笹川吉康が“あと1死”で逃した開幕1軍 ルーキーに即謝罪…消えぬ悔しさ「僕でいきたかったんだろうな」

笹川吉康【写真:飯田航平】
笹川吉康【写真:飯田航平】

痛恨の後逸…語った心境

 すり抜けていったのは白球と、ほぼ手中にしていた開幕1軍切符だった。22日、マツダスタジアムで行われたオープン戦ラストとなる広島戦。1点リードで迎えた9回2死一塁。広島の秋山翔吾が放った打球は、右前への単打で終わるはずだった。しかし、この打球を笹川吉康外野手が痛恨の後逸。ボールが外野を転がる間に一塁走者が生還し、試合は引き分けに終わった。1つの失策は単なるミスに留まらず、笹川が今季掲げていた「1軍フル帯同」という目標も霧散させる結果となった。

 試合後、小久保裕紀監督の言葉は重く、鋭かった。「プロとして恥ずかしい。きょうの最後のプレー。(開幕1軍は)決まっていましたよ。本人にも言いましたけど」。指揮官はそう明かし、コーチ陣との議論の末に笹川の2軍行きを決めた。あとワンアウトで自身初の開幕1軍を掴みかけたところからの暗転。その瞬間に何を思ったのか。ファームでの再始動から1週間、その胸中に迫った。

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続きの内容は

試合直後、ルーキー投手に直行して伝えた謝罪の言葉
降格から1週間、筑後で明かした自分に対する苛立ち
指揮官の無念を感じ取り、再起を誓う胸の内とは

「『うわー』しかなかったです」

 それ以上の言葉はない。絞り出すような声に後悔がにじむ。今季の笹川にとって「1軍フル帯同」は単なる目標ではなく、自らに課した“最低条件”でもあった。「1軍に食らいついていきたいです」。その一心で自主トレからバットを振り込んできた。目標のスタートラインでもあった、開幕1軍。その手に掴みかけていたにもかかわらず、わずか数秒の綻びで指の間からこぼれ落ちた。

 試合後のロッカーでは、9回のマウンドに上がっていたルーキーの稲川竜汰投手の元へ直行した。「僕も結果を出さないと、シーズンにも繋がってくることはわかっていたので。こうやって2軍に落ちたりもする。稲川の成績にも関わるので、すごく申し訳ない気持ちでした」。ただ頭を下げるしかなかった。

降格から1週間…明かした現状

 降格直後は現実を受け入れられずにいた。2日後の24日に行われたファーム・リーグの広島戦(由宇)では本塁打を放ったが、心までは晴れなかった。「筑後に来てから少し落ち着きましたけど、今ここにいる自分に対してのフラストレーションはあります」。正直すぎる吐露に、今季にかける思いの強さが透けて見える。

 再び1軍の舞台へ戻るために、何が必要かは痛いほど分かっている。求められるハードルを自ら引き上げて試合に臨む。「言われてはいないですけど、『(開幕メンバーは)僕で行きたかったんだろうな』というのは感じていたので」。失ってしまった信頼は結果で取り戻す。

「1軍フル帯同」という今季最大の目標は、一度は潰えた。しかし、這い上がろうとする笹川の表情は開幕前よりも確実に険しく、鋭くなっている。痛恨の後逸は一生忘れることができない教訓として、胸に刻み込んだ。悔しさはすでに糧になっている。今はただ、その時が来るまで笹川は筑後で必死に走り続ける。

(飯田航平 / Kohei Iida)