嶺井博希の会話を“盗み聞き”してみた 5選手の証言…「最近どう?」で始まる練習前のルーティン

  • 記者:竹村岳
    2026.06.08
  • 2軍
練習前に大山凌と言葉を交わす嶺井博希【写真:竹村岳】
練習前に大山凌と言葉を交わす嶺井博希【写真:竹村岳】

5日から広島3連戦…“片っ端”から声を掛ける嶺井博希の姿

 投手と捕手、「バッテリー」と呼ばれる関係性において、濃密なコミュニケーションは必要不可欠だ。しかし、シーズンが始まれば選手たちはそれぞれの調整に集中する。グラウンド上でゆっくりと話せるような時間は、思っている以上に多くはない。そんな中、ひたすら若手たちに声をかけていたのは嶺井博希捕手だ。

 練習から試合開始まで、1軍では基本的に「集合」はない。投手と野手でスケジュールは全く異なるが、2軍の練習はまず全体集合からスタートする。確認事項を擦り合わせた後、各自が体を動かし始めるのが通例だ。5日から7日まで行われたファーム・リーグの広島3連戦(タマスタ筑後)。ウオーミングアップが始まるまで、背番号12は“片っ端”から投手陣に声をかけていた。一体、どんなコミュニケーションを取っているのか?

「最近どう?」。そう嶺井に問いかけられたのは、大卒2年目の育成右腕・相原雄太投手だ。プロ13年目のベテランとの接点は多くないように思えるが、2人の間には意外な共通点が存在するという。嶺井博希捕手が日々繰り返している投手との“会話”を、5人の選手の視点から徹底的に深掘りした。

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この先で分かる3つのこと

支配下から育成まで網羅する嶺井のコミュ力
藤田&大友ら捕手陣も驚く会話の質
「盗み聞き」した試合前の濃密なミーティング

常に想定する若手とのバッテリー「今組んだら…」

「2月の春季キャンプで1回組ませてもらったことがあったんですけど、その時はまだ話をしたことがなくて。会話もできないまま試合に入ってしまって、結果を残せなかったんです。今は同じ2軍にいるので『最近どう?』と声をかけてくれました。『今一緒に組んだら、何を投げたい?』という感じで、僕が使いたい球だったり、取り組んでいるテーマについて話をしました。こちらからはそういった話はしづらいのかなと思っていたんですけど、すごくありがたいです」

 にこやかに嶺井とのやり取りを明かした相原。感謝を明かしたのは、大江竜聖投手も同様だった。7歳年上の嶺井と距離感は近いという左腕は「集合で会ったら挨拶するじゃないですか。その流れで試合のことだとか、若い選手に配球の話をしているところも聞いたことがありますよ。しゃべるのがすごく上手で、優しいですよね」と厚い信頼を寄せる。「博希さん」と呼ぶ大山凌投手も「仲良いですね。本当に関係ない話をする時もあれば、がっつり野球のことを聞くこともあります。そういう意味では“全部”ですね」。

“同業”の捕手目線ではどうだろうか。

 5日、同リーグの広島戦で先発したのは4年目の飛田悠成投手だった。結果的には満塁弾を浴びるなど、4回途中で10失点。悔しい内容となってしまったが、その試合前に嶺井と飛田はどんな組み立てをするのか、しっかりと意見を交換していた。バッテリーの会話を「盗み聞きしていました」と明かしたのが、大友宗捕手だ。

「僕だったら目先のアウトを取ることに重点を置いてしまいますけど、嶺井さんは飛田の年齢(21歳)も踏まえて『この先こうなりたいから、こういう組み立てをしたい』という会話をしていました。その日の試合なら『今日はストレートを頑張ってみようか』と。年齢的にもまだ若いんだし、真っすぐでどこまで勝負できるのか。それはすごく、ピッチャーのためにキャッチャーができることだなと勉強になりました」

 この日、飛田にとっては通算2度目の2軍戦登板だった。150キロ超の直球が最大の武器だからこそ、3軍よりもレベルの高い2軍の舞台でどこまで通用するのかを確かめたかった。ファウルや空振りを取れるのか、それとも痛打されるのか――。身をもって感じた打者のレベルは、右腕にとってもかけがえのない財産になったはずだ。“盗み聞き”していた大友も「嶺井さんの立場だからこそ言えることですよね。ミーティングの中でも、1つ1つの言葉から知識の多さを感じます」と驚きを隠さない。

嶺井博希なりに考える投手の課題と“将来像”

 嶺井と同じく、藤田悠太郎捕手も集合から積極的に声をかけている。背番号12の存在に「野球も生活も、とにかく波がない。打たれて『ダメだ』じゃなくて、プラスにすることしか考えていないと思うので。自分ならどうするか……というのはいつも考えています」。投手陣とのコミュニケーションにおいても、適切な距離感を心がける20歳の若鷹。試合の緊張感あふれる場面で、いつか“些細なやり取り”がヒントになるように、日々を大切に過ごしているところだ。

「僕は“そういうタイプ”(積極的に話しかける)じゃないと自分では思っているんですけど、そうしていかないとピッチャーとの信頼は築けない。1点でも少なく抑えられるように。試合になってから焦るんじゃなくて、悩まなくても済むように声をかけるようにはしています。意見を言うのに、年齢を気にしていてはいけないと思うので。バッテリーで一緒にいいものを作れるように、話すのは大事だと思います」

 選手それぞれが結果を出すために、自分の意見をぶつけ、最高のパフォーマンスを出せるように工夫を凝らしている。大江が「『博希、めっちゃいいやつ』と書いておいてください」と言えば、大山も「しょうもない話しかしていないですよ」と笑い飛ばした。嶺井本人は「全然関係ない話しかしていないです。マジで何もないです」と煙に巻いたが、さまざまな証言は投手陣から信頼されている証だ。チャンスを待つ日々の中で、ベテランの姿は何よりも“お手本”になっている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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