栗原陵矢、開幕から続く絶好調の理由 “上昇カーブ”を描くための「たった1つの意識」

  • 記者:福谷佑介
    2026.06.03
  • 1軍
適時三塁打を放った栗原陵矢【写真:栗木一考】
適時三塁打を放った栗原陵矢【写真:栗木一考】

中日戦で2安打3打点…チームの全打点を叩き出す

 全得点を1人で叩き出した。2日にバンテリンドームで行われた中日との交流戦。3-0で勝利したこの一戦で、2安打3打点と“打の主役”となったのが、「4番・三塁」で出場した栗原陵矢内野手だった。

 両チーム無得点で迎えた3回2死一、三塁で先制の適時二塁打を放つと、圧巻だったのは5回の第3打席だ。1死二、三塁のチャンスで打席に入った近藤健介外野手は見逃し三振。2死となって立った打席で中日先発マラーの初球のカーブを見事に捉えた。打球は左中間フェンスを直撃する三塁打。2人の走者を招き入れて、追加点を奪った。

 この一打に驚いたのは、他でもない小久保裕紀監督だ。試合後、指揮官は「三塁打が大きかったですね。まともに勝負してくれないかな、というところでの初球だったんでね」と目を細めた。一塁は空いていた。次打者が柳田悠岐外野手とはいえ、ここまでパ・リーグで打撃2冠との勝負を中日バッテリーが避けてくる可能性もあった。

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この先で分かる3つのこと

・リーグトップの打撃を支える、栗原のシンプルな意識
・栗原が開幕直前の試行錯誤から掴んだ好感触の正体
・大津の完全投球が続く中、三塁で抱いていた本音

 打者としても相手の出方を探りながらになりかねない場面だったが、栗原は違った。「状況というか、近藤さんがどうだったかというのは、あまり頭には入れてなかったです。シンプルに自分の打席に集中していた感じです」。狙っていたわけではないカーブに体は反応した。タイミングを外されながらも、打球はフェンスまで届いた。

「あのカーブを、あの方向に長打にできたっていうのは自分の中では成長なのかなと思います」。引っ掛けがちなボールを、しっかりと下半身で溜めて、内側からボールを捉えた。その打撃内容にも、大きな価値があった。

「ずっと開幕からそれだけをやっているっていうところがある」

 開幕から2か月が経っても、好調は続いている。ここまで16本塁打、44打点はともに両リーグトップ。打率.282はパ・リーグで9位だが、長打率.594、OPS.935はリーグ1位を走っており、今年のホークス打線の牽引役になっている。

 開幕前は危機的状況にあった。キャンプからオープン戦にかけて打撃の状態は上向かず、打率は1割台に低迷。開幕スタメン落ちの危機に晒され、首脳陣の間でも議論になったほど。ところが、どうだ。3月27日の日本ハムとの開幕戦。いきなり今季初打席で2ランを放つなど2安打を放つと、開幕6試合で打率.429と暴れまくった。

 3・4月を打率.277、5本塁打15打点でスタートすると、5月は月間11本塁打。6月もいきなり2安打3打点の活躍だった。一体、栗原の身になにが起こったのか。栗原はその要因について、こう口にする。

「今年意識しているのは、もう1つだけです。ずっと開幕からそれだけをやっているっていうところがあるので。そこはどんなピッチャーが来てもぶらさずに、と思っています」

 意識する“1つだけ”のこととは――。明かされたのは、シンプルであり、奥深い言葉だった。

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この先で分かる3つのこと

・リーグトップの打撃を支える、栗原のシンプルな意識
・栗原が開幕直前の試行錯誤から掴んだ好感触の正体
・大津の完全投球が続く中、三塁で抱いていた本音

「右足をしっかり踏みに行くこと。本当にそれだけなんです」

 タイミングを取るときに右足を上げ、打ちにいくときにそれを下ろす。このときにしっかりと地面を踏み込むようにしたことが上昇カーブを描く理由になったという。

「試合後に大津に『ありがとう』って言いました」

 実は、開幕直前、栗原はこんなことを口にしていた。

「やっていることがハマってきているなっていうのはあります。WBCも見ましたし、いい選手のバッティングを見たり、自分の状態も見ながら、こうかな、ああかなっていうのをやっていて、1個ハマった感じです」

 このときに掴みかけていた好感触。もちろん日々、試行錯誤を重ね、トレーニングも積み重ねている。その努力の上に、この右足の意識を貫き続けていることが、現在のバッティングに繋がっているのだ。

 この日は先発の大津亮介投手が7回途中まで完全投球を続けていた。守る側にも徐々に意識が芽生えてくる頃で「こっちが緊張しますし、6回くらいがら意識していました。(相手にヒットが)1本出たとき、なんかホッとしました」と本音も……。プレッシャーがかかるだけに、野手は打球が飛んできてほしくないようで「全力で(飛んできてほしくない)! 今日サードゴロがゼロだったんで、試合後に大津に『ありがとう』って言いました」と笑わせた。

 プロ初完封の大津を盛り立てる3打点に「なんとか援護できて良かったです」と胸を張った栗原。チームはここ10戦で9勝1敗と上昇カーブを描く。その中核を担う主砲の打撃は“右足”が支えている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)