宇野真仁朗と前田悠伍が共鳴する“妥協なき日常” 語った理想像「絶対に子どもたちに…」

前田悠伍と宇野真仁朗【写真:竹村岳】
前田悠伍と宇野真仁朗【写真:竹村岳】

前田悠伍から宇野真仁朗へ質問「どういう感覚?」

 常に妥協なき姿勢で野球と向き合う20歳だからこそ、シンパシーを感じていた。「野球の時は集中してしっかり取り組んでいるじゃないですか。考えてやっているのが伝わってくる。だから僕、めっちゃ宇野に聞くんですよ。『どういう感覚でやってるん?』って」。3年目を迎えた前田悠伍投手が名前を挙げたのは、1学年下の宇野真仁朗内野手だ。2人の間で共鳴するのは、高いプロ意識と“伝統校の誇り”だった――。

 投手と野手ということもあり、2人の接点は多くない。それでも「若鷹寮」の中で顔を合わせれば、自然と言葉を交わしてきた。昨年9月に前田悠が左肘のクリーニング手術を受けてからは、同時期にリハビリ生活を送った。「高校時代から同世代を先頭で引っ張ってきたスターですよ。1個上とは思えないほど全てを野球にかけていると思いますし、逆にプライベートでは『同い年かな』と思うところもあります(笑)」。おどけて語る宇野の表情からも、左腕との距離感の近さがわかる。

 先輩選手に対してグイグイと距離感を詰めていく前田悠だが、後輩に対して“褒め言葉”を口にすることは珍しい。大阪桐蔭高出身の左腕と、早実高出身の宇野。高卒2年目の背番号46は、寮内の自室にいる時も「プロ野球選手」であることを心掛けている。忠実に守り続けているのは、恩師の教えだ。

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続きの内容は

「これどういう感覚?」黄金左腕が後輩に聞く理由
早実で叩き込まれた「電車のマナー」。宇野真仁朗の原点
365日24時間の自覚。前田悠伍が惹かれた「プロのあり方」

早実高時代に叩き込まれた“電車のマナー”

「365日、24時間、例え1人の時間でも誰かに見られていると思って行動しています。僕も小さい頃、甲子園やプロ野球を見て、憧れていたので。僕の中で、そうやって見てくれている子どもたちは絶対にいると思って日々を過ごしています。そういう職業ですし、高校時代から(和泉実)監督さんに『意外とみんなが見ているからね』と教わってきたので。誇りや伝統がある場所でいろんなことを学べたのは良かったと思います」

 早実高では学校からグラウンドまで、電車で1時間をかけて移動する。多くの人の目がある環境が当たり前だった。部内でも徹底して、細かな意識を共有してきた。「席を譲る、カバンを前に持つのはもちろんです。全員で言っていたのは、何人かで固まらないこと。車両ごとに散らばって、一般の方の邪魔にならないようにしていました」。王貞治球団会長も3年間を過ごした母校。「WASEDA」の肩書きは、宇野を人として何倍にも成長させた。

「どんな高校でも大事なことだとは思うんですけど、僕たちは早実。『気をつけなきゃいけないよ』と、ずっと監督さんから言われていました。そういう経験があって僕はプロに入ったので、絶対に子どもたちに憧れられる選手にならないといけない。それが僕の理想の選手像なので。そこを悠伍さんに評価してもらっているんじゃないですかね」

 前田悠もまた、大阪桐蔭高の環境で3年間を過ごした。グラウンドでの振る舞いはもちろん、日常生活での行動にも注意を払ってきた。ブレザーの着こなし一つに関しても「学校が厳しかったですし、シャツを出したり、だらしなかったら絶対に言われます。自然としっかりしていましたね」。正しい身だしなみも、伝統校の証。規律の中で自らを正してきたからこそ、1学年下の後輩に共鳴したのかもしれない。

宇野真仁朗と言葉を交わす前田悠伍【写真:竹村岳】
宇野真仁朗と言葉を交わす前田悠伍【写真:竹村岳】

リハビリ生活…同じことの繰り返しは「めっちゃキツい」

 宇野はルーキーイヤーだった昨季、ウエスタン・リーグで打率.391を記録。誰もが大きな希望を抱いていた中で、7月に右肘のトミージョン手術、9月には左手首にメスを入れた。大きな壁に対しても気持ちの波を作ることなく、丁寧に日々を過ごす姿は19歳とは思えない。「もちろんキツいこともありますけど、手術してよかったなと思います。『ストレスがあるからどうしよう』じゃなくて、ストレスはもう“あるもの”だと捉えるようにはしています」。

 スローイング以外の制限は少しずつなくなり、練習強度も確実に上がってきた。内野ノックやティー打撃……単調なメニューだとしても絶対に手を抜かない。「365日、プロ野球選手」――。半年以上のリハビリ生活に真っすぐ向き合ってきたからこそ、宇野のプロ意識は磨かれてきた。「何気ない一球かもしれないですし、同じことの繰り返しです。だからこそ、同じようにやるのはめちゃくちゃキツいです」。バットを振り込んでボロボロになった両手が、19歳の充実感を物語っている。

「今は毎日考えながら野球をできているのが楽しいです。『成功した』『いい打球がいった』から楽しいわけじゃなくて。毎日考えて考えて、それでも上手くいかないことが楽しいです。このありがたみも、忘れないようにしないといけないですね。たまに息抜きすることもありますけど、そういう行動から自分を持っていれば大丈夫だと思うので」

 1日も早い復帰、そして1軍の舞台を目指していく。「まだまだスタートラインにも立っていないので。頑張っていきます」。前田悠伍と宇野真仁朗、2人の若鷹がいつの日か、ホークスを頼もしく支えてくれるはずだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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