21日の日本ハム戦で7回無失点で5勝目を挙げた
1か月前にはマウンドで隠せなかった「苛立ち」があった――。“リベンジ”のチャンスで、20歳の左腕は驚くほど冷静だった。21日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で7回無失点と好投した前田悠伍投手。「打たれる」という悔しい経験から、背番号41は“あること”を学び、それを生かしていた。
2回には無死二塁とされたが、後続を打ち取り無失点。上々の立ち上がりを見せると、どんどん波に乗っていった。7回2死二塁で田宮と相対した時には、マウンドで笑みを浮かべていた。「点差もありましたし、勝負を楽しめたかなと思います」。左飛に斬り、2試合連続で7イニングを投げきった。これで6月は3戦3勝。5勝目は大津亮介投手に次ぐチーム2位という堂々たる成績だ。
日本ハムと前回対戦したのは、5月24日(みずほPayPayドーム)。初回から野村に満塁弾を浴びるなど、3回0/3を投げて4失点でKOされた。今季7試合登板のうち、唯一、5回持たずに降板したこの一戦。マウンド上で、左腕が小さく声を上げた瞬間があった――。
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この先で分かる3つのこと
満弾を浴びて崩した表情…口にしていた「苛立ち」
“5.24”からわずか1か月で見せる成長の裏側
7試合に登板…1軍のマウンドで得る心の余裕
先発ローテを守る過酷さ「気絶するように寝ていた」
「“ナニクソ”というか『絶対に打たれへんぞ』という気持ちは一番持っていたシーンでした」
振り返ったのは3回1死。この日2度目の対戦となった野村を、高めの直球で空振り三振に斬った時だ。前の打席で満塁弾を許した背番号5を打ち取って雪辱を果たして、思わず声が漏れた。「めちゃくちゃイラついていましたし、叫んだことはこれまでもありましたけど、今までとはなんか違いましたね」。結果的にチームは逆転勝利を飾ったものの、試合後は「中継ぎの人、野手の人に感謝です」と口数は少なかった。自らに対する不甲斐なさは、表情にも滲み出ていた。
5月は4週連続の「中6日」でローテーションを守り、日本ハム戦の翌25日に登録を抹消された。「フォームで修正したいところがあったら練習するしかない。でも、練習したら疲れも抜けないし、そのバランスが難しかったです。寝る時も気絶しているような感じでした」。自らの立ち位置を確立するためにも、生活の全てを野球に捧げて結果を求めていた。1球1球に必死なのは今も同じだが、常に緊張感を張り巡らせていた。
成長の要因は“余裕”「この球を投げたらダメ」
交流戦では2試合に登板して2勝。KOされた“5.24”から、たった1か月で左腕は急激な成長を遂げている。最大の要因は、少しずつ生まれてきた心の“余裕”だ。
「1軍で投げて、経験も積めてきたので。特に感じるのは『ここでこの球を投げたらダメ』ということ。2軍だと、そこに投げてしまっても空振りやファウルになることもあったんですけど、1軍ではピンチの場面が何回も来るので。そういう意味でも、違う点は多いのかなと思います」
7つのゼロを並べた敵地での21日の日本ハム戦、光ったのはアウトコースへの制球力だった。事前に何度も相手の映像に目を凝らし「高めが長打になりやすい」ということは理解していた。「低めなら打球も上がらないと思っていました。どの球も全力なんですけど、質の良い球を投げていけば『ある程度はいけるのかな』という感じはしましたね」。6回2死一、二塁のピンチで再び野村と対戦。膝下のボールゾーンに落ちるフォークで、三ゴロに仕留めてピンチを切り抜けた。
1軍の舞台で「打たれる」という経験。その失敗から学びを得て、しっかりと結果につなげる。最後まで貫いた冷静な表情が、左腕の成長を物語っていた。
「野手の皆さんが毎試合打ってくれるので。すごく気楽にというか、絶対に勝つ、点を取られないという意識でずっと投げていました。長いイニングは投げられた方がいいと思いますし、最低でも7回は投げられるように、これからも頑張っていきたいと思います」
ヒーローインタビューでは、野手への感謝の言葉を口にした。もうマウンド上で表情は崩さない。勝って笑うために、前田悠伍は進み続ける。
(竹村岳 / Gaku Takemura)