野村勇が恐れた“2軍への慣れ” 灼熱の10日間…“居心地の良さ”が「怖かったです」

  • 記者:竹村岳
    2026.07.23
  • 1軍
遊ゴロを処理する野村勇【写真:栗木一考】
遊ゴロを処理する野村勇【写真:栗木一考】

9日に登録抹消…ファームの10日間で感じたことは

 1軍の座を失い、“慣れの怖さ”を知った男は強い。26安打22得点の大勝劇で、2本塁打を含む5安打5打点と大暴れした栗原陵矢内野手らに乗り遅れることなく、今季初の猛打賞を記録したのが野村勇内野手だ。ファームで過ごした10日間。2軍の日々を「怖かった」と振り返るのは、偽りのない本音だった。

 22日にみずほPayPayドームで行われたオリックス戦。野村は4回無死一塁で右中間を破る適時二塁打を放つと、5回と8回にも左前打を放った。「1本出てからは、より集中できたかなと思いますね」。102安打を放った昨シーズンは、3安打以上を記録した試合が6度あった。今季初の猛打賞は、首脳陣に対する何よりのアピールになったはずだ。

 2025年は1軍でシーズンを完走したが、今季は打撃不振にも苦しみ7月9日に登録を抹消された。当初は“無期限”の予定だったが、最短で昇格。ファームでの10日間は、野村にどんな影響を与えたのか。久々の2軍生活で味わったのは、“居心地の良さ”への恐怖だった。

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この先で分かる3つのこと

2軍生活で野村勇が密かに感じていた「恐怖の正体」
昇格直前、斉藤和巳2軍監督が野村勇に贈った熱い一言
復調のキッカケとなった、2軍落ち直後の「ある打席」

2軍で思わず感じてしまった「居心地がいい」

「思わず慣れちゃいそうで怖かったですね。1軍が『勝たなあかん』という意味では、2軍はちょっと違うじゃないですか。プレッシャーを感じず、打席の中でやりたいことにも集中できたので。『居心地がいいと思ったらあかん』と思うようにはしていました」

 ファームリーグ西地区では6試合に出場し打率.360、2本塁打、10打点と打ちまくった。12日の広島戦(由宇)では逆転満塁弾を放ち、「あの打席は正直、確かにめっちゃ打てる気しましたね」と語るほどだった。最優先されるものも、勝利ではなく育成や調整。道筋を見失うことなく、結果を残すことに集中できる。そんな環境に対して「居心地がいい」と思わないよう、どんな時も自らに言い聞かせ続けた。

 由宇の広島戦は暑さを考慮して、午前10時30分のプレーボールだった。そして倉敷と丸亀で行われた阪神戦にも出場。久々だった2軍の遠征で、地方球場を経験することになった。ドームのような冷房が効いた環境下ではなく、送風機で暑さをしのぐしかない。「倉敷がマジでやばかったですね。もう練習できひんのちゃうか、ってくらい暑かったです。いつもこんなところでやるんやと思って周りに聞いたら、『これは今年で一番えぐい』と言っていました」。

 1年目は10本塁打&10盗塁を記録したが、2年目以降はファーム生活も長かった背番号99。太陽に照らされて、汗でTシャツがびちょびちょになるような日々は懐かしくもあった。でも、自分が勝負するのはここじゃない――。そう思えたのは、1軍で活躍する喜びを知っているから。「やっぱり打てると嬉しいじゃないですか。居心地はよかったんですけど、『そう思ったらあかん』という気持ちはずっとありました」と振り返った。

 19日のロッテ戦(ZOZOマリン)から1軍に昇格。その直前、斉藤和巳2軍監督から声をかけられた。「休み明けに練習して、移動と伝えられて。『もう落ちてくるなよ』と言われました」。そして力強く「千葉に行ってこい!」と背中を押された。1年半ぶりに味わった2軍生活。プロ野球選手にとって大切なポジションへの“飢え”を思い出し、1軍の舞台に戻ってきた。

適時二塁打を放った野村勇【写真:栗木一考】
適時二塁打を放った野村勇【写真:栗木一考】

「逆にスタメンじゃなくなったらまた2軍に落ちる」

 今季、連続でスタメン起用されたのは最長で8試合。19日の1軍昇格からは4試合連続でスタメンに名を連ねている。「ファームに落ちた1日目の広島戦。その2打席目の感じが自分の中で良かったので、今はそれが続いている感じですね」。結果を残し続け、もう絶対にポジションを譲らない。そんな気持ちは、今季の“開幕時”によく似ているという。

「ある程度、スタメンから行くと思って僕も上がってきたので。その準備はしっかりとしています。1軍に来てからは代打も出されましたし、逆にスタメンじゃなくなったら、また2軍に落ちる時だと思います。めっちゃ(試合に)出続けるというのは、今季まだできていないので。開幕の時よりも勝負なのかなと」

 日焼けした表情で語る思いは熱く、力強かった。自分の中の“慣れ”を消し去り、飢えて戻ってきた1軍の舞台。スポットライトがあたるグラウンドを、野村勇が全力で駆け回る。

(竹村岳 / Gaku Takemura)