山下恭吾が受け入れた現実「来て良かったな」 斉藤和巳監督も称えた“MVP級”…「それだけでも十分」

  • 記者:飯田航平
    2026.07.28
  • 2軍
MVPを逃し悔しい表情を見せる山下恭吾【写真:荒川祐史】
MVPを逃し悔しい表情を見せる山下恭吾【写真:荒川祐史】

フレッシュオールスターで見せた走攻守の活躍

 様々な感情が交錯する中で、自身の存在意義をグラウンドで証明した。27日にHARD OFF ECOスタジアム新潟で開催された「ナミックス フレッシュオールスターゲーム2026」。走攻守で活躍を見せたのが、育成4年目の山下恭吾内野手だ。「インパクトを残したいです」と語っていた通りの躍動を見せた22歳だったが、胸の内にあるのは複雑な思いだった。

 5回から二塁で途中出場した山下は、8回にファウルフライをスライディングキャッチする好守備を披露。1点ビハインドの9回無死一塁の場面では、右中間を破る同点の適時三塁打を放った。さらに1死一、三塁での一塁ゴロに対し、迷うことなく本塁に突入。気迫のヘッドスライディングで、見事に勝ち越し点をもぎ取った。

「『なんか打てそうだな』みたいな感覚があったので」。試合の最終盤に逆転劇の立役者となった山下を、チームメートは総立ちで出迎えた。「僕がホームに帰ってきて、みんなが(MVPの可能性があると)言ってくれたので。『あるな』と思っていたら、一振りでやられました」。逆転後に特大の一発を放った日本ハムのエドポロに賞をさらわれるも、笑い飛ばす姿は頼もしかった。

 華やかな舞台で泥だらけになって活躍した山下。その背景には、残酷な現実と向き合う“決意”が存在していた。試合前のシートノックが行われていた頃、福岡では育成投手3人の支配下登録会見が開かれた。これで支配下枠は「69」。7月31日の登録期限が迫る中で、山下にとっては事実上、今季中の支配下昇格が見送られたことを意味する出来事でもあった。そのような状況下でもグラウンドに凛々しく立ち、ひた向きにプレーした胸中に迫った。

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この先で分かる3つのこと

・支配下見送りに対し山下が漏らした本音と「間」の真意とは
・斉藤和巳2軍監督が明かした山下の心中と“ある労い”とは
・指揮官が絶賛したホークス伝統の武器を体現したプレーとは

「そこは完全にチーム事情だと思うので。あまり気にしてないというか……しないように。もう(支配下登録の)期限が切れたんですけど、自分の成長を第一にやっていこうと、切り替えているつもりです」

 そう語る山下の言葉の「間」には、割り切ろうと努めるプロとしての意地がのぞいていた。育成4年目という決意を固めて臨んだシーズン。2軍では打率.282、1本塁打、12打点の成績をマークし、フレッシュオールスターにも抜てきされるほどに成長した。だからこそ、悔しさがにじんでいた。

ヘッドスライディングで勝ち越しのホームインとなった山下恭吾【写真:荒川祐史】
ヘッドスライディングで勝ち越しのホームインとなった山下恭吾【写真:荒川祐史】

22歳のアピール…「自分はこういう選手だぞ」

ベンチからその姿を見つめていた斉藤和巳2軍監督は、心中をこう代弁した。「そこは残念な気持ちも持って当然のこと。だけど、切り替えてやるしかないので。前を向いてやるしかない。これは山下に限らずね」。

 22歳のプレーから感じるものがあった。「MVP級の活躍だったとこちらは思っている。ホークスが大事にしていることを最後にちゃんと表現してくれた。ストレートをしっかり捉えるというのもそうだし、ホークスの大きな武器である走塁ね。あそこで同点に追いついて、逆転という流れを作ってくれたので。それだけでも十分です」。斉藤監督はチームの伝統を体現した山下を誇らしく見つめた。

 悔しさを抱く中で、山下はこの一夜限りの舞台で自らの存在意義をすべてぶつけた。精神的なたくましさが、9回の見事な一打と思い切りの良い走塁を生み出したに違いない。育成4年目。周囲の状況に心が揺さぶられる時期に、プレッシャーがかかる舞台で結果を残せたことは、かけがえのない財産となる。

「1試合しかない中で、『自分はこういう選手だぞ』というのを見せられたと思うので。すごく自分にとってプラスだと思います。『来て良かったな』って思えるフレッシュオールスターになりました」。少し照れくさそうに笑った背番号159。複雑な思いを抱く中で躍動した姿は、見る者の胸を熱くした――。

(飯田航平 / Kohei Iida)

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