4回に庄子雄大が敵失で出塁…凡打でも全力疾走
「勝利の女神は細部に宿る」。小久保裕紀監督が信条としている言葉だ。3本塁打10得点と打線の力で主導権を握った12日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。指揮官の思いを体現するように、隙のないプレーを見せたのが周東佑京外野手と庄子雄大内野手だった。圧勝の中でも、決して揺らぐことのない“美学”。静かに相手を追い詰めたのは、どんな状況でも一切手を抜かない韋駄天たちの執念だった。
2点をリードした4回、先頭の庄子が放った打球は高野脩汰投手のグラブに収まった。平凡なゴロだったが、23歳は全力疾走を怠らなかった。相手左腕の一塁送球が逸れる間にセーフとなり、チャンスメークしてみせた(記録は高野の失策)。無死一、二塁となり、周東の打球は遊撃へのゴロとなった。併殺崩れで出塁すると、今季24個目の盗塁を決めて二塁へ進塁。1死二、三塁から柳田悠岐外野手の適時打で2人が生還した。投手を強襲する当たりだったが、二走の周東もスピードを落とすことなくホームを駆け抜けた。
「佑京の盗塁で良い形を作ってくれたおかげで、気楽に打つことができました」と柳田も感謝の言葉を口にした。庄子の出塁も、アウトだと決めつけずに全力疾走したからこそ、相手のミスを誘った。絶対に隙を見せることなく、常に前の塁を狙うホークス野球。「普通じゃないですか、普通」と謙遜しつつ、周東がその真髄を語った。試合前のミーティングで首脳陣から伝えられた凡事徹底の重要性、そして若かりし頃に見た“先輩たちの背中”とは――。
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この先で分かる3つのこと
若手時代に怒られた経験も…周東佑京が受け継いだ先輩たちの教え
周東が「だから勝っている」と確信するチームの強さの理由
庄子雄大が入団時に感じたホークスの「当たり前」の凄さ
試合前に村松コーチから「全力疾走はしっかりやろう」
「普通にやっているから、特にすごいとかは思わないですね。それは、僕がホークスに入ってきた時から当たり前だったので」
この日の試合前に行われた野手ミーティング。村松有人野手チーフコーチから、改めて「全力疾走はしっかりとやろう」とナインに伝えられた。首脳陣の1人1人が選手の姿に目を凝らし、気付きがあればすぐに共有する。貯金は「30」まで積み上がり、2位の西武に8.5ゲーム差をつけている状況だが、細かなプレーまで大切にするのがホークス野球だ。
今ではチームリーダーの1人となった周東だが、若手時代は先輩の背中を追いかけてきた。「松田(宣浩)さんもそうですし、特に(川島)慶三さんですね。僕はよく怒られていたというか、いろんなことを言ってもらった。プレー外のことも、プレー中も、どういうことを考えながらやっているのか。それをいろいろと教えてもらいながらやってきましたね」。プロ9年目を迎え、背中を見せる側になった30歳。ホークスならではの伝統が、何年もかけて作り上げられたものだと誰よりも実感している。
「今は別に誰かが言う(注意し合う)とかはないですけど、若い選手も含めて個人個人がしっかりとやってくれていると思いますね。だから勝っているんじゃないですか? (4回の二盗も)走れるタイミングだったので、いっておきたいなと」
庄子雄大も淡々「普通のことかなと思います」
全力疾走を貫いた庄子も、当然といった表情で自らのプレーを振り返る。「アウトになるまでしっかりと走るのはチームとしての決定事項。それをやっただけで、普通のことかなと思います」。5回2死の第3打席では、打球が左前に弾む間に二塁を陥れた。常に先の塁を狙う姿勢がしっかりと浸透している23歳。「そこも1つの武器なので」と汗を拭った。
2年目を迎えた今シーズン。走塁面の意識について、アマチュア時代と比較すると大きな違いはないという。「『そんなところまで』というよりは、誰でもできることをしっかりとやる。ホークスはそういうチームなんだなと、最初に感じましたね」。一塁までの全力疾走はもちろん、飛球を打ち上げたなら二塁を狙って走る。点差や状況に応じてやることが変わらないから、ホークスの野球に隙は見当たらない。
1つ1つのプレーが、庄子にとっては大切なアピールだ。堅実さが売りだからこそ、「誰でもできること」だけは絶対に怠らない。開幕からここまで1軍に帯同している23歳は、チームの“空気”を代弁した。
「雰囲気はすごくいいと思います。シーズンが始まった時から何か大きく変わったかと言われれば、ベンチやロッカーの様子もそこまで変わっていないと思います。同じ雰囲気でできている結果が、今の立ち位置なのかなと。自分も、本当に目の前の1試合に全力を尽くすことだけを考えているので。その時に応じて、やるべきことをやり切れるように。毎日を過ごしていますね」
周東は6回にも中前打で出塁し、今季25個目の盗塁を決めた。夏場を迎え、タイトル争いも見え始める時期。5度目の盗塁王に向け、本人は「何よりもこのまま怪我なくいきたいです」と力強く頷いた。パ・リーグ3連覇へと突き進む2026年。チームに浸透しているのは、あまりにも高い“当たり前のレベル”だ。背番号23の「だから勝っている」という言葉が、ホークス野球を象徴していた。
(竹村岳 / Gaku Takemura)