4打数4安打でも晴れぬ表情
どれほど結果を残そうとも、満たされることは決してない。ファーム・リーグで10試合連続安打という数字を残しながらも、笹川吉康外野手の表情が晴れることはなかった。4打数4安打を放った20日の広島戦(タマスタ筑後)でさえも、顔は固く引き締まったまま。連続試合安打は22日の中日戦まで続き、その間は51打数16安打、打率.314をマークしていた。
現在の状態を尋ねると「良くはないですね」とこぼす。5月14日に出場選手登録を抹消され、ファームに合流してから2か月が過ぎた。「結構、自分が完璧主義じゃないですけど、自分で自分を苦しめちゃうことが多いんで」。安打を放った直後の笹川の佇まいには、どこか納得がいかないような影が付きまとっていた。
この期間、数字だけを見れば“好調”とも受け取れるだろうが、なぜ、これほどまでに表情が晴れることはないのか。2軍でもがき苦しみながらも、その頑なな姿勢の裏には、自身に課した決意があった――。そして、首脳陣が確かに感じる変化が隠されていた。
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この先で分かる3つのこと
10試合連続安打でも笹川が絶対に笑顔を見せない真の理由
斉藤2軍監督が明かした「1番起用」に至った裏側
技術不足に悩む笹川を走攻守で支える「コーチ」
「今年は、開幕(1軍から)外れたところから始まって、2軍にいるべきではないというか、色々あったんで……。自分的には2軍で打ったところで、笑ってる場合じゃないというか、2軍にいる時点で笑顔はないというか……」
絞り出すようにこう明かす。1軍の舞台で結果を残さなければ、自分の存在価値はない――。そんな責任感と、現状に対する不甲斐なさばかりが募る。だが、今の笹川はただ苦しんでいるだけではない。「調子が悪いなりに耐えてるというか、本当にずっと良くないですけど、悪いなりの対応力はついてきてはいますね」と、調子に左右されることなく、感覚だけに頼らない打撃術が身につきつつある。
指揮官が認める内面の成長と、周囲の熱いサポート
そんな背番号44の背中を、首脳陣はしっかりと見守っている。斉藤和巳2軍監督は内面的な成長をこう評価した。「本人の中で調子がそんなに良くないっていう割には、色々と考えて打席の中でもやっている。あいつが思っているよりもね。個人的には色々考えたり、感じたりして、試合の中で取り組めるようになったと思っている」。指揮官の目には、笹川の苦悩がただの不調ではなく、一段階上へ這い上がるための“思考の跡”として映る。
その変化は起用法にもはっきりと表れている。「特に今月に入ってくらいから、上手くいかないことももちろんあるけど、考えながら打席に入れるようにはなってきたかなっていう感じを受けてるんで」と指揮官は語り、打撃コーチからの「吉康を1番で行きましょう」という提案を受け入れたという。
もちろん、笹川を支えているのは斉藤監督だけではない。「1軍に呼ばれるためには、一番は技術不足だと思うので。一喜一憂しないようにっていう気持ちです」と己の足元を見つめる24歳の周囲には、熱心な指導者たちがいる。
「監督も逐一言ってくださるし、明石(健志R&Dグループスキル)コーチはバッティングで、守備走塁では城所(龍磨2軍外野守備走塁)コーチも」と、笹川は包み隠さずに感謝を口にする。走攻守すべてにおいて「1軍レベル」を求めて泥臭く汗を流す日々が続いている。
「調子も戻せればもっと打率が残ると思うので」。2軍で笑顔を見せないのは、本気で1軍に食い込む思いがあるからだ。悔しさを押し殺しながら筑後で流す汗。その思いを後半戦でぶつけ、1軍の舞台で笑顔を見せる。
(飯田航平 / Kohei Iida)