5回に放った犠飛が決勝点に
これぞというグラブさばきでアウトを奪っても、自身のバットで決勝点を挙げても、その表情が綻ぶことはなかった。チームが3連勝を飾った12日の日本ハム戦(エスコンフィールド)。決勝の犠飛を放ったのは、「9番・遊撃」で先発した川瀬晃内野手だった。2点を追う5回に周東佑京外野手の適時打と海野隆司捕手のセーフティスクイズで追いつくと、なお1死三塁で川瀬が打席へ。有原の7球目をセンターに打ち上げると、周東は難なくタッチアップし、勝ち越しに成功。これが決勝点となった。
川瀬はそれまでの打席で、もどかしさを感じていた。1打席目は投ゴロに倒れ、2打席目は低めの変化球に手を出しての二ゴロ。ともにチャンスで回ってきた打席で結果を出せずにいたが、3度目の好機では失敗を瞬時に切り替え、冷静に状況を読んだ。きっちりと仕事を果たした背番号0は打席で何を考えていたのか。その心境を明かした。
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同じ過ちは繰り返さない。決勝打を導いた川瀬の「冷静な眼」
「あれがなければ得点はない」。川瀬が感謝した周東の走塁
決勝打でも笑顔なし。試合後の川瀬が猛省したプレーとは
「(2打席目が)低めのボール球を振って凡打になっていたので、しっかりゾーンを上げていました。追い込まれていましたけど、そこも我慢して。なんとか得点に……という感じでしたね」
この打席、川瀬は3球で追い込まれた。その後、相手バッテリーは2球続けてフォークを選択したが、前の打席でのイメージを残していた川瀬は誘いには乗らなかった。フルカウントから高めのカットボールを捉えると、打球をきっちりと中堅にまで運んだ。同じ轍は踏まない――。その意志が見える打席だった。
「前の打席の打ち取られ方と同じことを繰り返さない。それだけでした」。勝ち越しの瞬間に、川瀬は大きく息を吐いた。
決勝打の影に「当たり前」の好走塁
この一打の“伏線”は、直前のプレーに隠されていた。海野のセーフティスクイズで、一塁走者の周東は相手の三塁カバーが間に合っていなかったことを瞬時に見抜き、一気に三塁を陥れた。小久保裕紀監督は、この走塁について「(バントが)三塁側だったので、佑京なら行けるだろうと。佑京なら当たり前のプレーでしょうね」と事もなげに振り返る。しかし、この“当たり前”のプレーが、川瀬の背中を強く押していた。
「佑京さんが三塁に行っていなかったら、ただのセンターフライだったので。本当にあの走塁のおかげで、この1点があったと思います」
試合後、真剣な表情を崩すことなく語った川瀬。犠飛を放った直後の5回の守備でも好守を披露し、チームに大きく貢献した28歳だが、笑顔はない。6点リードの9回に栗原陵矢内野手が放った右翼フェンス直撃の当たりで、二塁から生還できなかったからだ。結果的には勝敗に直結しないプレーだったが、川瀬の表情には、プロとしての深い反省の色がにじんでいた。
この日の試合後に、指揮官は今宮健太内野手が左肩甲を骨亀裂骨折していたことを明かした。当然、背番号0がスタメン出場する機会も増えるだろう。それでも川瀬は「やることは変わらない。いつも通りです」と語る。その背中に、今のチームの強さが凝縮されているようだった。
(飯田航平 / Kohei Iida)