1日の楽天戦後…5人で堪能した牛タン
杜の都・仙台でひっそりと開かれた食事会。その音頭を取ったのは、チーム最年長の柳田悠岐外野手だった。1日の楽天戦後、イヒネ・イツア内野手、庄子雄大内野手、ルーキーの鈴木豪太投手、そして西田哲朗広報が集まった。名付けられたのは「若い人中心に誘ってみた会」。牛タンの香りに包まれながら、5人は同じテーブルを囲んだ。柳田が見せたのはグラウンド上での凛々しい表情ではなく、後輩たちに向けた優しい「ギータ」の素顔だった。
「僕からしたら、柳田さんはまだチームメートというよりも“いちファン”なんですよね」。まだ緊張の取れない鈴木豪が白状すると、「おまえ、今は先輩後輩やぞ(笑)」と、いたずらっぽく返したという柳田。そんな温かさが、3人の心を優しく解きほぐしていった。庄子と鈴木豪が明かした特別なひととき――。そこには大きな優しさと、プロとしての学びが詰まっていた。
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柳田が茶目っ気たっぷりに聞いた「怖い先輩」
長く現役を続けるために「ギータが止めたこと」とは
連敗中にこそ問われる…柳田が説いた「プロの振る舞い」
「ギーさんから『あしたの試合後何しとん?』って言われました。『何もしないです』と返したら、『飯行こうぜ』って。“若い人中心に誘ってみた”っていう会の名前でした(笑)。今回は緊張もせず、すごく楽しい食事でした」
照れくさそうに笑う庄子の表情が、その場の空気感を物語っていた。プロ1年目の春季キャンプで初めて柳田に誘われた際には、その存在があまりに眩しすぎて「まるでテレビの人と一緒にいるみたい」と、どこか現実味のない感覚だったという。だが、同じユニホームを着て戦う日々が、少しずつその距離を縮めていた。
会話の端々から伝わってきたのは、今のホークスに流れる雰囲気の良さだ。柳田は自身の若手時代を振り返りながら、「今、お前ら怖い先輩おるん?」と、茶目っ気たっぷりに問いかけてきたという。
「怖い先輩とか、関わりづらい先輩は1人もいないです。そういった意味では、ギーさんがすごくやりやすい環境を作ってくれているというか。最低限の上下関係はありますけど、喋りかけづらいとか、そういうのは全くないんで。それはギーさんのおかげだと思いますね」
もちろん、楽しいだけではない。庄子が「勉強になった」と振り返ったのは、柳田のコンディショニングへの気配りだった。「若い頃と同じようなお酒の飲み方をしていると身体にも負担が来るし、疲労回復の面でも気をつけたほうがいい、と言ってました。年齢を重ねるにつれて試合後のケアを気にしたほうがいいと。僕もいつ怪我をするか分からないですし」。
今季16年目を迎えた柳田が明かした、長く現役を続けるための“秘訣”。23歳の心には響くものがあった。
連敗した時にこそ、問われる真価
一方で、プロの厳しさを痛感させられる場面もあった。ドラフト3位ルーキーの鈴木豪は、開幕からチームが好調を維持していることもあり、柳田に対して率直な思いをぶつけた。
「僕が『ホークス強いですね』という話をしたら、『やっぱりどこかで連敗が続く時は来るから。チーム状況とかしっかり見といたほうがいいよ。みんな焦ったりしてくるから、そういうところも1軍にいるうちに勉強したほうがいい』と言われました」
プロ野球の世界に足を踏み入れたばかりの若鷹に説いたのは、負けが込んだ時に選手がどう振る舞うべきか――。その言葉には、まだ修羅場を経験していない新人には計り知れない重みがあった。1軍で戦い続けることの意味を感じる、貴重な教えとなった。
柳田自身は「楽しかったですよ。美味しいものも食べられましたし」とさらりと言うが、若手一人ひとりに言葉を掛け、これまで培ってきたプライスレスの経験を伝えた。振る舞ったのは美味しい料理だけではない。プロとしての生き様そのものだ。その夜の温かな記憶を糧に、若鷹たちは再び戦いの場へと向かう。
(飯田航平 / Kohei Iida)