指揮官が称えた“勝ちパターン”
中継ぎ陣の勝負所に対する感性が生み出した勝利でもあった。今季の自己最速タイの球速をマークした2人の中継ぎ右腕。そして、9回のピンチを凌ぎ切った守護神。「今年イチ、シビれましたね」。“勝ちパターン”の3投手がマジック37を点灯させた登板を振り返った。
5日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)、5-5の同点で迎えた終盤。中継ぎ投手陣が力を存分に発揮した。7回に登板したロベルト・オスナ投手は、2死から迎えた万波の2球目に今季最速タイの156キロを計測。左飛に打ち取って3人で締めた。8回に登板した松本裕樹投手も圧巻の3者連続三振。レイエスに対して、こちらも今季の自己最速タイとなる157キロの直球で見逃し三振を奪ってみせた。
小久保裕紀監督も「あの流れで、本当にオスナ以降のピッチャーが良く抑えたなと思いますね。普通にやっていれば5-2で勝っている試合なんで」と、3投手を称えた。
勝負所を瞬時に嗅ぎ分け、意図的に「ギア」を上げた。オスナと松本裕はマウンド上で、どのような心境から今季最速タイの球速を叩き出していたのか。そして、最終回に2死満塁のピンチを背負った杉山一樹投手と海野隆司捕手の間にあった、密かな“決断”とは。3投手の胸の内に迫った――。
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この先で分かる3つのこと
オスナのギアを押し上げた万波への「勝ちパターンの誇り」
松本裕樹が告白、マウンド上で密かに狙う「160キロ」
満塁のピンチで杉山一樹と捕手が腹を括った「選択」
1球で試合を変える打者への警戒
「彼はいいバッター。1球で試合を変える力がある。ツーアウトだったし、絶対に打たれちゃダメだと思って、集中して投げました。長いシーズンなので、常に100%では投げられない。いい日もあれば悪い日もあるけど、常にどんな時でも100%を出せる準備は怠らないし、それを求められてもいる」
こう語るのは、6回に同点とされた中で、7回のマウンドに上がったオスナだ。2死から迎えた万波に対する警戒心が、自然と今季最速の球速を引き出した。一発で試合の流れが変わりかねない場面で、流れを変える力を持つ相手。背番号54の胸には明確な危機感があった。オスナの言葉には、勝ちパターンを担う者としての強いプライドが宿っていた。
8回を任された松本裕もまた、レイエスに対して最速タイの157キロを叩き出した。ただ漠然と力んだわけではない。「決めに行って、振りに来られても空振りが取れるようなボールを投げようと思って腕を振りました。気持ち的には160キロぐらいの気持ちなんですけど、なかなか出ないですね」と、少し照れ笑いを浮かべた。シーズンで数回、意図的に“大台”を狙うことがあるという背番号66。その1球がこの場面だったという。
「勝ちパターンとして投げている以上は、良かったり悪かったりではダメなんで。まあそれがちゃんと結果として表れているのは、自分としてもチームとしてもすごくいいことかなと思います」。この日の登板で、連続無失点試合数を「10」に伸ばした松本裕。その熱は9回にマウンドへ上がった杉山へと引き継がれていった。
「今年イチシビれた」9回の2死満塁
9回は一筋縄ではいかなかった。2点差を守るべく登板した杉山だったが、先頭打者に四球を与えると、次打者には二塁打を浴びて無死二、三塁のピンチとなった。その後、2者連続三振と四球で2死満塁となり、迎えたのは再び万波。このタイミングでマウンドには輪ができた。杉山はそのシーンをこう振り返る。
「(海野に)『どうする?』って言われたんで『任せるよ』って言いました。『フォークを見られて、真っすぐを待たれるぐらいだったら、半々の割合で待っている時に真っすぐを突っ込んだ方がいいよね』という話を2人でしました。『じゃあ真っすぐでいく』という返答に僕も腹を括れていたので」
結果的に、万波への4球はすべてストレート。少しだけ肩で息をしながら投じたこの日の30球目はアウトローに決まり、見逃し三振に切って取った。「今年イチ、シビれました」と背番号40が語るほどの展開だった。8回に野村勇の勝ち越し2ランがあったが、勝ちパターンを担う投手の勝負所を嗅ぎ分ける感性がこの日の試合を左右した。3人の右腕に宿る覚悟こそが、秋に向けて突き進むチームの揺るぎない軸となっている。
(飯田航平 / Kohei Iida)