ペナントレースは早くも折り返しが過ぎ、まもなく1年に1度の球宴を迎えます。その先に待ち受けるのは、勝負の後半戦。優勝争いは佳境に入っていきます。ここからの戦いで個人的に気になって仕方がない選手がいます。状態が気になっているファンの方も多いのではないでしょうか。7年目の29歳、柳町達選手です。
柳町選手といえば、昨季の飛躍が記憶に新しいですよね。自身初めて規定打席に到達し、出塁率.384をマーク。自身初のタイトルとなる最高出塁率に輝きました。またチームトップの129安打を放ち、打率.292をマーク。まさにレギュラーとして定着した1年でした。
今季はさらなる飛躍を期待されていましたが、開幕から打撃の状態はなかなか上がらずに打率は2割台前半と低迷。5月12日に出場選手登録を抹消されると、1か月近くもファームでの再調整を余儀なくされました。
6月10日の再昇格後は徐々に状態が上向いてきているものの、7月12日の楽天戦(みずほPayPayドーム)を終えた時点で打率.237。昨季が自己最多の6本塁打をマークしましたが、今季はいまだ0本。柳町選手の成績としては、物足りないと言わざるを得ない数字が並んでいます。
傍から見れば、明らかに苦しんでいた前半戦に何が起きていたのか――。柳町選手とは同学年で、2020年から2023年までの4年間、一緒にプレーをしていました。実際に彼が何を感じ、何と向き合っているのか。柳町選手の胸の内をそのまま聞いてみたいと思い、直撃してきました。
7月12日の楽天戦後、帰路に就く柳町選手に話を聞くと、真剣な表情でこう打ち明けてくれました。
「ちょっとずつ良くなってきているとは思うけど、絶好調というわけではないから。あともう一つ、甘い球をしっかり捉えるというところがもうちょっとできてくればいいかな、と思っているけどね」
柳町選手の中では、確かな光が差し込んでいるようでした。現に6月は月間打率.290、7月は同.292。間違いなく、打撃の感触が良くなってきているのが数字にも表れています。「もう一つ」のキッカケが掴めれば、そして甘い球を一発で仕留められるようになれば、去年通りの、いや去年以上の打撃が見られそうです。
そもそも前半戦の苦戦を“不振”と呼ぶには、ちょっと意味合いが異なります。オフから取り組んできたことがようやく少しずつ体に染み付き、そして成果として出てきているのだと明かします。
では、柳町選手が取り組んでいるのは一体どんなことなのでしょうか。
「バットのヘッドをしっかり加速させた状態で(ボールに)当てなきゃいけない。そこを加速させるためには、しっかり後ろを振らなきゃいけない。体の後ろの部分をしっかりと使って加速させる。そこの後ろを作る部分をやっている」
今春キャンプに入る前にも長打力アップをテーマに掲げていた柳町選手。トップの位置からボールを捉えるミートポイントまでに、バットを加速させていく——。彼が作ろうとしているのは、その“加速の助走路”だと明かします。これを体に覚え込ませる作業は、気の遠くなるような反復作業のはずです。
なぜ、柳町選手ほどの打者が前半戦で苦しんでいたのか。そこには明確な理由があります。
柳町選手はオフに新たな打撃に取り組み始めました。自主トレ、キャンプ、オープン戦と経て開幕を迎えるわけですが、いくらプロ野球選手といえど、新しく取り入れたものがすぐ身体に馴染み、成果として現れるわけではありません。
球団の分析担当の方にも話を聞かせてもらいましたが、取り組みの成果が出てくるまで3、4か月はかかるという見立てでした。オフから仕込んだものがようやく芽吹き始めたところで、花を咲かせるのはむしろこれからだ、と。この話を聞きながら、僕は自分の現役時代を思い出しました。
投手と野手ではもちろん違いますが、僕自身も取り組みから成果が生まれるまでの「時間差」を経験しました。1軍で45試合に投げさせてもらった2019年も、まさに同じような流れでした。
前年に久保康生投手コーチ(現巨人コーチ)が就任され、様々なことを教えていただきました。オフはその教えを生かして練習に取り組みました。それまでやってきたこと、そして教わったことがようやく形となり、成果として出始めたのは、シーズンが始まってしばらく経った初夏の頃でした。
やってきたことが身体に染み付くには、どうしても練習量がいるものです。僕の場合はちょっとずつ芽吹き始めていた5月に一度ファームへ降格となったタイミング。そこでしっかりと練習の量を積めたことでさらに良くなっていく感覚があり、それが後半戦の投球に繋がりました。プロ野球選手といえど、すぐに成果が出るわけじゃありません、継続した先に、ようやく少しずつ成果が出てくるのです。
打率.237という成績だけを見れば、まだまだ本来の柳町選手ではありません。本人も「絶好調じゃない」と言っていました。でも、僕の中に残ったのは期待感でした。ここから優勝争いは佳境に入ります。柳町選手の勝負強さに長打力が乗ってきたら――。チームにとって、これ以上なく大きな戦力となるでしょう。後半戦の柳町達はやってくれる。その瞬間をファンの皆さんも期待して、心待ちにしていてください!