宇野真仁朗はなぜリハビリに? 5月に実戦復帰も下した決断…押し殺した「俺、やれるのに」

リハビリ組で汗を流す宇野真仁朗【写真:栗木一考】
リハビリ組で汗を流す宇野真仁朗【写真:栗木一考】

あえて選んだ“遠回り”の価値

 初夏の強烈な日差しが降り注ぐタマスタ筑後。宇野真仁朗内野手はサブグラウンドでの打撃練習や守備練習で汗を流していた。管轄はリハビリ組。昨年の7月31日にトミー・ジョン手術を受けて、実戦復帰したはずの20歳は、なぜ“逆戻り”することになったのか――。

 5月12日、タマスタ筑後で行われた四国IL愛媛との3軍戦。およそ9か月もの過酷なリハビリを戦い抜いた宇野の姿があった。「2番・指名打者」としてスタメンに名を連ね、結果こそ2打席連続三振に倒れたものの、誰もがその一歩が確かな足がかりになることを信じていた。

 だが、復帰直後に宇野はグラウンドから姿を消してしまう。一度は実戦の舞台に立ちながら、気づけば2か月が過ぎた。なぜ宇野はリハビリ組で再調整することとなったのか。右肘の痛みがぶり返したわけではない。そこには若き才能が自らの「未来」を守るための、冷静で孤独な決断が隠されていた。

会員になると続きをご覧いただけます

この先で分かる3つのこと

宇野が実戦復帰から再びリハビリへ戻った「本当の理由」
・貪欲な宇野が「すっごいな」と衝撃を受けた先輩のフォーム
・意見を求めた宇野に、前田悠伍が放った「衝撃的な一言」

「100%」を知らない右肘との対話

「不安要素があって、再発の可能性もゼロではないので。もちろん復帰してからもゼロではないと思うんですけど、“100%を知らない状態”で復帰しようとしていたから、自分の中でも不安があったんです。今はしっかり直してからというか、不安要素を無くしてから復帰しようとしています」

 宇野が明かしたのは「自分の100%がどこにあるのかが分からない」という感覚だった。長年にわたって肘の痛みを抱えていたため、これまでの全力送球が本当の意味での100%なのかが分からない。手術を経て、これまでと同等の送球ができたとしても、それが宇野が本来持つポテンシャルの何%に当たるのかが、本人も周囲も判断できない状況にあった。

 昨年に怪我が発覚した際も「痛くないし、行けます」と口にした。だが、画像診断で完全に“壊れていた”自身の肘を見て言葉を失った苦い記憶がある。だからこそ、周囲も慎重な判断をするに至った。5月に実戦復帰した直後にも、トレーナーやコーディネーター陣からリハビリ組での追加プランが提示された。

「『俺、やれるのに』という思いも無くはなかったです。でも『まだなのか』と受け止めなきゃいけなかった。自分の中での不安はあったので。誤魔化しながらやるよりは、もう1回(怪我を)やる可能性の方が怖い。怪我をしないことの方が、試合に出るよりも大事なので。スッと受け入れられました」

 悔しい思いを押し殺し、自身の未来を慎重に見据えた上で、そのプランをしっかりと受け入れた。

 覚悟を決め、再びリハビリ組に戻ったものの、待っていたのは先の見えない日々だった。提案されたプランに期限はない。「難しかったですね。毎日同じ練習なので、バッティングして守備して……。正直つまらないですよ。つまらないし、長いなっていうイメージでした」。毎日のように室内でボールを打ち、ノックを受ける日常。しかし、「つまらない」と吐露した日々の中で、宇野の観察眼と野球への思いは、より深くなっていた。

斉藤和巳2軍監督と話す宇野真仁朗【写真:竹村岳】
斉藤和巳2軍監督と話す宇野真仁朗【写真:竹村岳】

先輩の背中と、手に入れた新たな視点

 リハビリ期間をポジティブにしたのは、先輩投手たちの存在だった。特に上沢直之投手の投球フォームを見た時の衝撃は大きかった。「股関節は前を向いているのに、まだ胸は後ろを向いていて。最後に腕がパーンって出てくるんですよ。すっごいなって思いました!」。肘の不安をなくすことに貪欲になった宇野は、投手陣に自身のスローイング映像を見てもらい、積極的に意見を求めたという。

「ご飯を食べている(前田)悠伍さんに『これどうですか?』って聞きに行きました。『お前、野球やめた方がいいぞ』って冗談で言われました(笑)。だけど、悠伍さんや(大野)稼頭央さんの感覚を聞いて、それをやってみるという日々でした」

 そうした会話の端々や笑いの中にあった“生のヒント”を、宇野は必死に吸収していった。前足が割れて胸が開き、リリースポイントが前になる悪癖を必死に修正。怖くて投げられなかった不安要素も払拭した。「今はもう全然怖さはありません。イメージ通りというか、思っているよりも強い球が投げられています」。そう語る言葉には、確かな手応えがにじんでいる。

「試合の中じゃないと、やっぱり本物の感覚は見つからないと思うので」――。一度立ち止まり、自分自身と徹底的に向き合った背番号46。「元気に毎試合出場して、常に球場に行ったらいるみたいな感じがいいですね」。遠回りしたからこそ手に入れた揺るぎない土台がある。現時点での復帰予定は27日の3軍戦。ようやく見えたリハビリのゴール。本当の意味での復帰戦は目の前だ。宇野らしいハツラツとしたプレーが見られることを楽しみにしている。

(飯田航平 / Kohei Iida)