7失点の翌日、栗原陵矢が徐若熙にかけた言葉 マウンドで見抜いていた「怒り」

  • 記者:竹村岳
    2026.04.25
  • 1軍
徐若熙と肩を組んで言葉を交わす栗原陵矢【写真:竹村岳】
徐若熙と肩を組んで言葉を交わす栗原陵矢【写真:竹村岳】

17日のオリックス戦で7失点…翌日の練習中にかけた言葉

 異国の地で戦う仲間を独りにはさせられなかった。グラウンドで右腕の姿を見つけると、真っ先に歩み寄る。肩を組み、笑顔で言葉を掛けた。リーダーとしての自覚が詰まったような行動を見せたのは、栗原陵矢内野手だ。

 17日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)で先発した徐若熙(シュー・ルオシー)投手。過去の2登板では安定感抜群の投球を見せていた背番号18だが、この日は立ち上がりから乱れた。2回を投げ切ることができず、6安打5四死球で7失点。チームとしても今季ワーストの13失点を喫し、試合後の右腕は「コントロールができていなかった。ストライクが欲しいところで甘くなってしまった」と反省するしかなかった。

 翌18日に出場選手登録を抹消された徐に対し、小久保裕紀監督は「もともとその予定やった」と語った。右肘には複数回、メスを入れた経験がある。まだまだ成長段階にいる右腕だが、7失点の悔しさは表情にも表れていた。栗原が声をかけたのは、KOを食らった翌日の試合前練習中のこと。徐がマウンドで見せた感情の機微を見逃していなかった。

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続きの内容は

傷心の徐若熙に栗原陵矢&谷川原健太がかけた言葉とは
「逆の立場なら寂しい」。“本当の徐”を引き出す寄り添い
「孤独にはさせない」。7失点KOを絆の起点に変える底力

イライラの意味は言葉通りではなく…感じ取った負けん気の強さ

「『昨日、怒っていたな』という話をしました。イライラしとったなと感じたので」

 栗原に声をかけられた徐自身も「ボールが続き、カウントを難しくして打たれてしまったので。コンディションに問題はないですけど、長いシーズンでこういうことは起こりうる」と振り返っていた。今季からホークスの一員になったばかり。マウンドで右腕から感じた“怒り”を、栗原はネガティブな意味で受け取ったのではない。25歳が胸に秘める負けん気の強さをも感じ取っていた。

「そこにルオシーがいたから、しゃべりかけたというくらいですよ。いなかったら(そういうやり取りも)なかったとは思いますけど。ロッカーでも『おはよう』というくらいだったので」。栗原は何事もなかったかのように振り返るが、徐は3月のWBCに出場し、ホークスから離れていた期間もあった。接点が多いわけではなかったが、瞬時の閃きで距離を詰められるのも背番号24が持つ魅力の1つだ。「僕、人見知りなので」。そう笑いながらも、選手会長としての仕事をしっかりと果たしていた。

言葉を交わす谷川原健太と徐若熙【写真:竹村岳】
言葉を交わす谷川原健太と徐若熙【写真:竹村岳】

谷川原健太も試合を振り返り「球種の使い方や僕の構え」

 栗原の声掛けがあった後には、17日の試合でバッテリーを組んだ谷川原健太捕手も徐と言葉を交わした。投球内容について意見交換し、「(レギュラーシーズンに入ってからコンビを組むのは)初めてだったので。球種の使い方だったり、僕の構え方だったり。そういう部分の話をしました」。チームメートの目から見ても、徐の口数は決して多くない。栗原が口にした“イライラ”は感じなかったというが、「考えながら、悩みながら投げていましたね」と印象を語った。

 プロ3年目の2018年オフに、台湾で行われたウインターリーグに参加した谷川原。1か月という期間ではあったものの、食事や言葉の違いを経験しているだけに、異国の地で過ごす気持ちは理解できる。「声をかけたらいつもニコニコはしてくれるんですけど、もし僕が逆の立場だったら寂しいと思うので。“本当の徐”を出せるように、もっともっと寄り添っていけたら」。コミュニケーションを取り、お互いについてもっと深く知ることが、チームにとってもプラスとなる

「もう切り替えて、次の試合で抑えることしか考えていないです。しっかりと調整していきたいと思います」。徐がそう意気込めば、谷川原も「勉強、反省しないといけない試合になったので。課題を潰して、次はちゃんと結果を出せるようにしたいです」と闘志を燃やした。台湾から覚悟を持ってホークスに加わった右腕を孤独にはさせない――。栗原と谷川原の何気ない行動からは、そんな優しさも伝わってきた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)