周東佑京が己に課した“テーマ” チームの苦境に本音…捨てると決めた「引いている気持ち」

  • 記者:福谷佑介
    2026.05.06
  • 1軍
同点適時打を放った周東佑京【写真:加治屋友輝】
同点適時打を放った周東佑京【写真:加治屋友輝】

「バント(のサイン)が出なかった時点で、もう絶対的に返そうと思った」

 左中間に飛んだ打球が、重苦しい空気を振り払っていった。

 5日にベルーナドームで行われた西武戦。2-3と1点ビハインドで迎えた5回無死二塁。試合を振り出しに戻す、そして、その後の逆転に繋がる一打を放ったのが周東佑京外野手だった。

「もう『つなぐ』とかじゃなくて『返そう』と思ったんで。繋ぐのであれば、多分監督もバント(のサインを)出していると思いますし。バント(のサイン)が出なかった時点で、もう絶対的に返そうと思ったんで」

 無死二塁の場面でベンチのサインは「打て」だった。打席に入った周東に迷いはなかった。1ボール2ストライクからの4球目。真ん中付近に甘く入った真っすぐを振り抜くと、打球は左中間で弾んだ。二塁走者の庄子が生還し、同点に追いついた。

 さらにチャンスは1死満塁へと拡大。柳町達外野手の適時二塁打で周東は勝ち越し点のホームを踏んだ。逆転劇の一端を、チームリーダーが確かに担っていた。

 チームを引っ張る存在として、そしてリードオフマンとして、責任を感じていた。チームはこの試合前までで16勝14敗。2個の貯金があるとはいえ、チーム状況は良いとは言えなかった。4月中旬から4カード連続で負け越しを喫するなど、なかなか波に乗れず、前日19被安打10失点で大敗。重苦しい空気が漂っていた。

 周東自身もその停滞感を痛感している。だからこそ、自らにある“テーマ”を課してこの一戦に臨んでいた。苦境を打破するため、胸の内に密かに秘めていた「特別な決意」とは、果たして何だったのか。

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この先で分かる3つのこと

周東が試合に臨む上で、自らに課していたテーマ
イニング間に…初スタメンの庄子に伝えていたこと
打率上昇も晴れない表情。チーム状況に抱く葛藤

「今日のテーマは『アグレッシブ』っていう風に行っていたんで、それがいい形に出たのかな、と思います。ちょっと負けが込んでいて、自分もあんまり打てなくてっていうところで、やっぱり(気持ちが)引いている部分もあったんで。それを今日はなくそうかなと思ったので」

庄子の好走塁に「『足、速えーな』と思って見てました(笑)」

 初回の第1打席は遊ゴロに倒れたが、3回の第2打席に左前安打で出塁すると、続く近藤健介外野手への2球目で今季6個目の盗塁を成功させた。その後、近藤の2ランで1点差に。追撃、同点、勝ち越し。そのどれもに“アグレッシブ”周東が絡んでいた。積極性――。チームを覆う停滞ムードを、自らの一振りで打ち破ろうとする気概がプレーに詰まっていた。

 この日、周東を奮い立たせる人物もいた。遊撃で今季初めてスタメン出場した庄子雄大内野手だ。同点打は庄子が中前への当たりを、足で二塁打にしたことから始まった。この一打と好走塁をネクストバッターズサークルで見ていた周東。「『足、速えーな』と思って見てました(笑)。 『あれで行けるんだ』と思ったので、僕も次から庄子を見習って、あんなんで行こうと思います」と笑う。

 イニング間、守備に就く際には、2人で言葉を交わす姿が見られた。「今日のピッチャーの感じがどんなか、僕が先に塁に出たんで、一塁に立った時の感じっていうのを伝えていました。庄子も走れるんで」。同じ足を武器にする者同士、情報を共有しながら、後輩の初スタメンをサポートし「バッティング練習とか見てて、めちゃくちゃいい感じで打っているのを見てましたし、結果が出て嬉しいですね」と我が事のように喜んだ。

 苦しんでいた打撃にも、ようやく光が差し始めている。一時は1割台に低迷していた打率は、ここ1か月弱で.284まで上昇してきた。表情から曇りは取れてきたものの、晴れやかでもない。 

「あまり率を気にする段階でもないですし、3割打ってるわけじゃないですから。本当に一本一本の積み重ねかなと思います。数字は見えちゃうんで。上がっていればすごく気分いいですし、数字が悪かったら気分は悪いですし。上がってきたことでちょっと余裕はできるかなと思います」

 スッキリと気持ちが晴れないのは、まだチームが苦しい状況にあることを痛いほど理解しているから。

「そんなに勝てていないんで、チームが。やることをしっかりやって、明日も勝てるように頑張るだけかなと思います」

 周東も、ほかの選手たちもこのままではいけないことは分かっている。苦しい思いを抱えながらも必死に戦い抜く。そんな覚悟の中で見せた、周東の“アグレッシブ”な姿だった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)