首脳陣に聞く最短昇格の可能性
実力を信じているからこそ、大きな決断を下した。12日、柳町達外野手が今季初めて出場選手登録を抹消された。昨季、最高出塁率のタイトルを獲得した背番号32に待ち受けていた、まさかの展開。主力の1人として大きな期待を寄せていた首脳陣の“判断”に迫った。
チームが導き出した答えは「再調整」だった。小久保裕紀監督は「山本(恵大)も来て、どれくらいできるのかを見る中で、達の出番がほぼない」と抹消理由を説明したうえで、「間違いなく最後に勝ち切る、優勝するために必要な戦力」と変わらない信頼を口にした。1軍のベンチで迷いを抱えたまま過ごすよりも、ファームで本来の姿を取り戻してほしい――。それが決断に至った経緯だった。
タイトルホルダーとして今季さらなる飛躍を誓った柳町にとっても、打率.208、出塁率.299という現在の数字は決して納得のいくものではないだろう。首脳陣が明かしたのは、1軍に復帰するための“条件”、そして再び1軍の舞台に戻ってくる時期についての見立てだった。
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この先で分かる3つのこと
村松コーチが明かす、安打量産を阻んでいる「打球の異変」
打率だけでは戻れない?首脳陣が求める「昇格の絶対条件」
狙うはあの栄光の舞台…指揮官が思い描く「柳町復活」の全貌
見失いかけた「自分の形」を取り戻すために
「去年はずっと打てていた真っすぐ系への対応だったり、ヒットの打球方向だったりが、今年はまだ去年のようにできていない。変わりつつはあるんですけど、そこは本人も手探り状態という感じですね」
抹消理由について、村松有人野手チーフコーチはこう語った。本来であれば広角に鋭い打球を打ち分けられるのが柳町の持ち味だが、今季はセンターからレフト方向にフライを打ち上げる場面が目立つ。「去年タイトルも獲った選手なので、こちらもしっかり見たいという思いもありました。『順調にいってくれたら』という思いは強かったんですけど、こういう状況なので」。ファームで体の使い方やバット軌道を再構築し、「これでいける」という確固たる感覚を取り戻すことが最優先事項となった。
データで見ても、これまでとの“違い”は明らかだ。セイバーメトリクスで用いられる数字の1つに、本塁打を除いて、インプレーとなった打球が安打となった割合を示す指標「BABIP」がある。柳町は通算で「.360」と歴代の球史で見ても屈指の高水準をマーク。昨季は.373を記録したが、今季は.259と1割ほど低い。さらにアウトの内訳を見ると、昨季はシーズンを通してフライアウトが80だったのに対し、今季は35試合消化時点で「36」に達している。アウトの43.9%がフライアウトという数字からも、本来の低く鋭い打球を弾き返す打撃が影を潜めていることがわかる。
求められるのは「数字」を出した上での「内容」
では、どのような基準を満たせば柳町は1軍へ復帰できるのか。最短10日での昇格の可能性について聞くと、首脳陣が求めるハードルは決して低いものではなかった。「2軍レベルだと(打率)3割5分から4割近く打ってくると思うんですけど、あとはその内容。150キロ近い速球に対しての反応や対応だったり、ボールの見極めだったりを見ていくことにはなると思います」と村松コーチは語る。
圧倒的な成績を残すのは“大前提”。その上で、強い直球に対してどのように対応し、高い質の打球を飛ばすのか。それが昇格への条件となる。
「2軍で頑張っていた山本も1軍に来ていますけど、そういった選手にもチャンスをあげたいという思いも当然あります。今後は笹川(吉康)だったり、他のメンバーの状態もある。チームの勝敗もあるので、そこはしっかり結果を出して上がった方を今は使おうと。正木(智也)とかも上がってくることになると思うので、そことの比較には当然なってくると思う。そこは(1軍復帰まで)何日という話はしていません」
今の柳町に求められるのは、結果に焦って自分のスイングを見失うことではない。一度立ち止まり、自らの体と技術に深く向き合う時間が必要だ。「去年、交流戦で最優秀選手賞を獲ったっていうところもあるので、そこに合わせて(1軍に)上がってきてくれたらという思いも当然あります」。昨年の初夏、誰よりも眩しく輝いたあの姿を、誰もが待っている。背番号32が輝きを取り戻すために――。小久保監督が語ったように、秋の歓喜の瞬間、柳町は必ず不可欠なピースとしてそこにいるはずだ。
(飯田航平 / Kohei Iida)