交流戦ではMVP級の活躍
満身創痍の先発陣を引っ張る男の背中には、“兄貴分”への思いと自覚があった。交流戦で3勝を挙げ、防御率1.23という“MVP級”の活躍を見せたのが、大津亮介投手だ。チームは14勝4敗で、惜しくも交流戦優勝は逃したが、「今はもう、しっかりと責任を感じながらやりたいです」と語る右腕の奮闘が大きな原動力となった。
「大津が1人、軸で回っている。自分で掴み取って今の位置がある」。小久保裕紀監督が口にしたこの言葉は、今の大津に対する最大級の信頼の証だ。それほどまでに背番号19の存在は大きくなっている。
「(先発ローテーションの)6番目に入って、僕は確実に1つずつ序列を上げていこうと思っていました。結果で示すしかないと思ってやっていたので」
大津はこう語り、静かに闘志を燃やしていた胸の内を明かす。先発ローテーションを守るという強い自覚。そして“特別な先輩”でもある上沢直之投手への想いを胸に秘め、マウンドに立ち続けていた。2人が交わしたハグ。伝えた思いは「早く帰ってきてください」――。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
快進撃を続ける大津へ、上沢が口にした信頼の言葉とは
離脱後の再会で、上沢が大津に放った意外な呼び名とは
大津がマウンドを死守する理由、先輩が持つ影響力の正体
「やっぱりみんなが競争して、6人の枠の勝負を勝ち取るわけなので。(ローテに)入れて満足していたら、1年間のシーズンはやっていけないなというのが僕の中であって。今となっては、個人的にも良い位置にはいますけど、上沢さんや(リバン・)モイネロが帰ってくるまで、今は僕が耐えないといけない。全体的に(先発陣は)若いですし、そういう気持ちは強いです」
開幕ローテーションは“6番手”からのスタートだったが、ここまで10試合に登板して7勝1敗、防御率1.43。チームの躍進を結果で支えている。前田悠伍投手ら若手投手を引っ張る意識も、大津をこれまで以上に大きく成長させている。
そんな大津の獅子奮迅の姿を、“兄貴分”の上沢は頼もしそうに見つめていた。「もともと一緒にやっていたので、能力があるのは分かっていた。あの成績を残しても驚きはないです」と、揺るがぬ信頼を口にする。上沢は大津の“必然の躍進”を誰よりも優しく、温かい眼差しで見つめていた。
離れて感じる存在の大きさ…「上沢さんがいることで」
2人が直接会話を交わす機会は、上沢が離脱して以降、決して多くはなかった。
「上沢さんが抜けてから、2回しか会えていないんですけど、両方とも抱き合っています(笑)。上沢さんからは『大津さん!』って。本当に兄貴なんで。僕からは『早く帰ってきてください、早く治してください』って伝えました」。大津は嬉しそうにはにかむ。その瞬間だけは、ピリつく戦いの日々の中でも温かい空気が流れていた。
「上沢さんがいることで、すごくピッチャー陣の気持ちというか、士気というか、マインドが上がるので。本当に少しでも早く、完璧に完治してから帰ってきてほしいです」
先輩がチームにもたらす影響力の大きさを改めて噛み締めている。だからこそ、背番号10が完璧な状態で戻ってくる日まで、自分がこのマウンドを守り抜かないといけない――。その決意が大津を突き動かし、さらなる高みへと押し上げる。背番号19が見せる気迫の投球と凛とした佇まいには、すでにエースの自覚が宿っている。
(飯田航平 / Kohei Iida)