佐々木麟太郎の「育成プラン」 独自分析で見せた誠意…球団が用意した“分厚い資料”の中身

  • 記者:竹村岳
    2026.07.12
  • 1軍
取材に応じる佐々木麟太郎【写真:代表撮影】
取材に応じる佐々木麟太郎【写真:代表撮影】

佐々木麟太郎も恐縮「素晴らしい技術を持っている」

 心からの「誠意」を伝えるため、ホークスの持ちうる“全て”を詰め込んだ。昨秋のドラフト会議で1位指名したスタンフォード大の佐々木麟太郎内野手が今月1日にみずほPayPayドーム、2日にはタマスタ筑後を来訪。城島健司CBOらをはじめ、球団トップとの面談も果たした。そこで手渡したのは「分厚い資料」。球団が21歳の言葉から受け取ったのは「成長しようとする意欲」だった。

 MLBドラフトの結果を踏まえて、ホークスに入団するかどうかを決断する意向を示している佐々木。昨秋以降、指名挨拶といった動向はあったものの、福岡を訪れるのは今回が初めてだった。

 ホークスの現状を説明するため、そして誠意を伝えるためのプレゼンテーション。施設の紹介だけではなく、ビデオメッセージには孫正義オーナーや王貞治球団会長も登場したという。「『福岡で待っています』という話をいただきました。自分自身も含めて誰もが憧れる選手であり、人間である王会長ですので。大変光栄です」と背筋を伸ばした佐々木。球団が用意した資料の中身には、21歳も目を丸くしていた。

「大変驚きました。自分自身のデータをご準備いただいているとは思っていなかったので。細かく原因を突き詰めるような詳細なデータをいただき、自分自身も課題と思っている部分が数値も含めて一致しているところが多かったので。本当にソフトバンクホークスさんが最先端のデータ分析に関しても素晴らしい技術を持っているんだなと、今日改めて把握させていただきました」

 一体、「分厚い資料」には何が書かれていたのか。その一部を、牧田恭平CBO補佐兼育成部ディレクターが明かした。

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この先で分かる3つのこと

「あなたの育成プラン」まで網羅した球団の資料
データチームのトップが明かす佐々木麟太郎の数値
佐々木麟太郎が惹かれたホークス独自の育成環境

スタンフォード大からデータを受け取り独自に分析

「球団のフランチャイズをアピールするパートと、歴史ですね。あとはうちの育成システムを紹介した感じです。最後には『あなたの育成プランはこうですよ』というのも入れていましたね」

 スタンフォード大では、ボールや選手の動きをミリ単位で追跡するトラッキングシステム「ホークアイ」が常備されているという。今春に佐々木が臨んだ公式戦のうち、ホームゲームで開催された試合のデータを大学側からホークスへと送ってもらった。「スイングのデータ、スピード。あとは打球速度や角度、実際の打率、出塁率、コンタクト率……。そういった部分がありましたね」と牧田ディレクターは続けて語った。

 受け取ったデータを球団は独自の分析にかけ、佐々木にわかりやすく伝えるために噛み砕いてまとめ上げた。「『こんなところに課題がありそうだね。感覚としてはどうですか』みたいな話をしました。(リアクションは)データどうこうというよりは『こんなところまでやってくれて』という驚きはあったんじゃないですか」。牧田ディレクターは面談に手応えがあったようだ。

タマスタ筑後を訪れた佐々木麟太郎【写真:栗木一考】
タマスタ筑後を訪れた佐々木麟太郎【写真:栗木一考】

“データチーム”のトップが語る佐々木麟太郎の長所

 データの分析を請け負ったのは、城所収二ベースボールサイエンスコーディネーター補佐兼R&Dグループチーフだ。早大大学院でスポーツ科学の博士号を取得し、ホークスに入団して今季が7年目。「ベースボールサイエンス」のトップは、佐々木が大学で残した数値に何を見たのか――。

「スイングスピードや打球速度、パワー系の指標は非常に素晴らしいものがあって、もう1軍でも上位と言っていいものでした。あとは選球眼に関してもいい数字が出ていて、なんでも振りにいくようなタイプではないのかなと。『フォアボールで出塁することも大事な役割』と本人も言っていたので、そういった部分でも(両者の印象と実際の数値が)一致しているところはありました」

 高校通算140本塁打を誇るスラッガーで、今春も180キロ前後の打球速度を記録した。相手バッテリーの警戒が強くなれば、自然と四球も増えていくはず。自身の役割を自覚し、出塁を「大切にしている」ところも“フォア・ザ・チーム”の精神が伺える。「一方で、コンタクト率にはまだ課題があって、そこには本人も意識を持っていました」。城所チーフがまとめたのは全体の「一部」だったというが、長所と短所を洗い出した資料は佐々木の心に届いたはずだ。

 タマスタ筑後を来訪した2日目、城所チーフも佐々木と言葉を交わしたという。ファーム設備は12球団でも屈指の環境。目を輝かせる佐々木から伝わってきたのは「成長しようとする意欲」だった。

「彼が『いいな』と思ってくれたのは、ホークスがデータの分析と練習の落とし込みがセットになっていること。試合でデータを『集める』だけじゃなく、うちにはトラジェクトアークもあるし、いろんな機械を扱えるスタッフもいる。試合で結果を出すために、練習からしっかりとアプローチができる環境であることに興味を抱いていたので、僕としては次のステージでも伸びていくような素質があるんじゃないかなと。佐々木選手自身も伸ばさないといけないところもあるし、伸ばせる余白もあると感じていたので」

 決断の時は刻々と近づいている。ホークスが持つ“全て”を訴えかけた「分厚い資料」は、佐々木麟太郎の心を掴めたか――。

(竹村岳 / Gaku Takemura)