山本恵大が見せた執念の“続行アピール” 死球直後に見せた首振り…「明日の試合に出られないのは嫌」

  • 記者:飯田航平
    2026.05.28
  • 1軍
第4打席で死球を受けた山本恵大【写真:加治屋友輝】
第4打席で死球を受けた山本恵大【写真:加治屋友輝】

象徴的だった4打席目の死球

 むき出しの“生存本能”を見せつけた。27日の巨人戦(東京ドーム)、「5番・右翼」で先発起用された山本恵大外野手は、第4打席で死球を左膝の上に受け、その場に座り込んだ。痛くないはずがない。それでも26歳は、駆け寄ったトレーナーの心配をよそに、必死の形相で首を横に振る仕草を見せた。

 3回に迎えた第2打席には、この日唯一の得点となる適時打を放った山本恵。「打たせてもらってる以上、そういうところ(好機)で回ってくるというのは去年から経験してるんで」。一方で1打席目と3打席目はいずれも得点圏で三振を喫した。「僕が打っていたら、こういう試合じゃなかったと思うので」。試合に敗れた責任を背負いこむように、悔しさをにじませた。

 死球を受けたのは、4点ビハインドの8回無死二塁で迎えた打席だった。プレーを続行したとしても、次の打席が回ってくるかは微妙な状況。チームとしては1点でも返すために代走を起用してもいい場面だった。しかし、山本恵は交代を頑なに拒むようなジェスチャーを見せた。駆け寄ったトレーナーと交わした会話に隠されていたのは、悲壮ともいえる決意だった。首を振った本音と思いを、試合後に明かした。

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この先で分かる3つのこと

トレーナーの提案を拒否した山本恵選手が漏らした本音
元々の古傷を心配した大西コーチが称えた山本恵の強い姿勢
死球直後の執念の走塁に小久保監督が浮かべた「表情」

「『1回ベンチ戻ろう。見せて』って言われたので、『大丈夫です』と」

「痛いとか言ってられない」

 トレーナーからの提案に対し、山本は「いやいやいや」とでも言うように強く首を振り、グラウンドから退こうとしなかった。「痛いとか言ってられないです。もうここしか(チャンスが)ないくらいの思いなので、今年は。それくらいの強い気持ちでいるので」。ベンチに戻れば交代になるかもしれない。そんな危機感が背番号77を一塁へと向かわせた。

 山本恵に駆け寄った大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチは、26歳の覚悟を感じ取っていた。「『交代はしませんよ、大丈夫ですよ』という気持ちだよね。よっぽどの時はあれ(交代)やったけど。膝は元々痛めたことがあるから、余計に心配だった。本人はいけるって言うから、頑張ってもらったよ」。大事に至らずに安堵した一方で、山本恵のファイティングスピリットを称えた。

 試合後、山本恵にあの場面の真意を問うと、少しだけ表情を緩めながらも毅然とした言葉が返ってきた。「『明日の試合に出られないのは嫌なので。今日フルで試合に出て、大丈夫だというとこを見せたかったです」。

 ベンチに戻ることすら「嫌だった」と明かすその口調からは、自身の居場所を失うことへの強烈な危機感が伝わってくる。周囲に痛みを感じさせることなく、しっかりとした足取りで一塁へ走る姿は、首脳陣への何よりのアピールだった。

 5年目の今季は、ここまで9試合に出場して打率.321をマーク。26日の同戦では1号ソロも放っており、状態の良さは周囲も認めるほどだ。だからこそ、簡単に交代するわけにはいかなかった。痛みを強引にねじ伏せ、一塁へと駆け抜けた姿には、レギュラーを掴み取ろうとする執念がにじんでいた。その時に見せた小久保裕紀監督の表情は、どこか頼もしさを感じているようだった。

(飯田航平 / Kohei Iida)