7人が支配下登録も計13試合登板で未勝利
「はっきり言って、物足りないですね」――。多くの個人成績がファーム・リーグ西地区の上位に並び、首位をひた走るホークス2軍。しかし、小笠原孝2軍投手コーチの現状への眼差しはどこまでも厳しい。7人もの育成選手が支配下登録を掴み取るなど、着実な成果が表れる一方、選手と向き合う中で「考え方を変えた」という分岐点とは何だったのか。鷹フルの単独インタビューで、その真意に迫った。
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ホークスは1軍だけではなく、2軍も西地区首位をひた走っている。2位・オリックスとも9ゲーム差をつけており、中でも投手陣の成長は著しい。防御率、奪三振、四球数などは同地区でもトップの成績だ。
昨年オフに2年連続で最多勝を挙げていた有原航平投手が日本ハムに移籍。さらに開幕からリバン・モイネロ投手を欠くなど、首脳陣による今季の「投手運用」は一筋縄ではいかなかった。穴を埋めるようにして、最速156キロを誇る藤原大翔投手ら7人ものピッチャーが支配下登録を手にした。しかし、小笠原コーチの言葉はどこまでも厳しい。「物足りない」と口にした真意は明確だった。
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この先で分かる3つのこと
支配下7人全員が未勝利…小笠原2軍投手コーチが語る「自分の責任」
全体数字のチェックをやめた…小笠原コーチが変えた個人重視の指導法
「1軍で活躍させるのは我々の責任」倉野コーチが語る小笠原コーチへの信頼
「支配下に“させてもらった”というふうになっている」
「はっきり言って物足りないですね。育成から支配下になるということは、すぐに1軍の戦力にならないといけない。それができていないのは悔しいし、支配下に“させてもらった”というふうになっているので。毎年そうですけど、もう少し活躍させられるように2軍でやるべきことがあったし、これからもそこを徹底させないといけないですね」
支配下登録されたのは藤原、大竹風雅投手、アレクサンダー・アルメンタ投手、北斗投手、小林樹斗投手、張峻瑋投手、そしてルイス・ロドリゲス投手。7人で果たした1軍登板は合計で「13」、先発機会に限れば5度だ。張、ロドリゲスは1軍昇格もできておらず、全員が未勝利という結果を小笠原コーチも重く受け止めている。「それは僕の責任ですし、すごく残念に思っています」と続けて語った。
支配下でも高卒2年目の村上泰斗投手を筆頭に、若鷹たちは着実に成長を遂げている。中日時代も合わせると指導者歴は10年を超える小笠原コーチ。リーグトップの成績を残している投手陣の現状を問うと、自らの中で生まれている変化を明かした。
「僕も前まではそういう数字を気にしていたんですけど、それをやめたんですよ。考え方を変えて、最近はチェックしていないです。見ているのは、個人。選手のテーマといった部分を重要視しています。四球を出してもこの球種で全部行く、とか。それくらい課題意識を持ってやらないといけないですね。数字はそう(リーグトップ)かもしれないですけど、選手の改善点と向き合っていれば、数字は勝手についてくるので」
全体の成績だけを眺めても、選手の“顔”は見えてこない。よりピントを絞って個人にフォーカスすることで、課題を明確に把握できるようにもなった。チーム成績の数字に執着しない一方で、個人の成長を促すためのデータには誰よりも精通している。首脳陣の1人としてコンビを組む奥村政稔2軍投手コーチにとっても「小笠原さんはめちゃくちゃ知識もあるし、何よりも熱い人。数値の見方も教えてもらって、(指導としても)幅がすごく広がった感じがします」と明かすほど、若手コーチにとっても背中を追う大きな存在となっている。
倉野信次コーチも厚い信頼「戦力の底上げ」
小笠原コーチは2023年に中日で「チーム戦略グループスコアラー(データアナリストコーディネーター)」を務めていた。ボールや選手の動きをミリ単位で追跡するトラッキングシステム「ホークアイ」の使い方にも長けており、現役時代の経験に加えて、数多くの知識を用いて選手たちと向き合っている。ホークス2軍投手コーチとして“チーフ”の肩書きを背負い、今季が3年目のシーズンだ。
倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)も、厚い期待を寄せる。「厳しいことも言えるし、愛情もある。感覚だけじゃなくて数値についても選手に伝えられるので、僕としても頼もしいですよね」。決して口数は多くないが、野球に対して誰よりも情熱を抱いていることも知っている。支配下を掴んだ7人について「自分の責任です」と語った小笠原コーチへ、信頼の言葉を口にした。
「支配下のレベルにしてもらえただけで、まずは戦力の底上げになっていますから。1軍で活躍するかしないかは、こちらの責任だと思っています。僕としては、まず(技術を)上げてもらっているというところ。これからも投手力の向上だけを目指して、頑張っていきます」
チームの勝敗を背負ってマウンドに立つ投手たち。これからも2軍から、欠かせない戦力を送り込んでいきたい。
(竹村岳 / Gaku Takemura)