小久保監督に「キングダム」を推薦した夜 年に1度の本音…漫画を読まない指揮官が見せた笑顔

  • 記者:竹村岳
    2026.04.13
  • 1軍
笑顔の小久保裕紀監督【写真:栗木一考】
笑顔の小久保裕紀監督【写真:栗木一考】

柳田悠岐に見える変化…若鷹を食事に誘う理由を推察

 ついに2026年シーズンが幕を開けました。3年連続のリーグ制覇、そして日本一連覇を目指すホークスの今を、最も近い場所で見守っているのが西田哲朗広報です。「去年のままでは置いていかれる」――。指揮官が掲げる「全新」のスローガンの下、チームはどのように進化しているのか。そして、普段は愛読家で、漫画を絶対に読まないという小久保裕紀監督に対し、西田広報が「キングダム」をあえてプレゼンした理由とは? そこには組織論にまつわる深い理由がありました。春季キャンプ中に行われた食事会での秘話を、独自目線で明かします。

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 鷹フル読者の皆さん、お久しぶりです。今年のスローガンは「全新」。この言葉に込められた監督や球団の思いを、ファンの方々はどのように感じていますか? 

 日本一になった翌年は「去年と同じでいい」と保守的になりがち。でも、今のホークスは違います。監督や(城島健司)CBOが先頭に立って「失敗してもいいから新しいことにチャレンジしよう」と旗を振っている。例えば山川(穂高)が朝のアーリーワークから練習方法を一新して取り組んでいるように、個々の変化がプラスのエネルギーになっているんです。「進化を目指して起こる変化」と、「停滞を隠すための変化」は全くの別物ですから。

 そんな「全新」を掲げる小久保監督。柳田(悠岐)さんも言っていましたが、内部にいる僕から見ても、正直に言えば怖いお方です(笑)。でもそれは“怒られるから怖い”わけではありません。どんな人に対しても、一挙手一投足に目を凝らし、とにかく隙を見せない。選手や僕たちスタッフに対して危機感を与えているから、自分の役割に対して進化し続けないといけないし「去年のままでは置いていかれる」とみんなが思っているはずです。

 監督は毎年の春季キャンプ、現場の広報チームと一緒に食事をしてくださいます。僕は監督に対して、グラウンド上では要件しか話さないようにしているのですが、そこは本音で語り合える貴重な場。自分なりに考えた「全新」の目標をぶつけてみました。監督は読書を大切にされていますが、漫画は読まない。だけど、あの大人気作品「キングダム」を推薦させていただいたんです。

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続きの内容は

V2へ向けたスローガン「全新」。西田広報が見る指揮官の“隙のなさ”
マスコミは「騎馬隊」?監督を笑わせた西田流「キングダム」組織論
柳田悠岐が見せる変化と、新人が口にした「監督は優しい」の衝撃

小久保監督も思わず「見ようか迷っている」

 中国の春秋戦国時代後期を舞台に、主人公の信が天下の大将軍を目指す物語。そこには敵、味方のさまざまな作戦と謀略が渦巻き、国と国同士が全力で戦います。大きな組織というのは支えてくれる人がいないと、崩れてしまう。作品を見ていても野球と通ずる部分が多いなと思っています。

 毎年この食事の場で監督から「今年の目標」を聞かれます。これまでと同じではダメなので、僕は今回、聞かれる前に自分から伝えさせていただきました。僕のテーマは、支えてくれる人を増やしていくこと。広報という仕事は、マスコミの方々と共存し、支援していただかないと成り立ちません。それを説明するために、持ち出したのが「キングダム」だったんです。

 例えば3人1組で動くテレビ局のクルーは「騎馬隊」。指示を送る「隊長」のディレクターさんがどんな動きをするかで、そのチームの強さも変わってくる。広報とはチーム、球団、ファンやマスコミの方々、さまざまな人に思いを届けなければならない。だから僕は間に入ることで皆さんを上手く回せる「司令官」のような立ち位置でありたいんです。ホークスという“国”がもっともっと大きくなるように。コミュニケーションを取りながら考えを分かち合って、理解してもらう。かなり足元を見つめ直し、原点のような目標を掲げています。

 そうやって僕の思いを伝えていく中で、話の展開も「キングダム」を連想させたので“国王”である監督も優しく笑ってくれました。監督は漫画は読みませんが、三国志などにはとても興味を持たれています。「キングダムは見ようか迷っている」とおっしゃったので「絶対に見たほうがいいと思います」と伝えましたね。グラウンドとは違って、唯一「本音」をぶつけられる空間。もう少しその話がしたいとも思っていたんですけど、時間も限られていますから。僕の中でお伝えしたかったことは、ハッキリと言えたのかなと思います。

食事の場で驚きも…鈴木豪太が小久保監督を「優しい」

 先日、仙台で柳田さんと一緒に食事をさせていただきました。庄子(雄大)選手や鈴木(豪太)投手がいたんですけど、柳田さんも若手を誘ったり、積極的に声をかけているイメージがありますね。偉大な先輩から「行こうよ」と言ってもらったら、若い子たちも行きやすいじゃないですか。若鷹が成長することで、これから先のホークスを力強く支えてもらう。物腰も柔らかくて飾らない人なんですけど、実はそれは柳田さんなりの変化でもあるのかなと僕は思っています。

 一方で、新人の鈴木投手が監督のことを「優しい」と言った時はみんなで「えー!」と驚いていました(笑)。もちろん彼もプロに入ってきたばかり。グラウンドで会えばいつも笑顔で挨拶してくれる監督を見て、そういう印象を持ったみたいです。

 特に食事の場なんかはそうかもしれませんが、目を凝らしていればその人がどんな人なのかが見えてくる。誰についていくか、誰と自主トレをするか、人生が大きく変わる大切なことなので、そんな話にもなりました。今年もチームが一丸となって、まずは3年連続のパ・リーグ制覇を目指していきたいと思います。先は長いですが、ファンの皆さん、温かい応援をよろしくお願いします。

(竹村岳 / Gaku Takemura)