鈴木豪太を救った栗原陵矢の声掛け 1時間前にあった“伏線”…トイレで目撃したルーキーの素顔

鈴木豪太(左)に声をかける栗原陵矢【写真:栗木一考】
鈴木豪太(左)に声をかける栗原陵矢【写真:栗木一考】

ルーキーを救った栗原の一言に隠されたエピソード

 プロ初登板の緊張感に押しつぶされそうだった鈴木豪太投手を救ったのは、栗原陵矢内野手の言葉だった。「良い球はいっているから。もっとガンガンいけよ」――。ルーキー右腕を立ち直らせた発言には、知られざる“伏線”があった。栗原の声掛けから遡ること1時間、2人は意外な場所でばったりと顔を合わせていた。

 7日の西武戦(みずほPayPayドーム)。ドラフト3位ルーキーの出番は3点ビハインドの9回に訪れた。直前の攻撃でホークス打線は2点を返し、反撃ムードが高まりつつあった本拠地。マウンドに上がった鈴木豪は先頭打者にいきなり四球を与えた。すぐさま右腕の元に向かい、寄り添うように言葉をかけたのが栗原だった。

 栗原の声掛けで落ち着きを取り戻したのか、右腕は次打者を併殺に仕留め、結局打者3人で相手の攻撃を終わらせた。まさにルーキーを救った選手会長らしい行動だったが、その裏にあったのは、まさかのやり取りだった。「実は7回くらいにトイレで鈴木と会って……」。栗原、そして鈴木豪の証言で、その舞台裏を振り返る。

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ルーキーを固まらせた栗原の冗談めいた“一言”
初登板の緊張が「楽になった」…選手会長らしい心遣い
栗原が「オープン戦と違う」と感じた鈴木豪の異変

 「7回くらいにトイレへ行ったら、ちょうど鈴木がいて。『きょう投げるの?』って聞いたら、『このままの展開だったら、9回に(登板が)あるかもしれないです』と。『緊張してるの?』って声を掛けると、結構顔が引きつっていたので。だから声を掛けにいったって感じですね」

鈴木豪が感謝した選手会長の心遣い「本当に…」

 マウンドでの声掛けが行われた1時間ほど前、栗原が見たのは硬い表情を浮かべた右腕の姿だった。プロ初登板という独特の空気感を考えれば仕方ないとこだが、鈴木豪の証言からは緊張に拍車をかける“一言”があったという。

「まず『投げるん?』って聞かれて、『このままの点差だったら投げると思います』と答えて。そのあとに、ちょっとプレッシャーをかけられたんですよ。『9回は大事だぞ』みたいな(笑)」

 冗談っぽく笑った鈴木豪だが、選手会長の心遣いにはもちろん感謝しかない。「緊張というよりも、力が入りすぎちゃって。先頭にフォアボールを出してしまって、栗原さんががすぐにマウンドに来てくれたので。あの声掛けで本当に楽になったと言うのはおかしいかもしれないですけど……。いい意味で力を抜いて投げられました」。

 栗原が「大事」と口にした通り、2点差で迎えた9回にホークスはチャンスを作り、栗原が1点差に追い上げる適時打を放った。結果的に試合には敗れたが、仮に逆転していれば鈴木豪にプロ初登板初勝利が転がり込んでいたかもしれない。それだけあの1イニングが大きかったのは間違いない。

「僕がマウンドに行ったから緊張が解けるとかはないですよ。ちょっと喋りに行ったくらいです」。そう謙遜した栗原だが、「オープン戦で(鈴木豪を)見た時と『ちょっと違うかな』と思ったので」という観察眼はさすがだ。今シーズンを終えてみれば、前途有望なルーキーを救った一言が大きな意味を持つかもしれない。その可能性を楽しみにさせるほどの“ファインプレー”だった。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)