海野隆司だからこそ陥った「落とし穴」 5回交代が“非情采配”ではない理由…首脳陣が語った意図

  • 記者:飯田航平
    2026.04.25
  • 1軍
マウンドに集まるナイン【写真:栗木一考】
マウンドに集まるナイン【写真:栗木一考】

1打席で代打を告げた理由とは

 一見すれば「非情采配」とも映る決断だが、実情は違った。そのタクトには首脳陣の確かな意図があった。4月25日に熊本で行われたロッテ戦。5点を追う5回、ネクストバッターズサークルには2打席目を前にした海野隆司捕手の姿はなく、代打に渡邉陸捕手が告げられた。扇の要である海野を試合の折り返し地点でベンチに下げる――。首脳陣が感じていたのは、バッテリーの“変化”だった。

 この日の先発は、試合前までに2勝負けなし、防御率1.27と抜群の安定感を誇っていた上沢直之投手だった。前回登板となった18日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)では、9回1死まで安打を許さない完璧な投球を披露したが、この日は2回に3ランを浴びるなど序盤から4失点。4回には佐藤に2打席連続となるソロ本塁打を許すなど、本来の投球を見せることができなかった。

 先発マスクをかぶった海野にとってはわずか1打席での交代となったが、この起用について小久保裕紀監督は「ビハインドの展開だったことと、(渡邉が)熊本出身なので。明日は(前田)悠伍が投げるので」と説明。指揮官は渡邉の起用を優先した采配であったことを強調した。その一方で、細川亨バッテリーコーチが指摘したのは、上沢を快投に導いた海野だからこそ陥った「落とし穴」の存在だった。

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続きの内容は

細川コーチが指摘、海野が陥った「イメージの落とし穴」
なぜ先発続投で捕手だけ交代?細川コーチが明かす真の意図
捕手に必要な観察眼。細川コーチが海野へ課した「宿題」

細川コーチが指摘した前回登板のイメージ

「海野の中で『前回の状態の上沢さんだったら、ここに投げられる』という思い込みがあったのではないか」

 試合後、細川コーチは海野の配球に対する見解を口にした。初回こそ川瀬晃内野手、今宮健太内野手の好守に助けられたが、この日の上沢の球質や精度は前回と異なっていたという。ノーヒットノーランを予感させるほどの快投が鮮烈だっただけに、海野のリードには前回登板のイメージが頭に残ってしまっていたのではないかと指摘する。

 細川コーチの語り口には、海野に対する期待ゆえの厳しさが混じる。「バッテリーの呼吸というよりも、上沢の状態を100%見切れていなかった。そこを課題として、次回につなげてもらいたい」。捕手に求められる“観察眼”は一朝一夕には磨かれない。悔しさが残る敗戦を「ただの1試合」で終わらせるのではなく、成長の糧に変えてほしい――。そんな願いが透けて見えた。

 海野に代わって試合途中からマスクをかぶった渡邉に対する期待も、また本物だ。点差もあったことから、追い上げるために代打起用したことを明かしたうえで、「あの展開なら打つしかなかった。陸の状態も良かったので、打撃面にも期待しました」。熊本出身の背番号00にとっての“凱旋試合”。快音こそ響かなかったが、マスクをかぶった5回以降を無失点に抑えた経験は、明日への収穫となったはずだ。

 海野の交代後、上沢は6回のマウンドにも上がった。先発投手が降板していない状況で捕手が交代することは、あまり見られない光景だった。だれもが必ずしも本調子で登板できるとは限らない。その時に捕手がどうカバーするのか――。避けて通れない命題だ。この敗戦を次の戦いにどう生かすか。捕手陣の真価が問われるのは、ここからだ。

(飯田航平 / Kohei Iida)