5日の広島戦で14失点…指揮官が求めた“大切なこと”
投手交代のために、指揮官が腰を上げたのは1度だけ。チャンスを与えられた2人の育成右腕に、最後まで投げ切ってほしかった。結果的に残ったのは、14安打14失点という屈辱的な数字。この結果を受け止め、斉藤和巳2軍監督が語ったことは――。
5日に行われたファーム・リーグの広島戦(タマスタ筑後)。先発したのは4年目の飛田悠成投手だった。立ち上がりから制球が乱れ、2回を終えて5失点。4回に満塁弾を浴びたところで、指揮官は投手交代を告げた。先発の飛田は3回1/3を投げ10失点、2番手の内野海斗投手も5回2/3で4失点。試合前時点で、広島打線の総得点「155」は西地区最小という数字だったが、まさにメッタ打ちだった。
1軍では上沢直之投手やリバン・モイネロ投手が離脱中。先発陣の層が薄くなったことで、育成選手にも多くのチャンスが訪れている。飛田&内野によるリレーは「元々その予定だった」というが、「今日は育成の2人だったからね、期待もして見ていたんだけど……」。斉藤監督が大敗を喫した投手陣に求めたこと。そして、全体練習前に行われた異例の“訓示”の裏側に迫った。
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この先で分かる3つのこと
練習前に訓示…斉藤監督が投手陣に伝えたこと
結果を責めることなく…斉藤監督の口調に感じた思い
山川穂高が飛田悠成に授けた「別の引き出し」の助言
全体練習前に斉藤和巳監督が投手陣に訓示
「一生懸命に勝負してくれている部分は、確かにあったと思う。あとは本人たちやね。ああいう展開になった中で何を考えて投げていたのか。最後の1球まで勝負をした上でああいう結果になっているのであれば、力がないだけ。もしそうじゃないところで多少の“甘え”があったのなら、技術以前に気持ちの問題よね。ある程度、勝敗は決していたかもしれないけど、どんな状況でも自分の力を出して結果に結びつけられるか。そこかなとは思う」
点差が開いていくことで、集中力を維持するのも難しくなっていく。マウンド上で、自らに対する不甲斐なさも感じていただろう。その上で、最後の1球まで自分の役割を全うできていたか――。問いかけたいのは、そこだ。
「野球はピッチャーが投げないと始まらない。ピッチャーである以上、最低限持ち合わせていないといけないことが絶対にあるので。それがないのであれば、考え方の部分がまだ(2軍で投げるに)達していないということ」
厳しくも聞こえる指摘だが、14失点という結果を責めるつもりは全くない。2人の投手に振り返ってもらいたいのは、自分にできる最高の準備は済ませていたか。そして何よりも大切な「バッターに向かっていく」という闘争心を、最後まで抱けていたかどうかだ。
実はこの日の全体練習前、斉藤監督は投手陣に訓示をしていた。前日4日の阪神戦(日鉄鋼板SGLスタジアム)で、6人のピッチャーが与えた四死球は「13」。大切なことを思い出してもらうために、自ら行動に出た。「この表現がいいのかはわからへんけど、みんなのためを思って、ね」。どんな相手に対しても、飾ることはない。指揮官らしい言葉で、訓示の真意を口にした。
「そのさらに前にもミーティングをして、コーチと話をする中で挙がったのが『フォアボール』だったので。それも踏まえてフォアボールについて『お前らは出す、だからここにおるんや』と。だけど『出しても抑えなさい。出しても勝負しにいきなさい』という話をした。3人連続で走者を出しても、0点で帰る可能性はあるんやから。そういうマインドが必要とは伝えたけどね」
四球を与えて、一喜一憂する必要はない。大切なのは頭を切り替えて、チームのためにゼロで切り抜けることだ。「あとは守備のこと。『誰かが捕るだろう』『ベースカバー、バックアップはこれくらいでいい』とか決めつけないことね。どんな状況に対してもしっかりと準備をする。それはやっていこうと」。訓示も踏まえて見つめた14失点。試合後、指揮官の口調に怒気は感じられなかった。
先発した飛田悠成が山川穂高からもらったアドバイス
先発した飛田にとって2軍戦の登板は通算2度目で、先発は初めてだった。「試合が始まる前の雰囲気も3軍とは全然違って、緊張もあっていつも通りのスタートができませんでした」。指揮官が求める“闘争心”という面において、最後の1球まで貫くことはできたのか。右腕は悔しさを真っすぐに受け止めた。
「序盤から5点も取られて、大きなリードを許してしまったんですけど。2回に野手の方々が3点を取ってくれた。『まだ勝てるチャンスはある』と、3イニング目からもう1度気持ちを入れて投げました。何があろうと投げ切る、最低でも5回までは投げてみせると自分の中では思っていたので。気持ちは切らさずにいけたと思うんですけど、ランナーをためてイニング途中で降板となったのはすごく悔しかったです」
マウンドから降板した時も、右腕は駆け足だった。ゲームセットが見えてきた9回の攻撃中、ベンチで「飛田」と呼びかけられた。声の主は、山川穂高内野手だった。「日本代表でも、山本由伸さんらとプレーされていた方なので。『いい投手はたくさんの抑え方を持っている』と。上手くいくパターンはもちろん、それがハマらなかった時の別の引き出しがあるといいよと言われました」。直球が走らないなら、変化球で組み立てる。それでもダメなら、リズムを変えてみる。数々の一流投手を打ち砕き、通算284発を誇るスラッガーの言葉には説得力があった。
試合が終わったのは、午後9時7分。その後、飛田は若鷹寮でウエートトレーニングに励んだ。「それは次の登板に向けて、ずっとやっていることです。映像も見て、ノートにも書き出して反省はしました」。次戦のための準備と、振り返りはきっちりとした。そして右腕は、決意を新たにした表情でこう口にした。「やっぱり悔しさはあって、なかなか寝付けなかったです」。その気持ちを忘れなければ、必ずもっと強くなれる。
(竹村岳 / Gaku Takemura)