どん底の津森宥紀を救った大関友久の言葉 捨てられた雑念「昔はもっと…」

  • 記者:福谷佑介
    2026.04.24
  • 1軍
今季初登板で好投した津森宥紀【写真・加治屋友輝】
今季初登板で好投した津森宥紀【写真・加治屋友輝】

今季初登板後に意外な告白「こんなに緊張して投げたの初めてです」

 信頼を取り戻すため、大事な、大事な1試合だった。21日にベルーナドームで行われた西武戦。2点を追いかける7回のマウンドに上がったのは津森宥紀投手だった。18日に1軍に昇格し、ようやく巡ってきた今季初登板で1回を無失点に抑えてみせた。
 
 だが、プロ7年目を迎えた右腕にとって、この日のマウンドはこれまで体感したことのないものだった。

「こんなに緊張して投げたの初めてです。心臓バクバクでした」

 溢れ出たのは意外な告白だった。プロ1年目から1軍で投げ続け、2023年にはキャリアハイの56試合に登板。中継ぎの一角を担い、7年間で通算237試合に登板してきた。豊富な経験を持つ28歳が、なぜ“初めて”というほど緊張したのか。

「1年目からずっといい緊張感で投げさせてもらってきました。でも、2軍スタートからこうやって上がってきて投げるというのが初めてだったので、いつもと違う感覚でした」

 津森をそこまで緊張させた背景、そしてどん底にいた右腕を救い出した同期の“ある一言”とは――。

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続きの内容は

どん底の津森を救った、同期・大関友久の「何気ない一言」とは
ここ2、3年の不調の原因? マウンド上で陥っていた「罠」
初の開幕2軍……崖っぷちの右腕がファームで下した「決断」

 背番号11にとって開幕をファームで迎えるのは、入団以来初めての経験だった。ファーム・リーグで6試合に登板して無失点と結果を残し、ついに掴んだ今季初の1軍昇格。生き残るためには結果を出すしかない。過去6年間とは違って、マウンドに上がった時点で“崖っぷち”であることは誰よりも理解していた。

「ここ2、3年は『こう投げよう、ああ投げよう』って考え過ぎて投げていました」

「『絶対抑えないかん』っていう気持ちがいつもより強くて、ちょっと(テンションが)上がり過ぎました」

 今まで感じたことのないほどの“重圧”を背負って上がったマウンドで、制球はわずかに狂った。先頭の源田に対し、序盤からボールが先行し、結局、四球で出塁を許してしまった。

 緊張で空回りしかけたが、すぐに落ち着きを取り戻した。「2人目からは落ち着こう、と思って、そこからは自分らしいピッチングができたかなと思います」。続く渡部に対しては、2軍で磨いてきたスライダーをストライクゾーンに投げ込み、最後は内角をえぐる直球で併殺打に仕留めた。

「右も左もインコースに投げられましたし、そこはやってきたことができたかなっていうのはあります」

 今季初登板で見せたのは、多少制球がアバウトでも力でねじ伏せる、躍動感溢れる津森本来の投球だった。

 2023年に56試合、2024年も48試合に登板した実力者だったが、昨季は2年目以降で最少の22試合止まり。コントロールを乱して走者を背負い、痛打を浴びることが多くなり、不安げな姿がマウンド上にあった。今年2月の春季キャンプ中も状態は上がらず、苦悩の思いも漏らしていた。

「ここ2、3年は『こう投げよう、ああ投げよう』って考え過ぎて投げていました。でも今は、もう割り切って、自分らしくいこうって。2軍でそれをやってきました」

 自分らしさを取り戻すキッカケとなったのは、大関友久投手からかけられた何気ない言葉だった。

「『昔はもっと躍動感があったよね』みたいな話をされたんです」

「『絶対抑えないかん』という気持ちがいつもより強くて、ちょっと(テンションが)上がり過ぎました」

 今まで感じたことのないほどの“重圧”を背負って上がったマウンドで、制球はわずかに狂った。先頭打者の源田に対してボールが先行。結局、四球で出塁を許してしまった。

 緊張で空回りしかけたが、すぐに冷静さを取り戻した。「2人目からは落ち着こう、と思って、そこからは自分らしいピッチングができたかなと思います」。続く渡部に対しては、2軍で磨いてきたスライダーをストライクゾーンに投げ込み、最後は内角をえぐるような直球で二ゴロ併殺に仕留めた。

「右も左もインコースに投げられましたし、そこはやってきたことができたかなっていうのはあります」

 多少制球がアバウトでも力でねじ伏せる。躍動感が溢れる、津森本来の投球だった。

 リーグ優勝を果たした2024年も48試合に登板した実力者だったが、昨季は2年目以降で最少の22試合止まり。コントロールを乱して走者を背負い、痛打を浴びることが多くなり、不安げな姿がマウンド上にあった。今年2月の春季キャンプ中も状態は上がらず、苦悩の思いも漏らしていた。

「ここ2、3年は『こう投げよう、ああ投げよう』って考え過ぎて投げていました。でも今は、もう割り切って、『自分らしくいこう』と。2軍でそれをやってきました」

 自分らしさを取り戻すキッカケとなったのは、大関友久投手からかけられた何気ない言葉だった。

「『昔はもっと躍動感があったよね』みたいな話をされたんです」

「前に大関と話した時に『昔はもっと躍動感があったよね』みたいな話をされたんです」

 2019年ドラフトで大卒から入団した。同期の2人が交わした些細な会話での一言だ。その時はさほど気に留めなかったが、その後に突きつけられた現実は“開幕2軍”。オープン戦最終戦となった3月22日の広島戦(マツダ)後に、2軍降格を言い渡された。

 何かを変えなければいけない――。そのとき、ふと頭の中に浮かんだのが、盟友の指摘だった。

「開幕2軍だし、割り切ってやるならこのタイミングだなって。『一度そこに戻ってみよう』『躍動感を出していこう』と思ったんです」

 考え込むのをやめ、迷いを吹っ切った。ファームで積み重ねた6登板は9イニング無失点。直近の3試合は無四球と、失っていた自信も取り戻した。

 重圧の中で立った今季初の1軍マウンドで、確かな手応えを得た。同期の一言から取り戻した”躍動感”を手放さぬまま、次の登板に向かう。

「感じが良くなってきて、いいボールが増えてきた。きょうは初めてなんで、次の試合からもっと頑張りたいです」

 ブルペン陣の一角として、1軍に定着していけるか。7年目を迎えた右腕にとって、ここからが本当の戦いだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)