから長く持ってみたり、投球の間を変えて投げる球――。単調にならないよう、ちょっとずつ変化を加えれば、同じストレートでも違うストレートになる。「ストレート」という1つの球種の中に、いくつもの引き出しがあります。
この日の津森投手は明らかにボールが走っていたし、腕も振れていました。実際に「今日はストレートで押していける」。そんな感覚があったそうです。
投手は年間を通して投げていれば、当然打たれることがあります。どれだけ良い投手でも、打たれる日はある。 でも、投手の世界は 「今日は打たれたな」 だけでは終わらないんです。なぜ、その球を選んだのか。なぜ、そのコースだったのか。なぜ、その球種だったのか。打者と向き合い、自分と向き合い、その瞬間にバッテリーが選んだ「最善の一球」だったのか。 そこが大事です。
津森投手にとってストレートは全投球割合の75%超を占める、生命線と言っていいボールです。この球で抑えることもあれば、当然打たれることもある。ただ、単調にストレートを投げているわけじゃない。リリーバーたちは、その瞬間で最も抑える確率の高い球、そして「このボールなら後悔しない」と思える球を選んでいるのです。
津森投手が何度も口にしている「とにかくゼロで帰ってくる」というフレーズ。中継ぎ投手にとって、本当に大切な言葉なんです。この一言の重みを、久しぶりに強く感じた試合が、冒頭に挙げた楽天戦でした。「ストゴリ」と呼ばれるピッチングの裏にも、技術があり、プライドがあり、そして覚悟がある――。それを知っていただけたら嬉しいです。津森投手、ナイスピッチングでした。