これまでは大量援護「今日は初めての接戦だった」
投手と打者の意地がぶつかり合う。試合を左右する重要な局面。20歳の左腕は「めちゃくちゃ燃えていました」。先発として、自らの役割を果たしてみせた前田悠伍投手。その真価は「接戦」だからこそ、力強く発揮された。登板を重ねるごとに増していく背番号41の深み――。
8日に行われたオリックス戦(京セラドーム)は、今季9度目の登板。4回にソロアーチを浴びたが、6回に柳町達外野手の適時打で勝ち越して1点のリードを奪った。球数は「93」だったが、首脳陣は7回続投を決断。2死二塁のピンチで、打席に迎えたのは西川だった。7球に及ぶ勝負の末、最後は外角の変化球に手を出させて遊ゴロに。ベンチに引き上げながら、20歳らしい満面の笑みを浮かべていた。
登板前の時点で左腕の援護率は驚異の「7.85」をマーク。9イニングを投げ切れば、味方打線は8点近くも取ってくれる計算で強力な援護を受けながら、自らの投球でリードを守ってきた。前田悠自身も「今日は初めてと言っていいくらい、接戦だった」と認める。7回2死二塁、オリックスが誇るヒットマンとの勝負。左腕の闘争心は燃え上がっていた。
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この先で分かる3つのこと
前田悠伍が「めちゃくちゃ燃えた」初めての接戦
7回2死二塁…先輩の声が“届かない”ほどの集中力
プロ初登板から2年…左腕の胸に芽生え始めた意識
川瀬の声も聞こえないほど…西川との対戦を徹底分析
「1点を争う場面で投げられたので、めちゃくちゃ燃えていましたね。あそこで負けていたら話にならないので。今までなら『まだ点差はある』とも考えられましたけど、今日は打たれたら同点、逆転だった。もちろん大差でも集中しているんですけど、その“度合い”というか。一番は三振で終わりたかったんですけど、最後は川瀬(晃)さんがファインプレーしてくれたので。抑えられてよかったです」
通算1162安打の西川。前田悠も1、2打席目で安打を許し「3打席目もライトフライでしたけど、あれもほぼヒットみたいなものだったので」。巧みなバットコントロールを体感し、苦笑いするしかなかった。試合の鍵を握る重要な場面で、自然と思考も研ぎ澄まされる。「1本も打たれていなかったらまだしも、2本も打たれていたので。一番集中しましたね」と汗を拭った。
プロ入り最多の108球を投げ切った一戦。最後の力を振り絞り、1球目から7球目まで西川に投げ続けたのは変化球だった。「最後は外のスライダーでした。『絶対に抑えてやろう』と思っていたんですけど、とにかく甘くならないように。それだけは気をつけていました」。絶対にミスは許されない――。左右と高低、そして緩急と自らが持つ全てを活かしてラストボールを投げ切っていた。
西川との勝負の直前。2死二塁となったところで、遊撃を守っていた川瀬が声をかけてきた。長くはないやり取りだったが、左腕は苦笑いで振り返る。先輩の声が“届かない”ほど、目の前の一球に集中していた。
「『ツーアウトやから』みたいな感じだった気がします。めちゃくちゃ気持ちも入っていましたし、なんか返事はしたんですけど、忘れちゃいました」
2年前はKO…意気込んでいたオリックスへの「リベンジ」
ルーキーイヤーだった2024年10月1日、プロ初登板ではオリックスに3回6失点でKOされた。月日を経て迎えた再戦のチャンス。前田悠にとっても自分の現在地と、積み重ねてきた成長を実感できる大きな一戦となった。「あの試合がなかったら僕の中で『もっとやらないといけない』という気持ちも生まれなかったかもしれないので。そこから対戦していなかったですし、リベンジしたいですね」。最少失点に抑えられたのは、左腕がコツコツと継続してきた2年間の努力を証明していた。
今季9度の登板で6勝0敗、防御率1.76という成績で先発ローテーションを支えている。初登板は5月3日の楽天戦。当初は自分の立場を確立するために必死だったが、今は少しずつ、周囲にまで視野が広がるようになってきた。
「そういったところは変わってきているのかなと思いますね。冷静に入れるようにもなりましたし、楽しめています。はじめは自分のことで精一杯だったんですけど、今は『勝つ』という気持ちが芽生えてきているので。そればかりになってしまうと自分のピッチングもできないんですけど。仕事をしっかりとして、結果的にチームが勝つ。その両方ができたらいいのかなと思います」
4試合連続で7イニングを投げ切ったが「全然満足していないです」と表情を変えることなくキッパリ言い切る。接戦の中でリードを守り、リリーフ陣にバトンを託したピッチングには首脳陣の信頼もさらに増したはずだ。勝負どころで発揮される真骨頂。重圧が大きくなる後半戦の戦いでも、前田悠伍の存在は絶対に欠かせない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)